家では普通に話しているのに、家の外だと話せなくなったり動けなくなったりするお子さんはいませんか?人前でなかなか話せず極度の恥ずかしがり屋だと思っていた息子は場面緘黙症と診断されました。慣れない人と話すのが苦手な息子が成長できた経験をご紹介したいと思います。
1.家の外で話せない極度の恥ずかしがり屋のお子さんいませんか?
家では普通にお話しできるのに
・幼稚園や保育園、学校などで何も話せなくなる
・初めて会う人、慣れていない人に話せない
・大人がたくさんいる状況では何も話さなくなる
・クラスで手をあげて発表することができない
・音読が嫌い
・人と目線が合わせられない
そんなお子さんはいらっしゃいませんか?
話さなくなる他にも、表情が固くなったり行動できなくなったりしていませんか?
極度の恥ずかしがり屋だと思っているママも多いと思いますが、もしかしたら場面緘黙症かもしれません。
2.場面緘黙症が極度の恥ずかしがり屋の原因だった
私の息子は小学校1年生の夏ごろから癇癪と暴力が激しくなりました。
そして3学期から不登校に。
やっと児童精神科を受診することができ、発達検査の結果と診察時の様子から自閉スペクトラム症(ASD)と場面緘黙症と診断が付きました。
「緘黙症?なにそれ?」
初めて聞く診断名。
医師によると、ある特定の場面では何も話せなくなる症状とのこと。
確かに医師の前でも心理士さんの前でも一言も発しませんでした。
思い返してみると、あれ?と思うことはありました。
保育園時代、私がお迎えに行って保育士さんと私と息子の3人になった途端話さなくなるのです。
保育士さんも「あれ?さっきまで元気に『せんせーい!』ってお話ししてくれてたんだけど…、疲れたのかな?」と不思議そうにしていることが何回もありました。
私もいつもその状況になると何も話さなくなることに違和感を感じていましたが、普段は普通にお話し出来ているので特に問題視していませんでした。
そのほかにも
・初めて会う人、慣れていない人には視線を合わせなかったり、無表情で話さない
・初めて行く場所、慣れていない場所などでも無表情になったり行動しにくい
など「あれ?」と思う点はありましたが、極度の恥ずかしがり屋なのだと思い込んでいました。
3.場面緘黙症とは?
『場面緘黙症』
初めて聞く方もいらっしゃると思います。
場面緘黙症とは、家庭では普通に話すのに、幼稚園・保育園、学校などの社会的な場面で声を出したり話したりすることが出来ない状態です。
自分の意思で話さないわけではなく、不安や緊張のために話せないのです。
ある特定の場面で話せなくなることから「場面緘黙症」といわれています。
そして、家では普通に話せているので、園や学校で話していないことに気づけないという特徴もあります。
場面緘黙症の子どもがなぜ話せなくなってしまうのか…ご説明していきます。
◆①不安を感じやすい
人間が危険な状況に置かれると脳の扁桃体というところで「不安」や「恐怖」を感じます。
みなさんが「不安」だと感じる時、体にどんな症状が起こるでしょうか?
・心臓がドキドキする
・手や脇に汗をかく
・深い呼吸ができなくなり、呼吸が早くなる
・体が思うように動かなくなる
・のどが詰まった感じになる…
不安や恐怖を感じると、身体は危険に備えて自分の身を守ろうとしてこのような症状が起こったりするのです。
緘黙症の子どもたちは不安になりやすい気質を持っていると言われており、扁桃体が不安や恐怖を感じやすい状況になっています。
だから小さな刺激に対して大きな不安が生じやすいのです。
緘黙症の子どもたちにとって、幼稚園や保育園、学校に行くことやおつかいに行くこと、慣れていない人と接することなどは大きな不安の要因になることなのです。
◆②不安障害との併存率が高い
ある研究によると、69%の緘黙児に何らかの発達障害、51%にコミュニケーション障害が認められ、また、74%の緘黙児に社会不安や分離不安などの不安障害がある、といわれています。
不安障害のある子どもたちは
・人と視線を合わせる
・注目されること
・友達や先生と話すこと
・クラスメイトの前で発表したりすること
・自分の声を聞かれること…
などに不安を感じやすい特性があります。
回避しても、またその場面が生じたときの不安や緊張が高まり、さらに強い不安を感じるようになることも…。
①不安を感じやすい
②不安障害との併存率が高い
以上のことから「緘黙」という症状によって「不安」から子どもを守っている状況だと言えます。
4.家の外で話せない息子が担任の先生とキャッチボールできるように
すでに不登校だった息子は、たまに夕方に登校し担任の先生と顔を合わせることをしていました。
各地で呼び方は違うと思いますが、私の地域では「タッチ登校」といいます。
慣れていない先生には視線も合わせず、返事もできず、うなづくのみ。
表情も固い。
新年度になったこともあり、これをスモールステップで取り組もうと決めました。
先生と視線を合わせて、話せるようになれば…。
まず、タッチ登校する環境を作りました。
・毎日とか〇曜日と△曜日と決めてしまうと子どもにストレスを与えてしまうので、行く日を固定しない
・気分が向いた時に「今から行きます」と先生に連絡して行くように…
・高学年の子どもたちの下校時刻と重なると足が止まってしまったので、下校時刻と重ならないようにする
・先生と会った時、無理に話させようとすることをやめました。
それから、実際にタッチ登校した時に
・最初は私と担任の先生が話す、息子はそれを見ている
・できそうだったら会釈やジェスチャーで挨拶
・それができたら、先生の質問に息子が答える(首を振るなどのジェスチャーでもOK)
・話せそうだったら、会話する
という段階的な目標を自分の中で立てました。
最初は私に隠れていた息子ですが、徐々に隠れなくなりました。
視線も合わせられず、表情も固まっていることが多かったのですが、徐々に視線も合わせることができ、表情も和らいでいきました。
職員玄関までしか入れませんでしたが、玄関の廊下で先生とキャッチボールできるようになりました。
野球という共通の話題があったため、その時は息子から一言二言話すこともありました。
徐々に先生との距離が近くなっていくのが分かりました。
息子はASDと場面緘黙症のため、伝えることが苦手です。
そのため少しづつ少しづつ出来ることを増やしていけるような手助けをしてあげれば、ゆっくりでも成長していくことが分かりました。
息子は場面緘黙症と診断していただけましたが、診断までたどりついていないお子さんもいらっしゃると思います。
特定の場面で話せない、動けないなどの症状があるお子さんがいて、困っているママがいらっしゃったら参考にしていただきたいです。
焦らずゆっくりお子さんに合わせて対応していきましょう。
執筆者:せがわよしか
発達科学コミュニケーション トレーナー