発達障害の「こだわり」は得意な事にかわる!「こだわりADHDさん」から学ぶ我が子の才能の見つけ方

発達障害の子どもが持つ「こだわり」。困り事として悩んでいるお母さんも多いですね。けれど、「こだわり」はその子の得意な事に繋がっているかも?発達障害と診断され自身の「こだわり」を武器にして活躍を果たした葉っぱ切り絵アーティストの方に得意の活かし方を聞きます。

1. 発達障害の子どもの得意なこと見つかっていますか?

子どもの将来について考える時こう思いませんか?

「うちの子は発達障害だから普通の仕事はできないかもしれない。」「我が子の得意を伸ばしてあげたい。」「得意なことで食いっぱぐれない大人になってほしい。」

けれど、自分で食べていけるほどの得意を作るって難しい!と思い悩むお母さんも多いのではないでしょうか?

私も、発達の凸凹が大きい中学生の息子がいて、学校教育にとらわれずに息子の得意を伸ばしてあげる子育てをしたいと思っています。

けれど時には、「得意を伸ばしたところでそれを活かした仕事を見つけるのは相当難しいのではないだろうか?」と不安になることもあるのです。

そこで、今回は、葉っぱ切り絵アーティストのリトさんに、得意の活かし方、得意なことを継続させるコツを聞かせてもらいました。

リトさんは、会社員として社会に出てから様々な困りごとが出現し、大人になってからADHDの診断を受け、会社を退職。その後自分にしかできない葉っぱ切り絵というアート活動を見つけ今や世界中に多くのファンがいらっしゃる人気アーティストさんです。

葉っぱ切り絵アーティストとして成功するまでの道のりは簡単なものではありませんでした。自分には何ができるのだろうか?という試行錯誤を何度も繰り返したそうです。小さな頃から切り絵をやっていたわけではなく、会社員をやめるまではアート活動自体もまったくやっていなかったリトさん。

彼が自分らしく生きていくことができるものを見つけたストーリーには、私達凸凹キッズを育てる母にとって参考にできるポイントがたくさんありますよ。

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2.何気なくいつもやっている遊びが将来につながっている⁉

ーーリトさんよろしくお願いします。リトさんは、会社を辞めてこれからどうやって生きていこうか模索していた中で、発達障害の特性の一つである「過集中」を使って細かい絵が描けないだろうかと思いついたとのことですが、その時は、どういう感覚だったのか教えてください。

「ある日ふと描いた機械の部品みたいな落書きを見て、この細かい絵を紙にびっしり描いて色を塗り分けたら、アートっぽくなるんじゃないかと思ったんです。思い返せば小さい頃から、細かい作業に没頭してしまうタイプでした。ジグソーパズルに夢中になったり、食事が冷めるのもかまわず魚の小骨をひたすら取ったりカニの身を細かくほじり続けたり。


※リトさんのボールペンイラスト

幼稚園の頃、買ってもらった魚の図鑑の空いてる隙間に、小さな丸をびっしり描いて埋めていたことがあったんです。その図鑑が最近出てきて『あ、今とやっている事同じじゃん』と思いました。今切り絵でひたすら小さな穴を開けまくっているのと、ひたすら黒い丸を描いているのは、やっていることとしては同じですよね。」

ーー細かい落書きの写真を拝見しましたが、ほんとにすごいなと思いました。夢中でやってしまうというのはまさに、ADHDの「過集中」ですね。アーティストになるまではアート活動をしていたわけではなかったとのことですが、何かの機会に自分の描いたものを周りの人に見てもらってすごいねって言われたことはなかったのですか?

「小学生の頃は、とにかく絵を描くのがすごく好きで、周りの友達から『絵上手いね』と言われていたし、自分でも漫画を描いて、それを友達に見せて楽しんでもらっていたんです。それが中学生ぐらいになって、自分は絵が別にうまくなかったということに周りの子の絵を見て気づいて、そこから描かなくなっちゃったんですよね。楽しさだけで今まで描いていたのが、決して絵が上手いわけではないと気づいて楽しめなくなってしまった。

ーー周りを客観的に見られるようになって、比べちゃうとそう思ってしまいますよね。

「そうです。漫画家さんが描くような絵を描けるような子が出てくるんですよ、周りに。それで自分の絵はそれに対して、いかに子どもの落書きみたいな絵だなって、 それが恥ずかしくて、『 絵は別にもういいや』と、やらなくなってしまいました。」

ーーそうでしたか。やはり周りと比べてやめちゃうというのはもったいないことですよね。大人は「現実をもっと見なさい」とか言いますが…

「そうですね。小さな頃は色々なことに興味を持って 、調べたり、やってみたりしていたのに。だんだんだんだんそんなことより勉強しろとか、そんなのをやっても意味ないとかという風潮に染まっていく。色々な人の意見を聞いたり、色々な人を見て遠慮したりして、周りの目を気にして同じようにしてという感じ。そして、だんだん自分の可能性を伸ばせなくなっていくんですよね。」

3.人と比べても意味がない、「人と違うからいい!」

ーー今現在、昔の得意だったことに気づいたリトさんは、学生時代に好きなことを諦めてしまったり、人と比べてもういいやと思ってしまったりしている人がいたら、なんて言いたいですか?

『人と違うからいいんだよ!』ですよね。僕のボールペンの絵は、あの当時の絵のレベルのままで止まっています。だけど『子どもっぽいのがかえっていい』と言われます。やっぱり絵を勉強して上手く描こうとした人には描けない絵なんですよ。本当に天然の子どもっぽい絵は、真似して描けないんですよね。」

ーーはい。

「僕はアートを始めた時に絵の勉強は全くしませんでした。最低限描けて相手に伝われば、もうそれでいいって感じで、下手にうまく描こうとしてやると、かえって恥ずかしい絵になっていく。誰かの二番煎じみたいな絵になっていくから、むしろ絵の勉強はしないで、小学校の頃の下手なままのフリーズされたこの画力を日々使っているって感じです。

周りと同じようにするために苦手な部分に力を入れるよりも、自分が出来ることを伸ばした方が早いんじゃないかと僕は思うんです。いかに自分が人と違う、周りから見たら何それ?と言われるものを持っているかという方が、今これからの時代にはむしろ必要ですよね。」

ーー幼い頃のリトさんの雰囲気が葉っぱ切り絵には詰め込まれているということなんですね。リトさんの作品を見てすごく心がほっとしたり、癒されたり、そのワケがわかった気がします。ありがとうございます。また、自分らしさを出すということに、とことんこだわって進み続けたことが多くのファンを獲得できた秘訣なのでしょうね。

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4.SNSで発揮したADHDのこだわり

ーーリトさんは自分の作品をSNSで発信し続けて注目が集まってご活躍されていると思います。リトさんがSNSで発信して成功できた秘訣を教えてもらえますか?

「それこそ、SNSを一番勉強したかもしれないですね。絵の勉強よりも SNS でいかに目立つとか、人に共感してもらえる、リツイートしてもらえる、いいねしてもらえるためにはどうしたらいいんだろうということをひたすら考えていました。

例えば、絵が上手いのに全然伸びてない人っているじゃないですか。この人こんなに切り絵が上手なのになんで100フォロワーしかいないんだろうとか、でも逆にこの人そんなに絵うまくないのになんで5万フォロワーもいるんだろうとか、その原因を分析するんですよ。その方の過去を遡っていって。

何がこの人と違うんだろう、この人はこんなにすごい能力があるのに、どうしてもっと注目してもらえないのかな。そこを調べると必ずやっぱり原因がどこかにあるんです。作品の投稿頻度がバラバラだったり、創作活動と関係ないものをたくさん載せていたり、誰かの悪口を言ってたり…それだと伸びにくいんですよね。」

ーーなるほど、そこまで追求していくのですね。


色々な人の投稿の仕方やフォロワーの付き方を研究して、やっぱり人の悪口は言わないようにしようとか、争いごとに首を突っ込まないようにしようとか、失言に気をつけようとか・・・と、少しずつ自分自身も思い当たればそこを直していきました。

後は、好きだからやる、やりたいからやるという自分目線のことばかりじゃなくて、見てくれる人がどう思ってくれるかを常に考えるのが大事ですね。ADHD の発信をするときも、私はただこうでした、だけじゃなくて、私はこうでした。これはこういう理由があって、こうだからだったんです。だからこういう人にはこういう方法もあると思います、と。見た人が、ああ、私もそうかもって思ってもらえるために、言葉を選んでいきます。

また、ただただ文章をひたすら羅列していくだけだと見るほうがしんどいじゃないですか。だから投稿が読まれやすいように、適度に改行を入れるとか、点を打つというのもめちゃめちゃ考えて、一個ツイートするのに2時間かけてファミレスでずーっと文字を修正したりしていました。」

ーーすごいです!素晴らしい。こだわりの強さがとても生かされていますね!

「こだわりの強さは半端ないですよ(笑)」

5.子どもの得意を伸ばす鍵は「こだわりポイントの発掘」!

発達障害の子どもを育てているお母さん達との話題でいつも上がってくる、「こだわり」

「この子の強すぎるこだわり、なんとかならないかな?」

と、母親としては子どもの特性を「なくしたい」「軽くしたい」という視点になりがちです。

もちろん、子どものうちに生活をスムーズに過ごせるようになるためには、こだわりが減るということは親子ともに楽になるでしょう。

けれども、すべての特性が邪魔者なわけではないのです。将来、その子にとって大きな武器となることがあるのだと、リトさんのお話を聞いて気が付きました。自分にしかできないアートを見出したこと、SNSを使いこなすまでの努力について話してくれたリトさんは「こだわりモード全開!」でした。そして、とても楽しそうな表情をしていました。

子育てをしていると、ついつい大人目線で子どもの成長を誘導しようとしてしまいませんか?けれど、「みんなと同じようにできれば安心」という目線は、世界でたった一つの宝物の輝きを失わせてしまうこともあるのではないかと思いました。

子どもの頃からの「こだわり」を育ててあげることで、物事をとことんやり抜く力や、こだわりの対象から気づきを得る力など、色々な力が付属して身についてしまう!それってとても楽チンな育児ではないでしょうか?

今日から、皆さんも我が子の「こだわりポイント」を発見してみませんか?短所だったと思っていたことを長所に変える声掛けをしていきましょう。

「君にしかできないこだわりだね!」
「そこ、こだわるんだね!」

こんな声かけでOKです!子どもはどんどん自信をつけて自分にしかできないことを発見していけるようになりますよ。

次の記事では、発達障害の子どもを持つお母さんが抱える将来の不安について、リトさんのお話を聞いていきます。ぜひお読みくださいね。

執筆者:すずき真菜
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

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