1.家に帰るとぐったりして癇癪ばかり…
「学校ではいい子なのに、家に帰るとぐったりして癇癪ばかり…」
毎日、お子さんのひどく疲れた様子を見て、「何か病気なのだろうか?」「精神的に何か苦しいのかな?」と心配していませんか?
学校では「いい子」でいられるのに、家では些細なことで怒り出したり、ひどく疲れて何もできなくなってしまう。
もしかすると、それはお子さんがHSC(ひといちばい敏感な子ども)であることからくる「HSC疲れ」かもしれません。
この記事では、HSCの子どもを持つ親の視点から、なぜHSCが他の子よりも疲れやすいのかを、その特性や脳の仕組みを交えて解説します。
読み終わる頃には、お子さんの疲れの理由が理解でき、明日から実践できる接し方のヒントが見つかるはずです。

2.HSC(ひといちばい敏感な子ども)とは?特徴とチェックリスト
学校では先生や友達に優しく、周りに気を配り、みんなのお手本となる行動をとる。いわゆる「いい子」と言われるHSCの子どもたち。
しかし、ひとたび家に帰ると、緊張の糸が切れたようにぐったりと疲れて、イライラしたり、癇癪を起こしたりすることはありませんか?中には、夜までぐっすり寝てしまう子もいます。
これは、決して子どもがわがままなのではなく、HSCが持つ生まれつきの性質によって、想像以上にエネルギーを消耗しているからなのです。
最近、テレビやSNSでもよく耳にする「HSC」という言葉。
これはアメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念で、「Highly Sensitive Child(ひといちばい敏感な子ども)」の頭文字をとったものです。
HSCには、以下の4つの性質が共通して見られます。
Deap processing(深く考える)
Overstimulated(刺激を受けやすい)
Emotional reactivity(共感力があり、感情の反応が強い)
Subtle stimuli(些細な刺激を察知する)
これらの頭文字をとって「DOES(ダズ)」と呼ばれています。
どうでしょうか?お子さんの様子に当てはまるものがありますか?
もしお子さんがHSCであるならば、たくさんのことを敏感に感じとるがゆえに、学校生活でどっと疲れてしまっているのかもしれません。

3.HSCが学校で疲れてしまう本当の理由:『深く考えてしまう』
HSCの子どもは、この「DOES」の性質をすべて生まれ持っています。
この性質は、豊かな感性や共感力という素晴らしい「宝」でもありますが、集団生活の中では大きなストレスとなり、HSC疲れの原因にもなります。
特に、HSCの「深く考える」という性質は、脳を絶えずフル回転させてしまうため、他の子よりも圧倒的に疲れやすいと言えます。
たとえば、先生が何気なく「好きな場所に座ってください」と言ったとします。
たったこの一言で、HSCの子どもは瞬時に多くのことを考えます。
「ここに座ったら、あの子に嫌がられるかも…」(人間関係を深く考える)
「ここに座ったら、先生に指されて発表しないといけないかも…」(先の展開を想像する)
「この席は日差しが強くて暑そうだな…」(五感からの情報を処理する)
このようなことを、短い時間の中で次々と処理するため、脳は常にオーバーヒート状態。
子どもが考えなくてもいいこと、感じなくてもいいことまで、すべてを深く受け止めてしまうのです。
五感から入る膨大な情報と、HSCの脳の特性
HSCの疲れやすい理由は、単に「深く考える」だけではありません。
最近の研究では、HSCの子どもは、脳の扁桃体(へんとうたい)という感情を司る部分が、他の子よりも活発に反応することがわかっています。
これにより、音、匂い、光、人の感情など、五感から入ってくるあらゆる情報を、人一倍強く受け取ってしまうのです。
教室のざわつき、蛍光灯の光、給食の匂い、友達のちょっとした表情の変化…私たちには気づかないような些細な刺激が、HSCの子どもにとっては一つひとつが脳への大きなインプットとなり、膨大な情報を処理することで疲れが蓄積されていきます。
毎日、休みなく脳をフル回転させているのですから、学校から帰宅してどっと疲れてしまうのは当然のことなのです。

4.疲れ果てて帰宅したHSCの子どもを迎え入れる『安全基地』の作り方
ここまで読んで、HSCのお子さんがどれだけ学校で頑張っているかを理解していただけたと思います。
学校で神経をすり減らしてきたHSCにとって、家は唯一、心と体を休められる「安全基地」でなければなりません。
例えば、仕事でヘトヘトになって帰宅したあなたが、パートナーから「あれができていない」「これもできていない」と指示出しをされたらどう感じますか?
HSCの子どもも同じです。
家に帰ってきて、「宿題を早くやりなさい!」「片付けなさい!」と休む間もなく指示されてしまっては、休まる場所がなくなってしまいます。
心身ともに限界を超えてしまうと、癇癪がひどくなったり、登校を嫌がったり、頭痛や腹痛を訴えるなど、二次的な不調につながる可能性もあります。
HSCの心を癒すための親ができる接し方
疲れ果てて帰宅したお子さんには、まず「見守る時間」を与えてあげましょう。
しばらく何も言わずに、ゆっくりと過ごせる時間を作る。
やりたいことを好きなだけさせてあげる。(ゲームや読書など)
「おかえり。今日も一日頑張ったね」と、シンプルに存在を肯定してあげる。
まずは、子どもが「ここは安心して休める場所だ」と感じられる環境を整えてあげることが大切です。

HSCの「疲れ」は、ただの「だるい」「眠い」ではなく、脳と心がフル回転した結果のサインです。
この疲れの根底にある「敏感さ」を理解し、家庭を心から安らげる安全基地にすることで、子どもは少しずつ自分らしいペースを取り戻し、本来の力を発揮できるようになります。
この記事を読んだ親御さんが、頑張り屋のHSCの子どもにとって、最高の理解者となれることを願っています。