小学校に入学する前に行われる「就学前検診」。でも、集団が苦手で、人が多い場所や初めての場所を嫌がり不安になってしまうお子さんもいますよね。そんなときに親子で安心して検診を受けられるように、心配をやわらげる3つの対応をご紹介します。
1.集団が苦手な子どもの就学前検診が心配な親御さんへ
「うちの子、みんなと一緒に動けるかな…?」
「初めての場所で泣き出したらどうしよう…」
小学校入学を控えたお子さんを持つ親御さんなら、一度はこんな不安を感じたことがあるのではないでしょうか。
その不安が大きくなるのが 「就学前検診」。
これは、翌年度に小学校へ入学する予定の子どもを対象に、入学の5~6か月前に実施されるものです。
自治体によって時期は異なりますが、一般的には10月から11月ごろに行われます。
就学前検診では、子どもの心身の健康や発達などを確認し、疾患や異常があった場合、早期の治療や支援につなげるためのものです。
検査の内容は、内科・歯科・視力・聴力・耳・鼻・のど・皮膚や知力検査、さらに先生との面談などがあります。
就学前検診の受け方には、次の2つのケースがあるようです。
・親子で一緒に並ぶケース
・子どもが親と離れて、教員や5・6年生の児童に付き添われて回るケース
親と離れての検査に不安を感じたり、初めての場所に緊張してしまうお子さんも少なくありません。
特に、集団が苦手な子どもにとっては、人が大勢いる場や長い待ち時間、次々と行われる検査は、大きな不安やストレスの原因になりやすいのです。
私自身も、就学前検診を前にして親子で不安いっぱいでした。
でも、少しずつ安心できたのは3つの対応のおかげでした。
この記事では、その体験をお伝えします。

2.就学前検診に行くのを嫌がる息子を連れて行くのが大変でした
自閉症スペクトラム症(ASD)の傾向がある息子は、集団が苦手です。
人がたくさん集まる場所では、落ち着かず、「もう帰る!」と怒り出してしまう。
長い間順番を待つ時は、途中で我慢ができなくなり、「まだー?いつまで待つの?」とイライラし、時には寝転んで「やだー!」と叫び怒り出すことも。
初めての場所は見ただけで、初めてやることは少しでもやってみようと誘ったら「嫌だー!」と怒りだす。
そういった経験から、集団で就学前検診を受けることに私はとても不安を感じていました。
事前に息子とこのような会話をしました。
私「今度、〇〇くんが行く小学校に病院の先生が来てくれて、体の色々なところをみてもらうよ!」
息子「何するの?やだ。行きたくない」
私「胸の音を聞いたり、口を開けて見てもらったり、痛いことは何もしないから安心して大丈夫だよ!」
息子「……やだー!やりたくない!」
と怒り、とても警戒している様子でした。
そんな息子の姿に、私はますます心配になりました。
ではなぜ、集団が苦手な子どもは、人が集まる場所、長い間待つこと、初めての場所や初めての経験に強いストレスや不安を感じるのでしょうか?

3.集団が苦手な子どもが不機嫌になるのは「脳の特性」が関係していた
集団が苦手な子どもが、人が集まる場所、長い待ち時間、初めての経験に強いストレスや不安を感じるのは、きちんとした理由があります。
その背景には、発達障害やグレーゾーンの特性が関わっていることがあります。
♦人が集まる場所が苦手
発達障害やグレーゾーンの子どもは、聴覚・視覚・嗅覚・触覚などの感覚が過敏なことが多いです。
普段は気にならない音や匂いでも、不安やストレスが強いときには、人混みのざわざわした音や歯科検診の独特な匂いがつらく感じられることがあります。
我が家が体験した就学前検診では、親子を含めて約200人が集まり、検査ごとに親子で長い列に並ぶ形式でした。
誰にとっても負担の大きい環境ですが、感覚が過敏な子にとっては、より強いストレスや不安となっていたはずです。
♦新しい場所や初めてのことが苦手
発達障害やグレーゾーンの子は、脳の「偏桃体」が過敏に働きやすく、初めての場所や人・経験を「危険かもしれない」と警戒しやすい傾向があります。
そのため、就学前検診で「やったことがない」「見たことがない」ことに対して、強い不安から「やりたくない」「もう帰りたい」と拒否してしまうのです。
♦見通しが立てるのが苦手
これから行うことを想像したり理解することが苦手なので、
「何のための並ぶのか」
「あとどれくらい待てば自分の番になるのか」
という想像がしにくく、
「まだー?」
「あとどれくらい?!」
とイライラしてしまうのです。
また、時間感覚が身についてないことも多く、「あと10分くらいかなー」「10番目くらいだね」と説明されても、実際にどれくらい待つのかが分からず、不安やイライラが高まってしまいます。

4.集団が苦手な子の就学前検診への不安を減らす対応のヒント
♦事前に学校へ連絡する
事前に学校へ連絡をし、子どもの特性を伝える・検診の詳細を聞くことで私の不安を減らすのに効果がありました。
・どのくらいの人数が集まるのか?
・どういう形で検診を受けるのか?(子どもと離れるのか、親子一緒なのか)
・毎年どのくらいの時間が掛かるのか?
など、知っておくと事前に見通しが立ち、子どもにも話すことができます。
他には、もし子どもが荒れてしまった時にどうしたら良いか?を話しておくのも安心かもしれません。
息子の学校では、別室で気持ちが落ち着くまで待機することを提案して下さいました。
♦事前に練習する
初めての場所や初めての経験が苦手な子は、事前に練習することをお勧めします。
初めてやることは、脳にとても負担が掛かるため、慣れない場所や人前だと、緊張してしまいできなかったり、やることを理解できなかったりすることもあります。
検査の中でやったことない、久しぶりにやることなどを事前に練習しておくと少し安心して当日の検査を受けられます。
♦見通しを立てる
事前に子どもに検査の内容、学校での滞在時間、どういう形で検査をするのか話しておきます。
当日に検査を受けるのに並ぶことがあれば、
「この列に並んで、あと5人終わったら次だよ」
時計を見せて、「ここまで針がくる頃には、〇〇くんの順番かも!」
など、子どもがどのくらい待てば良いのか目で見て分かるように伝えるようにするのがお勧めです。
子どもが「まだー?」とイライラしてきた時は、「待つの飽きてきちゃったね。」「早く検査終わらせたいね。」と子どもの気持ちに共感します。

5.就学前検診を最後まで受けられた息子の記録
検診に行く前に、どんなことをするのか、どれくらい時間がかかるのかを息子に話しました。
理解はしてくれたのですが、「やだー、そんなに長いのやだ!」と怒る場面もありました。
そんなときは、「そうだよね、長いの嫌だよね」「ママも隣で見てるから、一緒に頑張ろう」と気持ちに共感しました。
さらに、「頑張ったらご褒美を用意する」という作戦も効果的でした。
息子は好きなキャラクターのフィギュアを買ってもらうことを選び、気持ちを切り替え、学校に向かうことができました。
大人数でちょっと落ち着かずイライラすることもありましたが、列が短いところから順番に検診を受けました。
順番を待てたり、検査を受けられたりしたときには、「みんなと並んで待ててママ嬉しいな」「検査を静かに受けられたね、よく頑張ったね」と声をかけて褒めました。
褒められることで、子どもの不安やストレスも少し和らぎます。
途中で疲れてイライラしてしまい、「もう並びたくない!」と怒ったり、床に寝転んで叫ぶこともありました。
ですが、事前に学校に伝えていたおかげで、先生がすぐに別室に案内してくれました。
別室で落ち着くまで待ち、人数が少なくなったタイミングで気持ちを切り替え、最後まで検診を受けることができました。
集団が苦手で親子に負担がかかる場合は、無理にみんなと同じタイミングで受けなくても大丈夫です。
ただ、自治体によっては当日都合が悪い場合、学校指定の医療機関で個別に受診する必要があることもあります。
親子の不安を少しでも減らして、できるだけ安心して就学前検診を受けられるように工夫できるといいですね。
我が家の体験が、少しでも参考になれば嬉しいです。

執筆者:木村 まい
発達科学コミュニケーション アンバサダー