さて今日は
「起立性調節障害の子に
「正しい生活」が入らない理由」
というお話についてです。
起立性調節障害のお子さんに対して、
朝起こす。
水分・塩分をとる。
生活リズムを整える。
3食食べる。
少し体を動かす。
こういったことが大事だと
言われることがありますよね。
もちろん、これは間違いではありません。
起立性調節障害は、
自律神経の調整がうまく
働きにくくなることで、
立ちくらみ、倦怠感、頭痛、腹痛、
吐き気、朝起きられないなどの症状が
出る身体の病気です。
だから、医療機関での診断や鑑別、
水分・塩分、睡眠、活動量などの
生活面の調整はとても大切です。
けれど、現実のママたちは
こう思っていませんか?
「いや、それがまず無理なんよ」って。

朝起こそうとしても起きない。
水を飲ませようとしても拒否。
早く寝ようと言っても寝ない。
運動どころか、部屋から出てこない。
3食どころか、
昼過ぎまで寝ていて朝ごはんもない。
頭ではわかっているんです。
早く起きた方がいい。
水分も塩分も大事。
生活リズムも整えたい。
少し体を動かした方がいい。
だけど、現実はそこまで届かない。
「早く起きてくれさえすれば」
「水だけでも飲んでくれたら」
「少し歩くだけでもいいのに」
そう思って声をかけるけれど、
返ってくるのは、
無視。不機嫌。怒り。
布団にもぐる。「うるさい」の一言。
そのたびにママは、
正しいことをしているはずなのに、
どんどん虚しくなっていくんです。
「こんなの無理ゲーじゃん」
「何をしても動かない」
「もう手の施しようがないのかな」
そう怖くなることもあります。
だけど、ここで知ってほしいのは、
ママのやり方が悪いのではなく、
順番が違っているかもしれない
ということです。
起立性調節障害の子には、
身体のしんどさだけでなく、
脳に強いブレーキがかかっていることが
あります。
朝。学校。起きる。
食べる。動く。生活リズム。
本来は回復のために必要なことが、
子どもの脳には、
「また怒られる」
「またできない」
「また責められる」
「また学校の話になる」
という危険信号として
処理されていることがあるんです。
つまり、ママが言っている内容が
正しいかどうか以前に、
子どもの脳がそれを
「安全な情報」として受け取れる状態に
あるか。
ここが大事なんです。
脳には、危険を察知する
扁桃体という警戒センサーがあります。
この扁桃体が過敏に反応すると、
視床下部を介して自律神経や
ホルモン系にも影響し、
身体は警戒モードに入ります。
すると、
お腹が痛い。気持ち悪い。
頭が重い。体がだるい。
起きられない。動けない。
こうした反応が強く出ることがあります。
もちろん、すべてを「不安のせい」と
片づけてはいけません。
起立性調節障害は身体の病気です。
医療での確認は必須です。
けれど同時に、
脳が警戒モードに入っている子に対して、
いきなり
「起きなさい」「水飲みなさい」
「少しは動きなさい」
「夜寝ないからでしょ」
「学校どうするの?」
と正論を重ねると、
子どもの脳はさらに危険を感じて、
ブレーキを強めてしまうことがあります。
ママは回復のために言っている。
だけど、警戒モードの脳には、
それが責められているように感じたり、
追い詰められているように感じたりする。
だから、まず必要なのは、
起こすことではなく、
脳の警戒モードをゆるめるサポートです。

たとえば、
「早く寝なさい」ではなく、
夜に少しだけ一緒にカードゲームをする。
「3食ちゃんと食べなさい」ではなく、
起きている時間に、好きなものを
楽しく食べる。
「運動しなさい」ではなく、
リビングに来た時に
「顔見れてうれしい」と声をかける。
「学校どうするの?」の前に、
「おはよう。起きてきたんだね」と言う。
ここで大事なのは、
何もしないことではありません。
放置でもありません。
甘やかしでもありません。
まず、安心を入れることです。
安心が入ると、
扁桃体の警戒反応が少しゆるみます。
警戒がゆるむと、
自律神経の過緊張も少しずつ
落ち着きやすくなります。
すると、子どもの脳に余白が
生まれます。
余白ができて、
初めて指示や提案が届きやすく
なるんです。
そこからやっと、
水を飲む。顔を洗う。
着替える。少しリビングに出る。
少し外に出る。学校の話をする。
そんな小さな行動につながっていきます。
だから、
朝起こせない。
生活リズムが整わない。
運動なんて無理。
そう感じているママに伝えたいんです。
そりゃそうです。
いきなりそこから始めるのは、
今のお子さんの脳の状態には
負荷が高すぎるのかもしれません。
まず必要なのは、
正しい生活を押し込むことではなく、
脳のブレーキをゆるめること。
ゆるめることは、
子どもを堕落させることではありません。
甘やかすことでもありません。
むしろ、回復のための
大事なファーストステップです。
ここを飛ばして、
正しくやろうと思って頑張り続けると、
親子で疲れ切ってしまいます。
でも、まず安心を入れて、
脳の警戒モードがゆるんでくると、
子どもは少しずつ
「できること」を取り戻していきます。
この小さな変化が、
次の行動の土台になります。
起立性調節障害の子に必要なのは、
正しいことをいきなり
全部やらせることではありません。
今の脳と身体の状態に合わせて、
回復の順番を変えることです。
だから、
「朝起こすのも、水を飲ませるのも、
運動も無理」
そう思っているママは、
ダメな対応をしているのではありません。
今のお子さんには、
その前に必要なサポートがあるだけです。
大切なお子さんの時間を、
責め合う時間ではなく、
回復の時間に変えていきましょう。
今日はここまでです。


