修学旅行に「行きたいけれど、不安で踏み出せない」。そんなお子さんに、どう声をかけたらいいのか悩んでいませんか?不安と楽しみの間で揺れ動く子どもの心の中で何が起きているのか。勇気を育む4つのステップをご紹介します。
1.「行きたい」のに行けない…葛藤する子どもの本音
「行きたい」と「行きたくない」が交互に押し寄せ、なかなか決められない子ども。
親御さんとしては「どう声をかけたらいいんだろう…」と悩むこともありますよね。
私の息子は、自閉スペクトラム症(ASD)グレーゾーンで感覚が敏感な子でした。
修学旅行の案内を受け取り、息子に「どうする?」と聞くとすぐには答えられず、少し時間を置いて話を聞いてみると…
不安に感じていたこと
- 長時間のバスで酔ってしまわないか心配
- 途中で「帰りたい」と思ったらどうしよう
- 周りのにぎやかさや人との関わりに負担を感じること
(中には、関わり方が強く感じられる場面もあり、それが不安につながっていました)
楽しみにしていたこと
- 友達と枕投げをしたい
- 宿での食事やアクティビティが楽しみ
楽しみと不安が交互に押し寄せる様子は、まるで激しい感情のジェットコースターに乗っているようです。
自分でも気持ちをコントロールできないまま揺れ続け、すっかり疲れ切ってしまっている状態でした。
大人から見れば「そんなに行きたいなら行けばいいのに」と思うかもしれませんが、子どもにとって「行く・行かない」の判断は、脳の特性や感覚の敏感さに深く関わる大きなチャレンジです。

2.修学旅行前に不安が爆発するのはなぜ?脳と感覚の3つの理由
① 感覚が敏感な子どもにとって「行く」は大きなチャレンジ
バスの揺れやにおい、人の声、周囲のにぎやかさ…。
こうした刺激は、感覚が敏感な子どもにとって強いストレスになります。
さらに、
- いつ休めるか分からない
- 体調が悪くなっても家に戻れない
こうした「見通しの立たなさ」や「逃げ場のなさ」は、不安の強い子にとって大きな負担です。
楽しみと同じくらい、子どもにとっては「チャレンジ」でもあるのです。
② 不安を感じやすい脳の仕組み
不安の強い子どもは、危険を察知する脳の扁桃体が敏感に働きやすいと言われています。
そのため、少しの変化でも「怖い」と感じやすく、
「長時間のバスで酔ってしまわないか心配…」
「体調が悪くなったらどうしよう…」
と気持ちが揺れ続けます。
③ 不安が強いと「思考の交通渋滞」が起こる
不安で頭がいっぱいになると、感情をコントロールし、冷静に考える役割を持つ前頭前野の働きが弱まります。
いわば、脳内の交通渋滞が起きている状態。
「どうしたらいいか分からない」「考えても決められない」とパニックになり、同じところをぐるぐると回り続けてしまうのです。

3. 子どもの勇気を育てる!家庭でできる「心の整理」4ステップ
お母さんが家庭でできる、子どもの心の安心をつくる関わり方です。
順番に行うことで、子どもは自然と自分の気持ちを整理できるようになります。
① 保留 : まずは親の意見を横に置く
「すぐ答えを出さなくていい」と自分に言い聞かせ、子どもの話を聞きます。
親の意見やアドバイスは置いておきます。
② 受容:気持ちをありのまま受け止める
「うんうん、そうなんだね」と、話す内容を否定せず受け取ります。
たったこれだけで、子どもは「お母さんは受け止めてくれる」と感じることができます。
③ 理解 : 不安の本質を読み取る
子どもの言葉だけでなく、表情や声のトーン、様子をよく観察しながら、何が一番不安なのかを見つけていきます。
言葉で上手く説明できないときは、「こんなことが心配なんだね」と優しく代弁します。
④ 共感: 気持ちに寄り添う
理解できたら自然と共感が生まれます。
「心配だよね」「分かるよ」と伝えることで、子どもの脳に考える余裕が戻ります。

4.【実践編】ワクワクを思い出すための「魔法の質問」
私が実際に息子に対して行った声かけは次のような流れです。
- 子どもが不安な気持ちを伝えてきたら、「どんなことが気になっている?」と尋ねる
- 話を急かさず、最後まで聞く
- 言いにくそうな時は「〇〇が心配なんだね」と代弁したりしながら、「そうだよね、分かるよ」と受け止める
ちょっと難しく感じるかもしれませんが、子どもの
- どんな発言にも反応しすぎないこと
- 穏やかな表情で、温かく、淡々と「そうなんだね」と聞く
これがコツです。
ここまでで、子どもの心は少しずつ落ち着いていき、考えたり決める力も戻ってきやすくなります。
子どもの話をじっくり聞きながら、こんなふうに「両方の気持ち」をそのまま言葉にしてあげるのもおすすめです。
「行くのが不安なんだね」
「でも楽しみなこともあるんだよね」
こうして気持ちを整理してあげると、子どもは「どちらの気持ちも持っていていいんだ」とほっと安心できます。
心が落ち着いてきたら、最後に「ワクワクのスイッチ」を探してみましょう。
「修学旅行では、どんなことがやってみたいんだっけ?」
「宿で楽しみにしてることあったよね?」
このように、ポジティブなイメージを呼び起こす質問をして、ワクワクや楽しみを思い出させるようにすると、脳の報酬系が働き、
「不安はあるけど、やっぱりやってみたい!」
という前向きなエネルギーが自然に湧いてきやすくなります。
不安が出てきたときも、少し考える質問をすることで、気持ちの切り替えがしやすくなります。
これは、質問によって感情が高ぶっている状態から、少しずつ考えられる状態へと切り替わりやすくなるためです。
大切なのは、答えを出すことではなく、子どもが自分の気持ちを整理できる状態をつくること。
不安と「やりたい気持ち」が混ざっているときほど、親が結論を急がず、その両方を一緒に言葉にしていく関わりが大切になります。
我が家の息子も、当日まで不安はありましたが、自分で楽しみを思い出すことで、「不安があっても挑戦してみよう」と一歩を踏み出すことができました。
以前のように「行く・行かない」で止まるのではなく、「気持ちを整理して選べる」ようになったことが、大きな変化でした。

5.修学旅行の不安に悩むお母さんへ
修学旅行が近づくと、子どもだけでなくお母さんの気持ちも揺れますよね。
でも、不安があっても大丈夫です。
行く・行かない、どちらの選択でも大丈夫です。
不安が強くて動けないときは、無理に背中を押さなくてもいいと私は思っています。
そんなときは、まず安心できることを大切にしてあげてください。
そして、気持ちが少し落ち着いてきて、「やってみたいな」という気持ちが見えてきたときには、その一歩をそっと支えてあげられたらいいですよね。
大切なのは、その気持ちに寄り添うこと。
寄り添って、安心の土台を作っていけば、少しずつ子どもは前に進んでいきます。
「行きたい気持ちはあるけれど、不安で揺れている」そんな時期のお子さんが、自分の気持ちを整理して選べるようになるための関わりをお伝えしました。
安心の土台を整えていく中で、お子さんのペースで一歩を選べる力は少しずつ育っていきます。
その日を、一緒に信じて待ってあげたいですね。

\“どう関わればいいか迷う”ママへ/
「待つ?手伝う?」と悩みやすい場面での関わり方を
不安が強い子が「自分でやる」を少しずつ増やしていく
視点と具体的な声かけにまとめました。
執筆者:たかなしりら
発達科学コミュニケーション トレーナー




