忘れ物が多い子どもに悩む親御さんへ。マイペース・不注意・ASDグレーゾーンの可能性をわかりやすく解説。脳の特性を理解し、イライラせずに支援できる家庭の工夫と学校生活を安心して進めるための声かけ方法を紹介します。
1.忘れ物が多い子どもは発達障害?ASDグレーゾーンの特徴と家庭でできる改善法
忘れ物が多い、支度に時間がかかる、声をかけても集中が続かない…。
小学生の子どもにありがちな悩みですが、毎日のように続くと親は不安やイライラでいっぱいになりますよね。
結論から言うと…
忘れ物が多い子どもは、努力不足ではなく「脳の特性」が影響している可能性があります。
特に、発達障害の診断がなくても
・グレーゾーン
・自閉スペクトラム症(ASD)傾向
・注意欠陥多動性障害(ADHD)傾向
・不安気質
といった特性を持つ子どもには、忘れ物や支度の遅さが目立つことがあります。
これは、本人の気持ちや性格の問題ではなく、脳が情報を整理しにくく、行動を切り替えにくい仕組みを持っているために自然と起きるものです。

2.忘れ物が多いのは努力不足ではない理由
◆脳が「やることを覚えておく力」を必要とする
忘れ物をしないためには
・明日の持ち物を覚えておく
・寝る前にランドセルに入れる
・朝もう一度確認する
という複数の工程を頭でキープし続ける必要があります。
これは、子どもにとって大人が思うよりはるかに難しい作業です。
◆ ASD/ADHD・グレーゾーンの子どもは忘れやすい
発達障害やグレーゾーンの子どもは
・行動の切り替えが苦手
・一つの刺激に注意が奪われる
・楽しいものに気持ちが向きやすい
といった特徴があり「今やっていたことをそのまま忘れる」という流れが起きやすくなります。
例えば
片付けをしようと思って立ち上がったのに、途中でテレビの音が聞こえ、片付けを忘れてしまう。
これが毎日起こると、忘れ物の原因になります。

3.忘れ物や支度の遅さが生まれる脳の仕組み
子どもの忘れ物や支度の遅さを理解するには、「脳の働き」を知ることが大切です。
◆ワーキングメモリーが弱い
ワーキングメモリーとは、今やっていることを頭に残しながら別の作業をする力です。
これが弱いと
朝支度 → テレビ → 支度を忘れる
宿題 → おもちゃ → 宿題を忘れる
という流れが自然に起きてしまいます。
本人は悪気がなく忘れてしまっているのです。
◆気持ちの切り替えが苦手
学校でも家庭でも、何かをやめて次の行動に移るには”行動を切り替える脳の力”が必要です。
グレーゾーンやASD傾向の子どもは、切り替えに時間がかかり「今やっていることをやめる」ことが苦手です。
◆周りの刺激に注意が奪われる
テレビ・音楽・おもちゃ・家族の会話など、子どもは日常の刺激に気持ちが動きやすく、 “やっていたことが頭から抜けてしまう”という流れが起こりやすくなります。

4.筆者の体験談|忘れ物に毎日イライラして泣かせてしまった日々
私の息子もASD傾向で、朝の支度がとてもゆっくりで、声をかけても途中でテレビや布団に気持ちが行ってしまい、集中が続きません。
夜も同じ。
風呂上がり、パンツを履いたままボーッとしていることが多く、支度を忘れてしまう。
私が声をかけると「あっ」と気づき、また急いで着替える。
何度声をかけてもすぐ忘れてしまう息子に対して、以前の私は常にイライラして接しており
「なんでできないの?」
「ちゃんとして!」
と怒って泣かせてしまう日もありました。
私は
『何度言ってもちゃんとできない子ども』そして『できない子どもに怒ってしまう自分』
の両方を責めていました。
今思えば、息子は努力が足りないのではなく、「脳が切り替わりにくい特性」があっただけだったのです。
親子で苦しむ必要はありませんでした。

5.今日からできる家庭での実践方法 〜忘れない工夫〜
忘れ物が多い子どもへの対応は『叱る』より『仕組みを作る』ことが効果的です。
ここでは、簡単に今日から始められる対処法を紹介します。
①言葉で伝えるより「見える仕組み」にする
子どもは言葉で言われても忘れやすいため、
・朝の支度リスト
・帰り支度リスト
・夜の身支度リスト
を紙に書いて貼っておくと、忘れにくくなります。
チェック式にすると成功体験が増え、自己肯定感も上がります。
②固定の忘れ物チェック表を貼る
ランドセルの横に、
✔️ノート
✔️筆箱
✔️ハンカチ
✔️給食袋
✔️宿題
✔️本
などの固定リストを貼ります。
親は、「覚えさせる」のではなく「忘れない仕組み」を作ることに切り替えると楽になります。
③ 時間の切り替えは「数字」ではなく「見えるタイマー」
子どもに「あと5分で支度してね」と言っても、時間の感覚がつかみにくいです。
その代わり
・タイマー
・砂時計
・色が変わるタイマー
など、視覚化された時間を使うと切り替えがスムーズになります。

6.まとめ
・忘れ物は努力不足ではなく、脳の特性が理由のことも多い
・ASD/ADHD、グレーゾーンには忘れ物がよく起きる
・叱るより、視覚的な仕組みで支えることが有効
・固定リストやタイマーが効果的
・学校との連携が安心につながる
・親が一人で抱え込む必要はない
忘れ物が多い子どもは、「困っている」のであって「怠けている」わけではありません。
大切なのは、親子で安心して取り組める仕組みづくりです。
親子で、ゆっくり成長していきましょう。





