また忘れ物してきたの!?カッパに傘、水筒…持ち物の多くなる梅雨の時期、忘れ物問題は発達障害・ADHD系男子あるあるです。子どもだから忘れ物は当たり前?いいえ違います。早めに手を打っておかないと、のちのち深刻化してしまうケースもあるんです。
1 また忘れ物してきたの!?発達障害・ADHD系男子「不注意」の理由
梅雨の季節は気分もウツウツとしがち。先日は長男の小学校のお友達を誘って室内プールに遊びに行きました。
我が家の長男は小学校4年生。注意欠陥多動性障害(ADHD)のグレーゾーンです。
この日、長男は出発の時間になっても、ネット動画をみていたり、着替えの途中で偶然目に入ったプラモデルに気を取られたりして、支度がなかなかすすみませんでした。
道も渋滞していてやっと辿り着いた瞬間、長男から衝撃の一言が。「ママ、プールバッグは?」…なんと長男は、プールに行くのにプールバッグは持たず、自分のリュックに携帯ゲーム機とタブレットだけ入れてきたのでした。
急遽ゴーグルと水着を買う事態に…正直、痛い出費です。息子にも気をつけるようにと話はしましたが、彼の特性からくるものなので大目に見ました。
このように、「忘れ物」はADHDの特性の一つである、「不注意」からくる症状です。
●不注意があるお子さんは
・忘れ物や、モノをなくすことが多い
・片づけや整理整頓が苦手
・行動がワンテンポ遅い
・集中しづらい
・自分がやりたいことや興味のあることに対しては集中しすぎて切り替えができない
・自分の好きなことを考えていることが多いため、周囲の人からはぼーっとしていて話を聞いていないように見える
などの特徴があります。
これらは、「ワーキングメモリー」という脳の機能が充分に働いておらず、弱いためであると言われています。
2 ワーキングメモリーと忘れ物問題、学年がすすむにつれて深刻化することをご存じですか?
ワーキングメモリーという言葉を聞いたことがありますか?少し聞きなれない言葉だと思います。ひとことで言うと、ワーキングメモリーとは「覚える力(記憶)」と「考えをまとめる力」のことです。
例えば、冷蔵庫の中の食材を思い出しながらメニューを考えるとします。
食材を思い出すことが「覚える力(記憶)」で、メニューを考えることが「考えをまとめる力」です。
覚えたり思い出したりしながら考えをまとめることは、私達が日頃から何気なくやっていることですね。
ではなぜワーキングメモリーが弱いとなぜ忘れ物が多くなるのでしょうか?
それはズバリ「記憶」することが苦手だからです。発達障害・グレーゾーンのお子さんはワーキングメモリーが弱い場合が多くあります。
●ワーキングメモリーが弱いと
・忘れ物や、モノをなくすことが多い
・指示した内容が多いと指示したことを最後までやり遂げることができない
・順序立ててできない
・返答が遅い
・テンポが合わない
・言ったことを忘れている
・的外れな答えをする
など、日常生活を送るうえで困ったことが起きてきます。特に学校生活において影響が大きくなります。
忘れ物に限ってお話しすると、小学校低学年の間は先生がフォローしてくれます。しかし高学年になると、持ち物は自分自身で管理するよう求められます。
そして大切なお知らせが書かれたプリント類も子どもに渡されるだけになります。子どもが親に渡すことを忘れてしまうと、親のところまで情報が届かなくなります。
中学校に上がれば、テスト範囲や宿題の内容なども子どもにしか伝えなくなり、親がフォローできなくなります。
提出物の期限を守れない、忘れ物が多いのは内申書に影響します。今の時代それが高校受験に響きます。
忘れ物なんて、子どもにはよくある!ほっておいても大人になったらできるようになる!なんて思われてませんか?残念ながら…それは違います。
大人になっても、忘れ物のために仕事がうまくいかず苦しんでいる方も少なくありません。ワーキングメモリーの部分の脳が発達しなければ何も変わらないからです。
大人になってからだと仕事に影響が出てしまい、とても深刻な問題になってしまいます。
しかしこれらは脳の特性なので本人の気合いや根性では改善しにくいのです。ですから、なんで忘れてしまうの!?ときつく叱ったとしても効果はありません。
お子さん自身も「次は忘れたくない」「ちゃんとやろう」と思っています。でも、忘れてしまって、「またやっちゃった…自分はなんでダメなんだろう」と思い、自信をなくしてしまいます。
それなのに、学校の先生や、お父さんお母さんに責められ続けたら…本当になんとかしてあげたいと心から思います!
お子さんの失敗体験を減らし、大人になった時に困らないようにするには
① ワーキングメモリーを司る脳の発達促進
② 日常生活での工夫
この2つの対策が必要です!
3 今日から実践!お母さんの3つの対応で子どもの「成功体験」を増やしましょう!!
脳の発達のことだから、専門家じゃないと何もできないんじゃないの?と思われるかもしれません。
しかしお母さんの質の良い「コミュニケーション」と「量」で色々な工夫で困りごとをカバーしながら脳の発達を促すことができます。そうすると困りごとなどの特性は脳が発達するにつれて目立たなくなっていきます。
ワーキングメモリーを伸ばせる声かけがたくさんできればできるほど、お家でも脳はグングン発達していきます。
まずはこの3つを試してみてください!
① お母さんがお子さんへの要求量を減らす
② 指示は簡単で具体的で短くする
③ 指示に従おうとしたら、すぐに褒める
どういうことかというと、水筒を例にお話ししますね。
◆① お母さんがお子さんへの要求量を減らす
今週は「学校に水筒を忘れずに持って行く」という目標にしたら、今週はとにかく水筒を忘れずに持って行くこと以外は目をつむってください。水筒を持って帰ってくることはひとまず置いておいて下さい。
◆②指示は簡単で具体的で短くする
お子さんが水筒を持って行くのを忘れていたら、「水筒、ランドセルに入れようね」これだけでOK。お子さんにしてほしい行動をそのまま伝えてください。
「ホラ、また水筒忘れてるよ」「忘れたら学校で困るよ」「何度言ったらわかるの」はNGワードです。
◆③ 指示に従おうとしたら、すぐに褒める
水筒を自分からランドセルに入れようとしていたら、すかさず「あ、水筒入れてるの?」「水筒入れられているね」とお子さんの行動をほめてください。
そして今すぐできる、こちらの工夫も試してみてください。
・消しゴム、鉛筆、色鉛筆、下敷きなど小さくてよく使うものは、なくすものと考えて余分 に買っておく
・値段の高いものは持たせない
・小さいよりも大きめのものを選ぶ
・本人が気が散らなかったり、学校から許可がでていれば、本人の気に入っているデザインやキャラクターのものを持たせる(気に入っているものは愛着が湧くので、なくす確率が下がります)
・他の人に見つけてもらえるように、なるべく人と違うものを持たせる
・持たせる物をなるべく最小限にする
・連絡帳に「○○を持って帰ってきてね」と書く
・ランドセルの内側や前ポケットなどの必ず目のつくところに書く
・メモを持ち歩き、メモする習慣を少しづつでもいいからつける
・モノの定位置を決め、戻すことを習慣化する
・先生に確認や声掛けのお願いをする
先生にお願いすることを躊躇される方も多いと思います。
しかし、お子さんは忘れ物のことで困っているのです。できるようになるまで周囲の大人がサポートしながら成功体験を増やし、自信をつけさせることの方が大切です。
発達障害・グレーゾーンのお子さんを育てる上で、「忘れ物をさせない工夫(予防)をする」は基本のキです!
失敗から学ぶこともあるのでは?失敗しないとわからないのではないか?と思われるかもしれません。でもそれができているのであれば、いま、親子ともに困っていないはずです。
小学生になるとお家で過ごすより学校で過ごす時間の方が長くなります。でも、学校の先生はワーキングメモリーを伸ばす関わりなんてしてくれませんよね?
通級指導教室、特別支援学級や療育でも圧倒的に時間が足りません。
ですから、これからはお母さんがお子さんの発達を加速させるチャレンジをしてみませんか?
お子さんと過ごすことが多い夏休みはチャンスです。今から始めれば、新学期が始まる頃には良い変化が現れてくるはずですよ!
執筆者:水本しおり
(発達科学コミュニケーションマスタートレーナー)
(発達科学コミュニケーションマスタートレーナー)