発達障害グレーゾーンの子が新しいことに挑戦する不安が強いのは、ズバリ「不安感」が原因。宿題や習い事に前向きになれない子に、否定せず肯定する声かけで安心感を与え、挑戦意欲を引き出す方法を紹介します。
1.「やってみようよ!」が効かない子どもたち
「やってみようよ!」と声をかけたのに、子どもがますます拒否して泣いてしまう… そんな経験はありませんか?
特に発達障害グレーゾーンの子は、不安やこだわりが強く、新しいことに挑戦するハードルが高い傾向があります。
宿題の漢字練習や習い事の体験レッスンといった、大人から見れば「ちょっとしたこと」にも強く抵抗を示すことがあります。
親としては「頑張ってほしい」「自信をつけてほしい」と願うあまり、つい「大丈夫!」「やってみようよ!」と励ましてしまうもの。
しかし、それが逆に子どもを追い詰める結果になることもあります。

2.励ましが裏目に…親子で苦しかった日々
私自身も、娘が挑戦を嫌がる姿に悩んできました。
宿題の漢字練習では「きれいに書けない」「間違えたらイヤ」と泣き出し、机に向かうのを拒否。
プールの体験レッスンも「泳げなかったら恥ずかしい」と強い不安から「行かない!」と全力で拒絶していました。
そのたびに私は「やってみればできるよ」「大丈夫だから」と励ましの言葉をかけていました。
しかし後から振り返ると、その言葉は娘にとって“失敗したらダメなんだ”というプレッシャーになっていたのです。
励ましが伝わらないことで私も焦り、イライラしてしまい、つい「なんでやらないの!」と否定的な言葉を口にしてしまったこともありました。
すると娘はますます固くなり、挑戦から遠ざかる…そんな悪循環に陥ってしまいました。
子どもだけでなく、私自身も苦しく、どうしたらいいか分からない日々でした。

3.発達障害グレーゾーンの子が新しいことに挑戦する不安が強い理由
では、なぜ「やってみようよ!」という励ましが逆効果になるのでしょうか?
発達障害グレーゾーンの子は特に、
・不安の強さ
・失敗への恐れ
・完璧に出来ない自分を許せない気持ち
を抱えやすい傾向にあります。
「間違えたらどうしよう」
「自分だけできなかったら恥ずかしい」
「新しい場所や人が怖い」
「完璧にできないならやらない方がマシ」
こうした気持ちを抱えている子に「やってみようよ!」は『不安を無視された』と感じてしまうのです。
さらに、焦った親から否定的な言葉「なんでできないの?」「やらなきゃダメでしょ」が出てしまうと、
「私はダメなんだ」「やっぱりやらないほうがいい」と自己肯定感が下がり、ますます子どもの挑戦意欲を奪ってしまいます。
挑戦を嫌がるのは怠けではありません。
「安心感」と「自己肯定感」が不足しているサイン なのです。

4.否定せず肯定する!安心を与える言葉かけのステップ
大切なのは、否定せずに気持ちを受け止め、安心感を与える声かけ です。
ステップ1:気持ちを受け止める
「やりたくない気持ち、わかるよ」
「間違えるのが嫌なんだね」
→ まずは子どもの気持ちを否定せず、そのまま受け止めること。
ステップ2:肯定の言葉を添える
「嫌って言えたの、気持ちを伝えられたね」
「ドキドキしてるんだね」
→ 行動だけでなく、気持ちを言葉にできたこと自体を肯定してあげると、子どもは安心します。
ステップ3:逃げ道を用意する
「最初は見てるだけでもいいよ」
「一文字だけ書いて、やめてもいいよ」
→ 無理にやらせるのではなく、小さな一歩から始められる安心を与えます。
ステップ4:一緒にやる
「ママも横で書くから一緒にやろう」
「水に顔つけるだけ、ママが見てるから安心して」
→ 一人じゃないという支えがあると、不安が和らぎます。
この声かけを意識するようになってから、娘は少しずつ変わりました。
漢字練習では、以前は泣いて鉛筆すら持てなかったのが、「一文字だけなら書けるかも」と挑戦できるようになり、徐々に机に向かう時間が増えました。
字が曲がっても「大丈夫」と受け止めてもらえる安心感で、自分から「やってみる」と言えるようになったのです。
プールの体験レッスンも、最初は「行かない!」と泣いていたのが、「ママが見ててくれるなら少しやってみる」と気持ちを切り替えられるように。
最初は水に顔をつけるだけでしたが、それでも「できたね!」と肯定されることで自信が芽生え、次の挑戦につながりました。
挑戦を嫌がる発達障害グレーゾーンの子にとって、一番の応援は「否定しないこと」と「安心を与えること」です。
・否定せずに気持ちを受け止める
・小さな挑戦を肯定する
・逃げ道をつくって安心させる
・一緒にやることで支えを感じさせる
「やってみようよ!」を言う前に、まずは子どもの気持ちを認める声を届けてみませんか?
安心感と自己肯定感が満たされたとき、子どもは自分から挑戦への一歩を踏み出せるようになります。

執筆者: かさい さち
発達科学コミュニケーション トレーナー





