「すぐ泣く子は愛情不足?」と悩んでいませんか。専門家が子どもの心理や発達障害グレーゾーンの可能性、正しい接し方を解説します。
1.すぐ泣いてしまう子どもは愛情不足なのでしょうか?
「少し注意しただけで泣いてしまう」
「ほんのちょっと怒っただけで涙があふれてしまう」
子どもがそんな様子を見せるたびに、「なんでこんなに泣き虫なんだろう」と不安になったり、周囲の目が気になったりしていませんか?
さらに、親戚や周りの人から
「甘やかしすぎじゃない?」
「泣き癖がついちゃうよ」
「愛情不足なんじゃないの?」
など心ない言葉を言われて、ますます自分の子育てに自信をなくしてしまう親御さんも多いものです。
この記事では、「すぐ泣く子」への理解と対応法を専門家の視点からまとめました。
「泣きやすい=愛情不足」ではないことを知り、安心して子どもと向き合えるヒントをお伝えします。

2.泣き虫な子はわがままな子?
私の息子も幼い頃は、とても泣き虫な子でした。
例えば、保育園のお迎えの時、先生から「優しく注意したつもりなんですが、泣いてしまいました…。すみません。」と言われることが何度もありました。
家庭でも「おもちゃは片づけようね」と声をかけただけで大泣きしてしまい、5分以上泣き止まないこともありました。
当時の私は、「どうしてこんなに泣くんだろう」「私の育て方が悪いのかな」と自分を責めていました。
特に、親戚や実母から「泣き虫だね」「わがまま」「もっと強くしつけたほうがいいんじゃない?」と言われると、
「やっぱり愛情不足なのかな」
「もっと厳しくしたほうがいいのかな」
と混乱し、つい叱ったり突き放したりしてしまったこともありました。

3.すぐ泣いてしまう子の心理と背景
私は発達科学コミュニケーションで子どもの発達特性や心理を学ぶ中で、子どもが泣くのは「親の愛情不足」ではなく、「その子の気質や発達の特性によるもの」だと分かってきました。
例えば、うちの子はとても感受性が強く、音や言葉に敏感で、注意されると「怒られた=嫌われた」と極端に受け止めてしまう傾向がありました。
そこで対応を変えてみました。
泣いているときは「泣かないの!」と言うのではなく、「びっくりしたね」「先生に言われて悲しかったんだね」と気持ちを代弁してあげるようにしたのです。
すると、少しずつ「泣いてもいいんだ」と安心できるようになり、以前より早く気持ちを切り替えられるようになっていきました。
この経験から私自身も「泣きやすい=愛情不足」ではないと確信でき、子どもに対して落ち着いて向き合えるようになりました。
子どもがすぐに泣いてしまうのには、いくつかの理由があります。
ここでは、気質や発達段階に加え、脳の特性という観点からも解説していきます。
① 気質によるもの
人には「繊細さ」「感受性の強さ」といった気質の違いがあります。
敏感な子はちょっとした刺激や注意でも心が揺れやすく、涙となって表れやすいのです。
② 発達段階によるもの
幼児期や小学校低学年の子どもは、感情をうまくコントロールする脳の機能がまだ未熟です。
大人にとっては「些細なこと」でも、子どもにとっては大きなストレスになりやすく、泣いて気持ちを発散しているのです。
③ 脳の特性によるもの
特に繊細な子どもの場合、「注意されたらすぐ泣く」という背景には脳の仕組みも関係しています。
脳には、危険を察知して身を守る「警報センサー」のような役割を持つ部位があります。
それが「扁桃体」です。
繊細な子は、この扁桃体が過敏に働きやすいと言われています。
そのため、親が「5」のつもりで注意したことでも、子どもは「10」叱られたように強く受け止めてしまうのです。
さらに、言葉だけでなく表情・声色・しぐさなど、大人の「怒りモード」をフルにキャッチしてしまいます。
こうして刺激を受け取りすぎる子どもは、日常の中で無意識に我慢を積み重ねています。
そして心の中の“我慢タンク”がいっぱいになると、ちょっとした注意でセンサーが作動し、涙があふれてしまうのです。
本人も「泣きたくない」と思っていても、脳の働きによる反応なので、自分の意思では止められません。
④ 「泣きやすさ」が心に与える影響
このような状態が続くと、子どもは「怒られる=泣いてしまう」という経験を繰り返すことになります。
そして「泣く=悪いこと」と刷り込まれてしまい、自己肯定感が下がる危険があります。
特に幼少期は自己肯定感が育つ大切な時期。
ここで「怒られて泣く」体験ばかりが積み重なると、癇癪や暴言などの二次的な困りごとに発展することがあります。
さらに年齢が上がると、自己否定感が強くなり、思春期以降にはうつ症状へとつながるリスクも指摘されています。

4.すぐ泣く子への正しい対応と、親自身の心を守る方法
子どもが泣いているとき、どう声をかけたらいいのか迷う場面は多いものです。
焦って泣き止ませようとするよりも、安心感を与える関わり方が大切です。
ここでは具体的な対応の仕方と、親自身の心の守り方をまとめます。
◆泣くことを責めない
子どもがすぐ泣くのは「弱いから」ではなく、脳が自分を守ろうと反応しているサインです。
泣いているときに「泣かないの!」と叱るのは逆効果。
まずは「泣いてもいい」と受け止めてあげることが安心につながります。
◆気持ちを代弁する声かけ
泣いている子どもには、気持ちを言葉で代弁してあげると効果的です。
「悔しくて涙が出ちゃったんだね」
「そんなこと思ってないのに注意されて悲しかったんだね」
代弁されることで「分かってもらえた」と感じ、少しずつ涙より先に言葉で表現できるようになっていきます。
◆我慢をためすぎない工夫
繊細な子は日常で人一倍頑張り、気づかぬうちに“我慢タンク”がいっぱいになっています。
タンクを空にする時間を意識的につくりましょう。
・親子のスキンシップ
・安心できる会話
・自由に遊べる時間
これが心のバランスを保ち、泣きやすさを和らげることにつながります。
◆親の自身の心を守る
子どもの涙が続くと、親も疲れてしまいます。
周囲の「泣き虫だね」という言葉に振り回されず、「泣くのは親のせいではない」と理解しましょう。
親が落ち着いて関わることで、子どもも安心して感情を出せるようになります。

5.すぐ泣く子に必要なのは『安心感』
「すぐ泣く子」は決して「愛情不足」ではありません。
子どもの気質や発達段階、時には発達障害グレーゾーンの特性が影響していることがあります。
親ができることは、泣く子どもを責めるのではなく「安心感を与える」「気持ちを代弁する」こと。
周囲の声に惑わされず、子どもに十分な愛情が届いていることを信じましょう。
泣きやすさは、子どもの心が成長していく過程での一つの表れにすぎません。
「泣いてもいい」
「泣いても愛されている」
そうした安心感を与えることで、子どもは少しずつ強さと柔軟さを身につけていきます。
