分離不安で「ママがいい」と大泣きして行き渋りする子ども。こんなに泣くなら休ませようか。でも、休ませると癖になる?そんな『休ませることへの不安』についてお答えします。
1.分離不安による行き渋りでママが休ませたくない理由
分離不安で「幼稚園行きたくない。ママがいい」と毎朝行き渋りする子ども。
それに対してママの本音は『休ませずに行かせたい』
その一番の理由は、ママの『休ませることへの不安』が関係しています。
休ませることで
✔休み癖がついて、しょっちゅう休むようになるかも
✔このまま行かなくなるかも
分離不安の子どもを休ませると本当に癖になってしまうのでしょうか?

2.休むことを癖にしない一般的な2つの方法で、行き渋りや分離不安が進行してしまう
一般的に、休むことが癖になるというのは、自分が幼稚園や学校、仕事に行きたくないとき、休むことにあまり躊躇せず休んでしまう状態のこと。
このような状態になってしまうには、2つの理由があります。
1つ目は『行きたくない→休む』が習慣化してしまったとき。
2つ目は、休んでいることがコンフォートゾーンという居心地の良い状態になってしまったときです。
そのため、親は休むことを癖にさせないために、2つの方法を取ります。
1つ目は、子どもを無理やり行かせる。
2つ目は、休んだときは「今は幼稚園ではこれをしている時間だから、テレビなんか観ちゃダメ」と幼稚園に行くのと変わらない時間割で家でも過ごさせるなど、休んでいる状態の居心地を悪くして、コンフォートゾーンを作らない。
一般的にはこれも1つのやり方で、この方法で行き渋りをしなくなる例もたくさんあります。
でも、この方法が通じないことがあります。
通じないばかりか、行き渋りがどんどんひどくなる場合もあります。
それは、発達凸凹キッズや分離不安の子どもに多く見られることです。
分離不安の子どもは、危険から身を守ろうとする脳の扁桃体という部分が過剰に働く特性があり、もともと不安が強い傾向にあるため、安心安全な状態をより好みます。
そのため、分離不安の子どもが無理やり幼稚園に行かされることは、安心できるコンフォートゾーンであるママの傍から離され、余計に不安が大きくなることなのです。
また、本来、安心安全であるはずの家の中で、休んだ日にゆっくりくつろぐこともできず、ママに厳しくされることは、コンフォートゾーンがどこにもない状態です。
いわば、最後の砦を失ったと言っても過言ではないくらい、分離不安の子どもの心はますます不安でいっぱいになっていきます。
このように、休むことを癖にしたくないという思いで、無理やり行かせる、休ませたときに心身を休ませないという対応では、不安が大きくなるいっぽうで、分離不安は進行し、子どもの行き渋りの解決にはつながりません。

3.分離不安は進行するので早めの対応が回復のカギ
ママからすれば、突然激しい行き渋りが始まったかのように思いますが、実は行き渋りと分離不安には段階があります。
2歳くらいまでは「ママがいい」というのは当たり前の反応ですが、2歳を過ぎており、「ママがいい」とママから離れることへの不安が強く行き渋る状態が1か月以上あると母子分離不安症と言われます。
分離不安の子どもの行き渋りの段階は、幼稚園には大泣きして行くけど、行ったら楽しく遊んでいるといった初期段階から、そのうち幼稚園でも時々ママを思い出して泣くことがあるという次の段階へ。
そして、行ってからもママを思い出して1日中しくしく泣いている段階。
しまいには、頭痛や腹痛など身体症状がでることも。
あるいは、このような状態を行ったり来たり繰り返しながら少しづつ分離不安が進行していることもあります。
そうすると、子どもが、行ったり行かなかったりを繰り返す五月雨登園や不登園、不登校へと繋がっていく可能性もあります。
分離不安が進行しているかどうかは、暴言、暴力、癇癪など、お家での困りごとがどんどんが多くひどくなっていくことでも分かります。
これは、二次障害の症状であり、分離不安が進行している状態で、こじらせればこじらせるほど、回復に時間がかかります。
そうならないためには、早い段階での適切な対応が大事になります。
幼児の脳は発達黄金期であるため、適切な対応で自己肯定感や自己効力感が育ち、不安は小さくなり、分離不安や二次障害を引き起こさず、早く回復するからです。

4.「休ませると癖になる!」と、息子を無理やり幼稚園に行かせていました
私は「熱や腹痛などの理由がない限り休んではいけない」という昭和世代育ちです。
そして、仕事を休むこともなかなか難しく、何としてでも息子を行かせていました。
一般論に違わず、休ませると癖になるとも思っていました。
息子は調子よく行けていると思ったら、また大泣きして先生に引きはがしてもらったり、また普通に行ったり、1日中幼稚園でも泣いていたり。
それでも「行けているから大丈夫」だと思っていたのは私だけで、息子にとっては無理やり行かされていただけ。
もちろん、この時のわたしは、分離不安なんていう言葉も知りません。
ただただ、息子は甘えている、ここで甘やかせてはいけないと、幼稚園を休ませず、家では「ママ、ママ」にうんざりしながら「もうママ、やめるから!」と何度言ったことでしょう。
息子の分離不安はどんどん酷くなり、幼稚園には何とか行けても、家では一瞬でもママの姿が見えないとパニック状態。
二次障害と言われる暴言や暴力、癇癪にまで悩まされるようになり、息子と二人で泣きながら、いったい何をどうすれば良いのかわからなくなっていた私が発達コミュニケーションと出会ったのは息子が年長の頃でした。

5.肯定とコンフォートゾーンで行き渋りは解消する
発達コミュニケーションで学んだ分離不安の子どもへの行き渋り対応は、不安を解消してあげることが先決だということでした。
そのことを軸に、私は不安解消のため2つのことをしました。
◆①肯定する。ときどき1日休ませる
私がまず変えたのは、息子の大好きなドラゴンボールのカードゲームOKにしたこと。
今まで私は、「今週行ったから、来週はダメだよ。」「行っても3回だけね」とか、やたらと制限をしていました。
それを、ただ一言「いいよ」と言ってみたのです。
その時の「いいの?」と目を輝かせた息子の顔を忘れることはないと思います。
「ママ、ありがとう!」「何回でもいいの?」「来週も行っていいの?」と喜んだ息子を見て、初めて気付いたのです。
私は、ゲームをさせているから、ちゃんと息子のことは肯定しているつもりでいました。
でも、ゲームに条件をつけたり制限することで、息子はずっと肯定されていないと感じていたのです。
息子は、1回目はゲームセンターでカードゲームをする際、結構お金を使っていましたが、そのあとは「次に取っておく」と、自分で考え、やめることもできるようになり、1か月(4回)でパタッとゲームには行かなくなりました。
また、行き渋りが強くなってきたなというときは、早めに仕事の段取りをつけて、有休を取り、「明日ママお休みだから、1日デートしよう」と1日だけ休ませました。
息子は、私が肯定の対応に変えてから、行き渋りも少なくなっていたこともあり、早め早めの対応で「ママがお休みだから幼稚園を休む」という構図を作りました。
これは、息子に、休むことを習慣化させたくなかったからです。
◆②子どもの居心地の良いコンフォートゾーンを家にも幼稚園にも作る
幼稚園の先生とは、連絡帳でこまめに連絡を取り合い、時間感覚のついていない息子にわかるように声掛けして頂くことで、お迎えまでの時間を安心して過ごせるように配慮して頂きました。
幼稚園も、息子にとって居心地の良いコンフォートゾーンとなったのです。
これらの対応で、行き渋りが治っていくのと同じように、分離不安も和らぎ、二次障害と言われる暴言、暴力、癇癪も激減しました。
肯定することで分離不安の子どもの不安は和らぎ、行き渋りの解決に繋がっていきますよ。

執筆者
発達科学コミュニケーション トレーナー
増満咲奈