子どもとの旅行で「疲れた」「もう帰りたい」と言われて困っていませんか?実はわがままではなく、不安や疲れが関係していることも。旅行前の準備を少し変えるだけで、子どもも家族も楽しめる旅行になります。我が家で実践している旅育のコツをご紹介します。
1.家族旅行が楽しくない…子どもが「疲れた」「もう帰りたい」と言うのはなぜ?
いよいよ夏休みが始まりましたね。
「今年こそ家族旅行に行きたいな。」
そんなふうに考えているご家庭も多いのではないでしょうか。
でもその一方で、
「またすぐに『疲れた』『もう帰りたい』って言われるかも…」
「せっかく旅行に来たのに、家族みんなイライラして終わったらどうしよう」
そんな不安がよぎるママもいるかもしれません。
実際、子どもとの旅行では
- ✔ 予定していた時間に出られない
- ✔ 「まだ?あとどれくらい?」と何度も聞かれる
- ✔ 着いたばかりなのに「疲れた」「もう帰りたい」と言い出す
そんなこともありますよね。
「せっかく旅行に来たのに、どうして楽しめないの?」
「わがままを言わないでほしい…」
と、ママもイライラしてしまうこともあると思います。
しかし、旅行先での子どもの行動を紐解いていくと、それは「わがまま」ではなく、子どもなりの理由が隠されていました。
旅行では、初めての場所や人混み、いつもと違うスケジュールなど、子どもにとって処理しなければならない情報が一気に増えます。
「あとどれくらい?」
「次は何をするの?」
「思っていたのと違う…」
そんな小さな戸惑いが積み重なることで、脳が疲れ、気持ちを切り替えたり感情をコントロールしたりする余裕がなくなってしまうことがあるのです。
だからこそ大切なのは、「ぐずらせない方法」を探すことではなく、子どもが安心して旅行を楽しめる「事前の準備」をしてあげること。
そうすると、「疲れた」「帰りたい」が減るだけでなく、旅行そのものが子どもの「できた!」を増やす体験へと変わっていきます。
この記事では、我が家で実践している「旅育(たびいく)」の工夫をご紹介します。

2.家族旅行が楽しくない…子どもがぐずるのはなぜ?
私自身も、子どもとの旅行やお出かけで何度も苦い思いをした経験があります。
私の子どもは、見通しを立てることが少し苦手で、不安が強いタイプです。
家族でお出かけをすると、近場でさえ
- ✔「まだ?あとどれくらい?」と何度も聞いてくる
- ✔ぐずぐずと文句ばかり
- ✔着いたばかりなのに「疲れた」「もう帰りたい」と不機嫌になる
そんなことが日常茶飯事でした。
私は、
「せっかく来たんだから楽しもうよ。」
「まだ着いたばかりなのに、どうして?」
と、子どもの気持ちが理解できず、「わがままを言っているだけ」と思ってしまっていました。
だから、なんとか予定どおりに回ろうと子どもを励ましたり、説得したりしていました。
でも、子どもはますます不機嫌に…。
きょうだいに強く当たったり、何をしても面倒くさそうにふるまったり…。
楽しむために来たはずの旅行なのに、帰る頃には大人も子どももヘトヘト。
「こんなに気疲れするなら、 もう家族旅行なんて行きたくない…」
そう思うことさえありました。
しかし後になって気づいたのは、息子は旅行自体が嫌いだったわけではありません。
好奇心旺盛で新しい場所へ行くことも、初めての体験をすることも、本当は大好きな子です。
ただ、旅行先では普段よりもたくさんの情報を処理しなければならず、楽しみたい気持ちよりも、「不安」や「疲れ」の方が大きくなってしまっていたのです。
「わがままでぐずっていた」のではなく、あの時の息子は旅行を「楽しめる」状態ではなかったのだと、今ならよくわかります。
では、なぜ子どもは旅行になると、そこまで脳や心が疲れてしまうのでしょうか。
その理由を、子どもの脳の仕組みから見ていきましょう。

3.子どもが旅行でぐずるのは「脳の仕組み」が関係していた
では、なぜ旅行になると、子どもは「疲れた」「もう帰りたい」と言ってしまうのでしょうか。
それは、子どもにとって旅行が、大人が思っている以上に「脳がたくさんの情報を一度に処理しなければならない場所」だからです。
初めて見る景色、初めて会う人。
いつもと違う音、におい、空気感。
「次はどこへ行くの?」「あとどれくらい?」といった予測のつかないスケジュール。
こうしたたくさんの情報が次々と入ってくると、子どもの脳の処理キャパシティ(容量)はあっという間にいっぱいに。
その情報を整理しきれなくなると、脳は疲れ、気持ちを切り替えたり、感情をコントロールしたりする余裕がなくなってしまいます。
わが家の息子も、HSC(ひといちばい敏感な子)の気質や自閉スペクトラム症(ASD)グレーゾーンの特性があり、旅行ではその影響がより大きく出ていたようです。
特に、次のようなことが重なると、「疲れた」「帰りたい」と感じやすくなっていました。
◆見通しを立てるのが苦手
「あとどれくらいで着くの?」 「次は何をするの?」 先の予定がイメージできないと、不安が大きくなり、「帰りたい」と言いたくなることがあります。
◆初めての場所や経験に緊張しやすい
旅行はワクワクする反面、知らない場所や人との出会いは、子どもによっては安心よりも緊張の方が大きくなることがあります。
◆人混みや暑さなどの刺激で疲れやすい
テーマパークや観光地は、人混みや大きな音、強い日差しなど刺激のオンパレード。
刺激に敏感な子は、その場にいるだけで脳がとても疲れてしまいます。
もちろん、これはHSCやASDグレーゾーンの子に限った話ではありません。
子どもによって程度はさまざまですが、環境の変化が大きい旅行では、どんな子どもでもいつも以上にエネルギーを消耗しています。
だからこそ、子どもが旅行を楽しめるかどうかは、安心の土台となる「旅行前の準備」 がキーポイントだったのです。

4.子どもが旅行を楽しめる!我が家の旅育プランの立て方
では、どうしたら子どもが「疲れた」「もう帰りたい」とならずに、小学生の子連れ旅行を楽しめるのでしょう?
旅行は、出発してから始まるものではありません。
親子で一緒に準備をする時間から、「旅育」は始まっています。
わが家では、「親が子どもを旅行に連れて行く」のをやめ、「子どもも一緒に旅行をつくる」という意識に変えました。
それだけで、子どもの安心感もワクワクも大きく変わったのです。
ここからは、実際にわが家で取り入れている4つの工夫をご紹介します。
❶家族みんなの「やりたい」を出し合う
以前は「子どもが楽しめる旅行にしなきゃ」と思い、行き先や予定は子ども中心に考えていました。
一方で、「ここに行きたいけれど、子どもは興味がないだろうな」と、自分のやりたいことは最初から諦めてしまうこともありました。
それを親と子ども、それぞれが「やりたいこと」を出し合って一緒に計画を立てるようにしました。
「ママはここへ行ってみたいんだ。」
「ぼくはここに行きたい!」
そんなふうにお互いの気持ちを伝え合うことで、子どもも「じゃあママが行きたいところにも行こう!」と言ってくれたり、実際に一緒に楽しんでくれたりすることもありました。
特に、わが家のように繊細さや発達特性のある子は、相手の喜びを自分の喜びにできる力を持っています。
旅行は、子どもを楽しませるためだけのイベントではありません。
家族みんなの「やりたい」を叶える時間にすることで、子どもは「自分も家族の一員なんだ」という気持ちを育み、お互いに「ありがとう」が増える旅行になっていきました。
❷行き先を一緒に調べて「楽しみ」をふくらませる
旅行先が決まったら、写真やホームページ、動画などを親子で一緒に見ていました。
「どんな場所なんだろう?」
「どんなものが食べられるかな?」
「これ、おもしろそう!やってみたい!」
そんなふうに話しながら調べていく時間も、旅行の楽しみのひとつです。
特に、初めての場所が苦手な子は、「知らない場所」が「写真で見たことのある場所」になるだけで、不安よりも「早く行ってみたい!」という気持ちが大きくなり、旅行当日も安心して過ごしやすくなります。
また、息子は「あとどれくらい待つの?」「いつ終わるの?」という見通しが持てない時間が苦手なので、移動時間や待ち時間、混雑しやすい時間帯なども、できる範囲で一緒に調べていました。
「移動中や待ち時間に何をして過ごすか(クイズ、おやつ、本など)」を親子で考えておくだけで、待ち時間のぐずぐずを予防できます。
❸スケジュールは「余裕」を持って
「せっかく旅行に来たんだから、できるだけたくさん楽しませたい」と思い、予定をぎっしり詰め込んでしまうと、親も子も疲れてしまいます。
だからわが家では、最初から長めの休憩時間を予定に入れたり、 「疲れたら早めにホテルへ戻ってもいいからね。」 と親子で話したりして旅行に出かけます。
旅行は、一度ですべてを体験しなくても大丈夫です。
全部回れなければ、 「また来よう」 「今度はあそこにも行ってみよう」 と、次の楽しみにすることにしました。
「家族みんなが笑顔で帰ってくること」をゴールにすると、心にも時間にも大きな余裕が生まれました。
❹しおりを一緒に作って「心の準備」をする
旅行が決まったら、簡単なしおりを一緒に作っています。
「初日はここへ行くよ。」
「お昼はここで食べよう。」
「ホテルに着いたらゆっくり休もうね。」
そんなふうに予定を文字やイラストで見える形にすると、子どもは旅行の流れをイメージしやすくなり、安心して過ごせるようになります。
また、おやつを選んだり、リュックに自分の荷物を詰めたり、しおりを持ってもらったりなどの小さな役割をお願いするのもおすすめ。
「自分も準備した旅行なんだ!」というワクワク感が生まれ、「いつもより前のめり」 に楽しんでくれるようになります。
このように子どもと一緒に旅行の準備をする時間を少し増やすだけで、息子の「疲れた」「帰りたい」が減り、家族みんなで笑顔になれる時間が少しずつ増えていきました。
もし今、
「うちの子とは旅行は難しいかもしれない。」
「またぐずったら大変だから…。」
と旅行を諦めかけているなら、ぜひ一度、”旅行の準備”から親子で楽しんでみてください。
旅行で増える「できた」は、子どもの自信だけでなく、家族みんなの笑顔にもつながっていきます。
ご家族みんなで、子どもの「できた!」や感動、驚き、そして「楽しかったね」「また来たいね」という気持ちを、たくさん共有できることを願っています。

執筆者:よしみつ りこ
発達科学コミュニケーション アンバサダー





