「“大丈夫”って言っても伝わらない…」そんな不安が強い子どもへの声かけに悩むママへ。実は“励まし”より“共感”が効く!逆効果にならない言葉の選び方と、安心を育てるコツを紹介します。
1.「大丈夫」は魔法の言葉じゃない──不安が強い子どもの心に届かない理由
子どもの成長の中で、不安や怖さを感じることは自然なことです。
でも、不安が強いお子さんの場合、その不安や「怖い」と感じる対象がとても多いですよね。
「怖い」「行きたくない」「やだ」と言うお子さんに、少しでも安心してほしくて思わず口から出る「大丈夫!」という言葉。
でも実は、この言葉が不安の強い子には逆効果になってしまうことがあります。
どれだけ「大丈夫」と言われても、子ども本人が『不安』を感じているなら、その気持ちは消えません。
「怖いものは怖い」──それが子どもの心のリアルです。
親の「大丈夫」は励ましのつもりでも、子どもにとっては「わかってもらえない」と感じることもあるのです。

2.「大丈夫」で不安を否定してしまった、私の体験談
わが家の息子は、入学直後から登校を嫌がるようになり、しばらく母子登校を続けていました。
2年生になるころにはようやく学校にも慣れ、送迎こそ付き添っていたものの、校内では一人で楽しく過ごせるようになっていました。
ところが、その秋ごろから再び「学校へ行きたくない」と強く訴えるようになりました。
きっかけは、給食の完食指導が厳しくなったことでした。
感覚の過敏さを持つ息子は偏食があり、そのことを担任の先生も理解してくださっていました。
息子にはある程度、個別対応をしていただいていたのですが、クラス全体に漂う「頑張って食べよう!」「残してはいけない!」というムードが繊細な息子には大きなプレッシャーになっていたようです。
何かあるたびに「こわい」「いやだ」と言う息子に、当時の私はこう返していました。
「先生もいいって言ってくださってるし、大丈夫だよ」
「大丈夫!怖くないよ」
「無理じゃないよ、行けるよ!」
でも、いくら「大丈夫」と言っても息子の表情は固まったまま。
やがて「学校、怖い…」「教室に入るのが怖い」と言うようになり、ついには教室に入れなくなってしまいました。
私の「大丈夫」は、安心のつもりが不安を否定する言葉になっていたのです。
息子の中では、「怖い」は「怖いまま」。
“平気”でも、“大丈夫”でもなかったのだと、あとになって気づきました。

3.子どもの「感じ方」ではなく「行動」に注目
では、どうすればよかったのでしょうか。
発達科学コミュニケーションでは、 「子どもの性格や感じ方を変える」のではなく、『行動』に注目します。
たとえば、「暗い場所が怖くて一人でトイレに行けない」子の場合。
×感じ方を変えようとする声かけ
「暗くないよ」
「大丈夫、行けるって!」
こう言われても、子どもにはやっぱり“暗いし怖い”。
感じ方を否定されたと受け取ってしまいます。
◎行動をサポートする声かけ
(電球のワット数をあげて)「電気明るくしてみたけど、どう?」
「ドアを少し開けておいてもいいよ」
このように、「怖い」という感じ方を否定せず、 どうすれば行動できるかを一緒に考えるのがポイントです。
行動ができるようになると、子どもに自信が生まれます。
「できた!」という体験を重ねることで、 不安が少しずつ小さくなっていくのです。

4.不安が強い子どもを安心に導く2つのステップ
不安が強い子どもが安心できるようになる方法について2つご紹介します。
① 共感と理解を示す
子どもの不安をまず受け止めること。
「怖くないよ」ではなく、「そう感じるんだね」「どんなところが怖いか教えてくれる?」 と、気持ちに寄り添って聞いてあげましょう。
「わかってもらえた」と感じることで、子どもの心には安心の土台ができます。
② ポジティブな言葉を手渡す
「怖くない」という言葉は「怖い」の否定語なので、「怖くない」と言われると、子どもの脳の中では
いったん「怖い」イメージを思い浮かべる
↓
そのイメージを打ち消す
という処理がされます。
ですから「怖くない」という否定語ではなく、前向きなイメージを持てる言葉を選びましょう。
「出来るかどうかは別にして、ちょっとやってみようか」
「これはチャレンジだから、出来たらすごいことだよ。一緒にやってみる?」
子どもが小さな成功を感じられる言葉が、安心感と自己肯定感を育てていきます。

5.「大丈夫」よりも大切なこと
「大丈夫」は、親が子を思う優しい気持ちから生まれる言葉です。
でも、不安が強い子どもには『受け止める』のひとことの方がずっと届きます。
「そっか、そっか、怖いんだね」
「どうしたら少し安心できるかな?」
そんなふうに気持ちを受け止めながら、子どもと一緒に小さな一歩を積み重ねていくことで、「大丈夫」が心からの実感に変わっていきます。
焦らず、親子のペースで「安心の練習」をしていきましょう。

執筆者:よしみつ りこ
発達科学コミュニケーション アンバサダー





