外で頑張りすぎる子どもの登園しぶりは『過剰適応』かも?親がしてあげたい関わり方

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外ではしっかり者なのに、家ではぐったり…。運動会や発表会のあとに見られる登園しぶりの裏には、過剰適応の疲れが隠れているかも。頑張りすぎる子どもが「自分の気持ち」を取り戻すために、親ができる関わり方を紹介します。
 
はじめに|外で頑張る“いい子”ほど、心が疲れてしまうことがある
 
 
先生からも「本当にいい子ですね」と言われ、幼稚園でも周りに気を配れる。
 
 
そんな“がんばり屋さん”のお子さんが、ある日突然「行きたくない」と言い出す。
 
 
「まさか、うちの子が?」
「どうして? 今まで楽しそうだったのに……」
 
実は、外で頑張りすぎる子どもほど、心の中に”見えない疲れ”を溜めてしまうことがあります。
 
 
その背景にあるのが、「過剰適応」という心のメカニズムです。
 
 
2学期の行事がひと段落し、少し気持ちがゆるむこの時期は、実は外で頑張りすぎていた子ほど、心の疲れが出やすい季節でもあります。
 
 

1.外では頑張り屋、家ではぐったり。そんな子どもの裏にある『がんばりスイッチ』

 
 
外では元気に過ごしているのに、家ではぐずったり、ちょっとしたことで泣いてしまう
 
 
「外では大丈夫なのに、家でだけ荒れる」――そんな姿に戸惑うママは少なくありません。
 
 
実はそれ、「外で頑張りすぎているサイン」かもしれません。
 
 
周りに合わせ、期待に応えようと頑張る子ほど、心の中ではたくさんの我慢を重ねています。
 
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2.優しさの裏で、次男はずっと無理をしていた【体験談】

 
 
自己主張がはっきりしている長男とは対照的に、次男は小さなころから周りの空気をよく読み、相手の気持ちを優先できる優しいタイプでした。
 
 
例えば、2種類のおもちゃがあれば、長男が選ばなかった方を選んだり、長男が「行きたい!」と言えば、自分も「いいよ~」と意見を合わせたりといった具合に、長男の意見を尊重していました。
 
 
意見がはっきりしている長男に慣れていた私は、次男の態度にびっくりはしたものの2人目ってこんなものなのかなと解釈していました。
 
 
幼稚園でも、
 
「○○くんはいつも“いいよ”って言ってくれて、一緒に遊んでくれるんですよ」
「転園したばかりの○○ちゃんも、○○くんのおかげでみんなの輪に入っていけました!」
 
と先生から褒めてもらうことが多く、私はその言葉をうれしく感じていました。
 
 
『優しくて思いやりのある子』としての次男を誇らしく思っていましたし、そのやさしさにどこかで頼っていた部分もあったと思います。
 
 
自然にそう振る舞っていると思っていて、無理をしているなんてこれっぽっちも考えていませんでした。
 
 
しかし運動会や発表会が終わってほっとした年中の冬ごろ、次男が突然「幼稚園に行きたくない」と言い出したのです。
 
 
「どうして? いつも楽しそうにしてたのに?」と戸惑いましたが、よく話を聞いてみると、 「やりたくない遊びをやるのが疲れる」「お友達にいろいろ言われるのが嫌だ」 とポツリポツリ話してくれました。
 
 
お迎えの時間も、以前はお友達とふざけ合いながら笑っていたのに、いつの間にか表情が硬くなり、バイバイもせずに車に駆け込むようになっていました。
 
 
家でも夜泣きやちょっとしたことで泣くことが増え、笑顔が少なくなっていく次男を見て、胸が締めつけられました。
 
 
そのとき初めて気づいたのです。
次男は、ずっと「がんばりすぎていた」んだと。
 
 
まだたった5歳なのに、私はそのやさしさに甘えてしまっていた――。
 
 
もっと「嫌だ」「やりたくない」と言える余白を作ってあげればよかった。
もっと早く気づいてあげたかった。
 
 
次男のユーモアとおおらかさが戻るように、どうしたら心の荷物をおろしてあげられるのか。
その答えを探す日々が始まりました。
 
 
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3.『過剰適応』という名の“気づかないがんばり”

 
 
次男の様子を振り返って気づいたのは、彼がまさに『過剰適応』の状態だったということです。
 

◆「過剰適応」とは?

 
「周りに合わせよう」「嫌われないように」「期待に応えなきゃ」と、自分の気持ちや自分らしさを我慢して頑張りすぎてしまう状態のこと。
 
 
とくに幼児の場合は、「そもそも自分の気持ちに気づけていない」ことがあります。
 
 
「本当は嫌だった」「疲れていた」という感情があっても、それをうまく言葉にできず、無意識のうちに我慢してしまう
 
 
本人は「気づかないうちに心のエネルギーを削っている」のです。
 
 
これは、まだ感情を整理したり表現したりする力(前頭前野)が発達の途中だからです。
 
 

◆脳の中では何が起きているの?

 
過剰適応の子は、相手の表情や声のトーンにとても敏感です。
 
 
そのため、友達や先生の気持ちを汲み取って、「どうしたら相手が喜ぶか」「誰も傷つかないか」と配慮したり、場を盛り上げたりと、常に気を張っていて脳の『緊張モード』が入りっぱなしになっているケースがあります。
 
 
この状態が続くと、「嫌だ」「疲れた」と感じるセンサーが鈍くなり、気づかないうちに限界を迎えてしまうのです。
 
 
登園しぶりや涙は、そんな『心のSOS』
 
 
「もう無理」と言葉にできない代わりに、体や行動がストップをかけてくれているのです。
 
 
ストップ
 
 

4.「自分の気持ちを感じても大丈夫」という安心を育てよう

 
 
過剰適応の子どもは、外でがんばるあまり、家でも「がんばりスイッチ」を切るのが苦手です。
 
 
そして、幼児の場合はそもそも、「自分が何を感じているのか」さえ気づけないことがあります。
 
 
「疲れているのに“楽しかった”と言う」
「嫌だったのに“いいよ”と笑う」
 
 
そんな姿は、心が“感じる力”を守るために起こる自然な反応です。
 
 
だからこそママにできるのは、「自分の気持ちに気づく練習をサポートすること」です。
 
 

◆1「頑張りすぎてるね」と気持ちを代弁する

 
子どもが自分の疲れに気づけないとき、「○○は今日もたくさん頑張ったね」「ちょっと疲れたかな?」とママが言葉で代わりに気持ちを“見せてあげる”ことが大切です。
 
 
「そうかも」とうなずけたら、それだけで気持ちに気づく第一歩です。
 
 

◆2小さな場面で「自分の意見を言ってもいい」体験を増やす

 
「夕飯、AとBどっちがいい?」
「今日は遊びに行くなら○○と□□どっちにする?」
など、 小さな選択を任せることは、自分の気持ちを感じる練習になります。
 
 
「イヤ」と言えたときは、「そっか、そっか」と受け止める
 
 
こうして“感じてもいい・言ってもいい”経験を積むことで、「自分の気持ちを大事にしていいんだ」という安心が育ちます。
 
 

◆3「ママも失敗するよ」と緩んだ姿を見せる

 
ママが完璧でいようとすると、子どもも無意識に“いい子スイッチ”が入りやすくなります。
 
 
「ママも今日は疲れた~」「ママも失敗して落ち込むことあるよ」 と緩んだ姿を見せることで、「がんばらなくても愛されるんだ」という深い安心を届けられます。
 
 

◆4 家を『安全基地』にする

 
「どんなことがしんどかった?」「今日はどんな気分?」
そんなゆるい会話を通して、 自分の気持ちを感じる時間』を毎日少しずつ増やしてきましょう。
 
 
ママが穏やかに聞く姿勢こそが、子どもの心の回復を支える土台になります。
 
 
幼児の過剰適応は、単なる「頑張りすぎ」ではなく「感じる力が追いついていない」状態ともいえます。
 
 
だからこそ、ママの受け止めが子どもの感情センサーを育て、「自分の気持ちに気づける力」へとつながっていくのです。
 
 
会話
 
 

5.自分の気持ちを言えるようになった日【成長エピソード】

 
 
「AとB、どっちがいい?」と聞くと、いつも「どっちでもいい」と答えていた次男。
 
 
でもある日、「どっちもあんまり。今日は唐揚げがいい!」と笑顔で言ってくれたんです。
 
 
その一言が、私にとっては涙が出るほど嬉しい変化でした。
 
 
以前の次男は、周りの気持ちを優先するあまり、自分の気持ちを後回しにしていました。
 
 
でも、「自分の意見を言ってもいい」「ママに本音を話しても大丈夫」という経験を少しずつ積み重ねるうちに、心の中のブレーキがゆるみ始めたのです。
 
 
最近は、イヤなことがあった日は「今日はしんどい」と言えるようになりました。
 
 
私も「ママも今日はやる気な~い」と笑いながら話すことで、家の中に「頑張らなくても大丈夫」という空気が流れるようになりました。
 
 
外でがんばりすぎる子どもが本当に必要としているのは、「大丈夫」でも「頑張りをやめさせること」でもなく、「自分のままでいられる安心」です。
 
 
ママがゆるむことで、子どもも安心して力を抜けるようになる。
 
 
それが、過剰適応から抜け出し、本来の明るさや笑顔を取り戻すいちばんの近道です。
 
 
親子
 
 
 
 
 
執筆者:よしみつ りこ
発達科学コミュニケーション アンバサダー
 
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