知っている人にも挨拶できない…そんな子どもの姿に悩んでいませんか?発達障害グレーゾーンの特性から挨拶が難しい理由を紐解き、無理なく身につく関わり方をお伝えします。
1.子どもにとって挨拶が難しい理由
気持ちの良い挨拶は、円滑な人間関係を築くために必要不可欠なものですよね。
ですが、発達障害グレーゾーンの子どもにとっては、実はこの「挨拶」が意外と難しいことも多いのをご存知でしょうか。
一言で「挨拶」と言っても、その中には
「いつ・どんな人に・どんな言葉で・どんな表情で」
と、たくさんの判断が含まれています。
細かく分解して考えてみると、私たちは無意識のうちに、かなり高度なテクニックを使って挨拶をしていることがわかります。
「挨拶もできないなんて、大丈夫かしら…」
そんなふうにお子さんのことを心配しているママへ。
この記事では、「挨拶ができない」のではなく「どうしたらできるか」を理解するためのヒントと、今日からできる対応をご紹介します。

2.挨拶できなかった息子の体験談
我が家には、年中さんになる発達障害・グレーゾーンの息子がいます。
極度の恥ずかしがり屋で人見知りが強く、知らない人はもちろん、「たまに見かける人」レベルの知り合いと会った時でも、私の後ろに隠れてしまい、挨拶をすることができませんでした。
年齢的にも、そろそろ小学校入学を見据えて動かなければいけない時期。
「挨拶くらいはできるようになってほしいな」という思いから、 その都度「次は挨拶できるように頑張ってみようね」と声をかけていました。
その場では「わかった!」と言うものの、いざ人を目の前にすると、やはり動けない。
なぜできないのかが分からず、どう関わればいいのか迷う日々が続いていました。

3.発達障害・グレーゾーンの特性から見る挨拶の難しさ
実は、発達障害グレーゾーンの子どもが挨拶に苦手さを感じることは、決して珍しいことではありません。
そこには、特性による理由があります。
・挨拶をする「タイミング」がつかみにくい
発達障害グレーゾーンの子どもは、人とのコミュニケーションそのものに難しさを感じやすい傾向があります。
人の表情や場の空気を読み取ったり、相手の言葉の意図を理解したりするのに、時間がかかることがあるのです。
挨拶は、短い時間の中で瞬時に判断し、言葉を返す必要があります。
そのため、状況を理解しているうちにタイミングを逃してしまい、結果として挨拶ができなかった、ということが起こりやすくなります。
・挨拶の種類が多く、正解がわからない
「おはよう」から「こんにちは」に変わる時間帯はいつ頃か? と聞かれると、人や状況によって感覚が少しずつ違いますよね。
私たちは「なんとなく」のルールで挨拶を使い分けていますが、 発達障害グレーゾーンの子どもは、この「なんとなく」がとても難しいのです。
どの時間帯にどの言葉を選べばいいのか、 「おはよう」でいい人と「おはようございます」と言ったほうがいい人の違いは何か。
それが分からないままでは、挨拶したい気持ちがあっても、行動に移せなくなってしまいます。
また、相手から複数の声かけを一度にされると、「どれにどう答えたらいいの?」と混乱してしまうこともあります。
たとえば、「おはよう、今日は暑いね」と声をかけられた時に、「おはように答えるのが先?暑いねに答えるのが先?」と考えているうちに、言葉が出なくなってしまうのです。

4.挨拶ができるようになる特性に合わせた具体的な対応
つまり、発達障害グレーゾーンの子どもにとって、挨拶は「やりたくない」のではなく、「どうすればいいか分からない」状態なのです。
だからこそ、「わからない」を「わかる」に変えてあげることが大切になります。
ここからは、子どもの特性に合わせた具体的な対応をご紹介します。
◯ よく会う人との挨拶から、タイミングを教える
挨拶ができるようになるためには、成功体験を積み重ねることが大切です。
まずは、よく会う人との挨拶から始めてみましょう。
例えば、
・「『おはよう』と言われたら、すぐに『おはよう』と笑顔で返そうね」
・「相手が誰かと話している時は、すれ違う時に会釈だけでいいよ」
このように、具体的な場面ごとに教えてあげることがポイントです。
◯ 挨拶が変わる時間を具体的に伝える
ママの感覚で構わないので、挨拶ごとの時間をはっきり伝えてあげましょう。
例えば、
「『おはよう』は朝起きてから11時まで。11時を過ぎたら『こんにちは』を使うよ」
このように具体的に示すことで、子どもはぐっと理解しやすくなります。
また、
「『おはよう。今日も暑いね』と言われたら、まず『おはよう』と返してから『暑いね』と同じ言葉を返すといいよ」
といったように、返し方まで具体例で伝えるのも効果的です。
加えて、「ママがやってみるから見ていてね」と声をかけ、実際に挨拶する姿を見せることも大切です。
こうした関わりを続けていく中で、息子も少しずつ挨拶への抵抗が減り、恥ずかしがりながらも挨拶ができるようになっていきました。
ぜひ、「挨拶は自然と身につくもの」という思い込みを手放して、一つのスキルとして、わかりやすく教えてあげてくださいね。

執筆者: 中谷 そら
発達科学コミュニケーション トレーナー






