新しい環境に馴染めず、イライラ。そのストレスからの癇癪がひどい。そんな思春期のお子さんの様子を心配されているママはいらっしゃいませんか?この記事では、子どもがなぜ癇癪を起こしてしまうのか。そして、不安の強い子の脳に届く声かけ・対応のコツをご紹介します。
1.新しい環境に馴染めずに癇癪を起してしまう思春期の子ども
新しい環境や集団生活に馴染めず、そのストレスからの癇癪に苦しんでいる高学年・思春期のお子さんとそんなお子さんにどう対応すればいいかわからずに困っているママはいませんか?
新しい環境に慣れるには誰しも時間がかかったり、最初は苦労したりすることが多いですよね。
特に発達凸凹のあるお子さんでコミュニケーションが苦手なお子さんなら、なおさらのことだと思います。
学校という集団生活の中で、不安や緊張のあまり自分の思いや要求を伝えたくてもうまくいかず、その結果、不安感が増したり、イライラしたり、不適切な行動をとってしまう可能性があります。
慣れない新しい環境の中で不安感や緊張感が増し、自分の気持ちや要求を適切に表現できずに困っている子どもは高学年になっても、もちろんいると思います。
むしろ高学年・思春期になればなるほど周りの目が気になり始め、低学年よりも新しい環境に抵抗を感じてしまう子どもも多いのではないでしょうか。
2.息子の癇癪に親子で疲れ切ってしまった過去
そういうわが子も小学校6年生の4月に初めて新しい学校に転校し、新しい環境に馴れずに不安と緊張いっぱいの気持ちで毎日を過ごしていました。
高学年であれば、これまでの学校生活を経験済みなので、新しい学校といえども、同じような教室で同じような学習や活動をするので、一見困ったようには見えません。
しかし、発達凸凹があったり、繊細な気質をお持ちのお子さんだと新しい環境に適応することが難しい場合があります。
教師も親も、「これができるから、あれもできるだろう」「もう高学年だからこれぐらいは分かっているだろう」と勝手に思い込んでしまい、適切な支援をせずに見過ごしてしまうこともあります。
本人は
すごく戸惑っているのにそれをうまく伝えられない。
友達を作りたいのに、どう声をかければいいのか分からない。
または、声をかけられてもうまく応えられずに、なかなか新しい友達を作ることができない。
そんな不安な気持ちや疲れをうまく言葉にできずにためこみ、イライラした気持ちが募り、家では次第に感情を爆発させるようになりました。
息子は学校での不安感やイライラした気持ちをうまく表現できずに、帰宅後ちょっとしたことでイライラするようになり、癇癪を頻繁に起こすようになりました。
また、登校拒否も出始め、学校に行けても遅刻や早退を繰り返すようになり、朝「2時間目から行く」と自分で決めても家を出発する時間になると「本当は行きたくない」と癇癪を起すようになりました。
学校に行く前にも癇癪。
学校から帰ってきてからも癇癪。
学校に行けなくても癇癪。
そんな時、私は一刻も早く、苦しむ我が子を何とか救いたくて、
「そんなに嫌な思いをしてまで学校に行かなくていいよ!」と声かけをしていました。
それでも完璧主義で「~しなければならない」と言う思いが強いので、「学校に行きたくないけど、行かなければならない」といったジレンマがさらに自分自身を苦しめ、苦しみながら登校し、そして疲れ切ってしまうという悪循環の日々が続きました。
自己否定をし、自分を責める感情が日に日に強くなっていく我が子。
どんどん自信を失っていき、今まで出来ていたこともできなくなってしまいました。
癇癪を起すたびに最後には「どうしてわかってくれないのか」と涙ながらに訴えていました。
学校でも家でも疎外感を強く持っている状態でした。
そんな時、私自身も我が子にどう接していいのか、悩み苦しみ、癇癪が起きる度に息子の感情にふりまわされ、親子共々疲れ切ってしまいました。
3.癇癪が起こる理由
ここでちょっと脳のお話をさせていただきますね。
皆さんは、脳の「扁桃体」という部分の働きについて知っていますか?
扁桃体は、脳の目の奥側にある「恐怖」「不安」「緊張」「怒り」などネガティブな感情を司る部分です。
人が生命を維持するためのとても大切な働きをし、脳に入ってきた刺激を「安全か危険か」瞬時に判断する仕事をしています。
「安全」だと判断すると脳は「快」の状態になり、「危険」だと判断すると「不快」の状態になるのです。
不安が強い子は、この「扁桃体」の動きが活発に働き、刺激に対して「危険だ!」と判断してしまいやすい脳の特性を持っています。
恐怖・不安・緊張・怒りなどの「不快」を感じやすいのはそのためです。
また、扁桃体が「不快」と判断すると、脳は「視床下部」という部分からストレスホルモンを分泌する働きを持っています。
ストレスホルモンは、記憶、感情のコントロール、注意力、善悪の判断、行動など脳のあらゆる部分に大きく影響を与えます。
「扁桃体ハイジャック」とも言われていますが、扁桃体が生み出すネガティブ感情に脳が支配されてしまうと、感情のコントロールが効かなくなり
・突然キレる
・暴言を吐く
・手がつけられないほど暴れるなど…
ひどい癇癪が起こるようになります。
もし、不安が強いお子さんの癇癪をどうにかしたい!と思っているのであれば、まずは子どもの脳を「快」の状態にしてあげることが重要です。
4.癇癪や暴言が止まらない不安が強い子の脳に届く言葉かけ・対応3つのポイント
癇癪や暴言が止まらない子どもの脳がどのような状況になっているかをご理解いただけたところで…
ここからは不安が強い子の癇癪の対応。
お子さんの脳を「快」の状態にする声かけのポイント3つをご紹介していきます。
我が子にもとても効果があったので、ぜひ試してみてくださいね。
①子どもの感情に巻き込まれないこと
子どもがイライラし始めたり、癇癪が始まったりすると、私は始め、子どもと同じようにイライラしてしまっていました。
そして癇癪が繰り返されるようになると、困った表情をしたり、ビクビクして怯えたりしていました。
でも、ここではそのような表情や雰囲気は出さないようにしてください。
子どもの脳は「何を言ったか」という内容よりも
表情や声色、雰囲気などの非言語情報を先に処理するからです。
特に繊細すぎる我が子は、私の言葉と裏腹な表情を読み取り、「お母さん、怒ってる?イライラしてる?」とやたらと聞いてくることがありました。
それほど非言語情報は影響力があります。
②共感
このような場面で大切なのは、決して子どもの言動を否定しないことです。
たとえどんな暴言を吐いたとしてもです。
否定的な言葉かけは、子どもの感情を逆なでするだけで、さらにエスカレートさせてしまうのです。
私の場合、ついつい親心で何とか早く解決してあげたくてアドバイスをしたり、解決策を提示したりしてしまっていたのですが、感情のコントロールができていない状況の時には逆効果でした。
目の前の問題に目を奪われて、慌ててすぐに手を打とうとしないようにしましょう。
「みんなから無視されてるような気持ちがしたんだね」
「〇〇の気持ち、お母さんもすごく分かるよ」
「そんなこと言われても、できないよね」
と怒り狂う子どもの気持ちを言葉にして代弁してあげることがとても効果的です。
可能であれば、肩や背中をさすってあげたりしながら、共感の言葉をかけ続けます。
そうすれば、気持ちを分かってもらえたという満足感で次第に落ち着いてくるはずです。
③落ち着いてからの話の聴き方
共感の言葉をかけ続けることで次第に落ち着いてきます。
そうしたら、「落ち着くことができたね!」と褒めてあげてください。
それから、子どもが何を感じているのかに焦点を当てて話を聴きます。
「そっか~」
「そう思うんだね」
「へ~!どうしてそう思ったの?教えて」
「他には?」
と、話を聴きだしていきます。
ここでも決して否定的な言葉かけやジャッジはしません。
ただし、自分の存在意義を否定した時、例えば「生まれてこなければよかった」「死にたい」と言ったときのみ、きっぱり否定してください。
ここでは、問題解決は後回し。
まずは子供の感情に焦点を当てて共感することを徹底してみてください。
そうすることで、子どもは自分の現実を見つめ、立ち向かう心の準備が整ってくるのではないでしょうか。
我が子も、以前は癇癪が起きたら1~2時間止まりませんでした。
しかし、この対応を繰り返すことで、時間はかかりましたが癇癪や暴言は激減しました。
もちろん今でもイライラすることはありますが、こちらが何も言わなくても、自分でイライラする気持ちを言葉で伝えることができ、数分で切り替えることができるようになってきました。
①子どもの感情に巻き込まれないこと
②共感
③落ち着いてからの話の聴き方
しっかり共感をして、分かってもらえた満足感を持たせることが大切です。
この3つのポイントを押さえた対応で、癇癪や暴言で荒れ狂っていた子どもは、少しずつ感情のコントロールができるようになりました。
ママがいつでもお子さんの味方になって、安心・安全な心の居場所になってあげましょう!
以前の私のように、お子さんの癇癪や暴言に悩んでいるママにぜひ試してほしいです!!
執筆者:
発達科学コミュニケーション リサーチャー
コムラ りさ