お子さんが、髪を切りたがらないことに困っていませんか?その背景には、発達の特性による不安があるのかもしれません。この記事では、私がしてしまったカットの際のNG対応と、改善策をまとめています。ぜひ参考にしてみてくださいね。
1.髪を切りたがらないお子さんに困っていませんか?
お子さんが、「髪を切りたくない」と拒否して、どう関わればいいか悩んだことはありませんか?
「どうして切りたくないの?」と理由がわからないまま、時間だけが過ぎて行く。
そんな場面に戸惑った経験があるママも多いのではないでしょうか。
実は、発達の特性をもつ子どもたちは、大人が想像しにくいポイントで強い不安を感じていることがあります。
まわりから、
「髪切った方が良いんじゃない?」
「随分伸びたね」
そんな言葉をかけられるたびに、責められているような気持ちになりますよね。
切った方が良いのはわかっているけど、簡単に切らせてくれないのが、発達の特性を持つ子どもたち。
発達の特性により、何に不安を感じているのかを理解しないと、なかなか髪を切ることはできません。
私自身、息子の発達の特性を理解しないまま、「なんとか切らせよう」とNG対応を重ねてしまいました。
この記事では、NG対応に対する改善策と、息子が自ら「切りたい!」とまで言えた理由についてお伝えします。

2.不登校になり、美容室に行けなくなってしまった息子
私の息子は、不登校になってから美容室へ行けなくなってしまいました。
それまでは、
特別嫌がることもなかったのに
です。
美容室に電話をしようとすると、
「切りたくない」
「時間かかるから嫌」
「変な髪型になったら困る」
などと言って、全然予約を取らせてくれません。
最後に美容室に行ってから2カ月以上が経ち、全体的にボサボサの状態になってしまいました。
見た目の問題もありましたが、「このままでいいのかな」という不安が、私の中で大きくなっていきました。
「そろそろ切らないとおかしいよ」
「目が悪くなっちゃうよ」
そんなふうに声をかけましたが、息子は「行かない」の一点張り。
何を言っても動かない息子に、どうしたらいいのかわからなくなっていきました。

3.発達の特性による息子の不安を理解せずにしてしまったNG対応
そんな中、私の友人が美容師だったことから、自宅で友人にカットをしてもらうことにしました。
子どもは、友人と面識もあり、
「プロの友人なら、なんとか切ってくれるかもしれない」
私は、息子の気持ちよりも「成功させる方法」を探していました。
ここから私は、息子の特性を理解せずにNG対応を重ねてしまいました。
【1回目のNG】強引に切る・否定的な声かけ
嫌がる息子を半ば強引に椅子に座らせ、カットを始めました。
しかし、前髪だけ切ったところで、息子は泣き出してしまいました。
この時、私は息子に泣いた理由も聞かずに、「泣かなくてもいいでしょ」などと否定的な声かけをしてしまいました。
泣いても、嫌がっても、「ここを乗り越えないと先に進めない」と思っていました。
でも今振り返ると、私は「できていないこと」に注目し、不安を抱えている息子にさらに否定的な注目を向けていました。
発達科学コミュニケーションを学んでから、否定的な声かけや表情も「注目」になり、子どもの不安や抵抗を強めてしまうことがあると知りました。
私はあの時、息子を励ましているつもりで、実は不安を大きくしていたのだと気づいたのです。
気づけば私は「なんとか切らせたい」という目の前の自分の都合を「子どもの限界」よりも優先してしまっていました。
その結果、1回目のカットは失敗に終わりました。
【2回目のNG】限界を超えさせたこと
1回目のカットの失敗から、私は、息子自身に「髪を切りたい!」と思わせないといけないのだと思いました。
そこで、息子が好きなアニメのキャラクターのうち、短髪のキャラクターに注目し、
「〇〇みたいな髪形かっこいいね」
「〇〇みたいに短い髪も似合いそうだね」
などと、ことあるごとに息子に短髪をすすめました。
すると、息子自身も「〇〇みたいに切ってみようかな!」と言い始めたのです。
私は「今度こそいける」と思いました。
でも、これも今考えると「息子が決めた」ように見えて、実は私がゴールを決めていました。
しかし、この時の私はそれに気づかずに、また友人にカットを依頼しました。
2回目のカットは、1回目よりも多く切ることができました。
しかし、途中でまた息子は「引っ張られて痛い」と言って泣き出します。
私は、息子の訴えを無視し「もう少しがんばれないの?」と自分の思い通りにさせようとしてしまったのです。
すると、息子が
「本当に痛いのにどうしてわかってくれないの?ここまでがんばったのに、どうして誰も褒めてくれないの?」
と言ったのです。
私は、この時初めて「息子が本当に痛がっている」ことに気づきました。
息子は、わがままだったのではなく、限界まで我慢していただけだったのです。
私はようやく「切らせる方法」ではなく、「不安を減らす関わり」が必要だったのだと理解しました。

4.息子が感じている4つの不安への対応
2回もNG対応をした結果、私は息子の痛みに気づくことができました。
私は、初めて、
「痛かったんだね」
「気づかなくてごめんね」
「がんばったね。前よりたくさん切れたね」
このような息子を認める肯定的な声かけをたくさんしました。
息子は、「やっとわかってもらえた」という安心した顔を見せました。
この失敗経験から、私は「全部切ること」を目標にするのをやめました。
そして、自閉スペクトラム症(ASD)の特性をもつ息子の不安を一つずつ整理していきました。
髪を切ることへの不安は、大きく4つありました。
①カットにかかる時間への不安
ASDキッズの中には、見通しが立たないことに不安を感じる子もいます。
私の息子も「いつ終わるかわからない」ことが一番つらそうでした。
そこで、カットの手順を事前に説明したり、最初から「今日は前髪だけ」「ここまでできたら終わりにしよう」と範囲を区切りました。
そして約束した範囲は、必ず守る。
小さな「できたね!」を積み上げることを意識しました。
途中まででも「がんばったね」と認めてあげることが大切です。
②自分の気に入らない髪型になることへの不安
息子はどんな髪型にされるのかを心配していました。
ASDキッズの中には、「切った後どうなるのか」を頭の中で具体的に想像することが難しい子もいるといわれています。
イメージできない変化は、それだけで大きな不安になることがあります。
そこで、アニメのキャラクターを見せながら、
「どのくらいの長さ?」
「ここまで?」
と具体的に確認し、切ったあとの姿をできるだけ目で見てわかる形でイメージできるように工夫しました。
事前に息子となりたいイメージを共有し、「カットしてくれる人にもきちんと伝えるね。」と、安心を感じられるようにしました。
③髪を引っ張られることへの不安
ASDキッズの中には、感覚過敏がある子もいます。
少しの刺激でも、強い痛みや不快感として感じることがあります。
・特定の素材の服を着られない
・濡れたり、汚れたりすることを嫌がる
・少し触っただけなのに痛がる
こんな様子が見られる場合は、「本当に痛い、嫌だ」と感じている可能性があります。
「そんな大げさな…」などと思わず、本当の痛みとして受け取めました。
④髪を切ることに対するネガティブな感情による不安
そもそも「髪を切ることを嫌だな…」と感じているASDキッズは、普通に誘っても応じてくれません。
楽しい見通しが持てないと、行動に移しにくい子もいるからです。
「切ったら、強く見えそうだね!」
「〇〇みたいな髪型って、かっこいいね」
こんなふうに「髪を切ろう」ではなく、楽しく声をかけることが大切だと思います。
ASDキッズをやる気にさせるには、「楽しくなるような誘い方」をすることが有効です。

5.息子の気持ちを受け止めたことで訪れた変化
カットを2回続けて失敗したため、しばらく髪を切るのは無理かな…と諦めていました。
しかし、2回目のカットの翌日、息子が信じられないことを言いました。
「残っている部分の髪も切ってもらいたい!」
2回目のカットの後、私が息子の嫌がる気持ちを受け止め、がんばりを認めたことで出てきた言葉でした。
そして、3回目のカットで、息子は好きなアニメのキャラクターのような短髪にすることができました。
お子さんが髪を切りたがらずに困っているママは、お子さんが何に不安を感じているのか、観察してみてください。
ASDキッズの髪を切る時には、特性を理解した誘い方・切り方・声かけが必要です。
髪を切りたくないのは、決してわがままではありません。
不安を理解し、丁寧に対応してあげることで、切るチャンスが生まれます。
カットにチャレンジする際は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

執筆者:三谷 のぞみ
発達科学コミュニケーション アンバサダー




