ASD特性を持つ6歳の子どもが強い不安を抱え、親としてどのように対応すれば安心感を与えられるのか。子どもの不安の原因を理解し、共感とポジティブな記憶作りで安心を提供する具体的な方法を紹介します。
1.自閉スペクトラム症(ASD)やグレーゾーンの子どもが抱える不安
自閉スペクトラム症(ASD)やグレーゾーンの子どもたちは、脳の特性から不安を抱えやすいと言われています。
不安が強いだけでなく、ネガティブな記憶を鮮明に覚えているため、親としては「大丈夫」と思えるようなことでも、不安を払拭するのが難しい状況がよくあります。
また、気持ちを切り替えるのが苦手な傾向もあるため、一度の失敗やミスが長期間にわたって子どもの行動や感情に影響を与えることがあります。

2.お母さんの失敗が原因!?我が家の「最強不安キッズ」が本領発揮した出来事
我が家の6歳の息子は、特に不安になりやすいタイプの「最強不安キッズ」です。
例えば幼稚園のお迎えに関しては、ちょっとした変更でも大きな不安を感じてしまいます。
息子が年中の時、ある行事の日にお迎えの時間が13時に変更されていました。
しかし、私はその時間を失念し、いつものように14時頃にお迎えに行こうとしていました。
幼稚園からの電話で気づき、急いで迎えに行くと、息子はボロボロと泣きながら「お母さんが来ないかと思った」と言いました。
とてもショックを受けていたので、「ごめんね」と何度も息子に謝りました。
その日以来、息子は毎朝「今日もお迎えに来る?」と確認するようになり、私が「大丈夫だよ」と答えても、「本当に?今日は14時だよね?」と繰り返します。
本来は14時〜14時20分のお迎えで良いのですが、息子はお迎えが14時を少しでも過ぎてしまったら、ボロボロ泣いてしまいます。
そのため、私にとっては幼稚園のお迎えは絶対遅れることはできないので、いつも緊張状態で迎えに行っています。
お迎えのことがトラウマになっているようで、1年以上経った今でも「今日、お迎え来るよね?」と不安そうに聞いてきます。
何度も同じことを繰り返されるうちに、私もイライラして「何年お迎えに行っていると思っているの?そろそろ信用してよ!」と言いたくなることもありました。
しかし、息子のどうしても不安が解消されない様子を見て、なぜこんなに不安なんだろう?と悩んでしまいました。

3.わかると納得!ASDの特徴の『不安で泣く』理由とは?
なぜ息子は3年間、毎日お迎えに行っているのに、たった1度の出来事のことを忘れず不安に思うのでしょうか?
それは脳の特性から来ているのです。
◼️ネガティブな記憶の鮮明さ
ASDの子どもは、「嫌な思いをした」という感情と結びついた記憶を鮮明に覚える特性があります。
息子にとって「お母さんがお迎えに来ない」という出来事はショックで、その日が嫌な記憶として深く刻まれてしまったということです。
◼️白黒思考の影響
また、物事を「0か100か」で捉える白黒思考も影響しています。
3年間、お迎えを欠かしたことがなくても、たった1度のミスで「お母さんはお迎えに来ないかもしれない」と不安が強くなってしまい、何度も「今日もお迎えに来る?」と聞いてしまうのです。
ネガティブな記憶と白黒思考とが合わさり、毎朝不安にかられ、「本当に?今日もお迎えに来る?」という言葉となって現れているということがわかりました。
では、その不安をどのように和らげてあげたら良いのでしょうか?

4.ASDの最強不安キッズに安心を!不安を和らげる3つのアプローチ
①不安に思う気持ちを受け止める
「何が不安なの?」と優しく聞き、不安な気持ちを言語化させてあげます。
難しそうであれば「今日もお迎えに来るかが不安なのかな?」と代弁してあげると良いでしょう。
「大丈夫」「仕方ない」といった否定ではなく、「そうなんだね、不安に思うんだね」と共感する言葉をかけましょう。
不安を認められることで、子どもは「お母さんが自分をわかってくれた」と感じ、安心感を得やすくなります。
②ポジティブな記憶を積み重ねる
ネガティブな記憶を上回るポジティブな記憶を作ることがポイントです。
例えば、「今日は少し早めにお迎えに来たよ!」とサプライズしてあげたり、帰り道にお菓子を買うなど、小さな楽しみをプラスしましょう。
お迎えそのものを楽しいものに変え、ポジティブな経験を積み重ねることで、不安を徐々に和らげることができます。
③目で見て安心させる
「お母さんがお迎えの時間を忘れるかもしれない」と感じているのなら、「アラームをかけようか」とお母さんのスマホに一緒に、家を出る時間のアラームをセットして
「これでお母さんはお迎えの時間を忘れないよ!」と目で見て確認させてあげることも、安心させることにつながります。
ASDの子どもにとって、日常の些細な出来事が大きな不安や困難につながることがあります。
親としてその不安を受け止めながら、小さな工夫でポジティブな記憶を増やすことで、不安を少しずつ軽減していきましょう。
小学生になればお迎えの習慣もなくなります。
だからこそ、今のうちにお迎えを楽しい記憶として残せるよう工夫していきたいと思います。
息子のような「最強不安キッズ」でも、親のサポート次第で大きな安心感を得られるはずです。

執筆者:豊泉 えま
発達科学コミュニケーション トレーナー