1. 小さいときから字を書かない息子はディスレクシア
我が息子は、ASD(自閉症スペクトラム)、ADHD(注意欠陥多動障害)、ディスレクシア(学習障害)です。
息子は、小さいときから、字を書くのが嫌いでした。
小学校に入学したときは、ノートに書き写すのが遅れるので、先生が少しノートに字を書いてくれて、そのあと続きを息子が書くという対応をして頂きました。
しかし、4年生になると、ノートも書かなくなり、漢字練習もしなくなりました。
漢字テストも書けないと、テストを破り、鉛筆も何本も折りました。
息子は何も言いませんが、できない自分が悔しいのだと思います。
「おれ、覚えても、すぐに忘れてしまう。」と私に伝えてきました。
真剣に伝えてきたので、覚えたくても覚えられない子がいるんだと私は知りました。
息子は、できない自分が許せない性格なのです。
漢字テストは、白紙でした。
私は「息子はどうして書かないんだと思いますか?」と担任の先生に聞くと、「間違えたくないから、書かないんです。」と言われました。
このことを青少年相談センターの方へ伝え、小学5年生のとき、WISC4検査を受けることにしました。
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2.書きたがらない理由はワーキングメモリーが低いからだった
WISC4検査結果は、ワーキングメモリーが低く、漢字テストで、5年生が10人いたら、10番目と言われました。
ワーキングメモリーは、見たり、聞いたりして、入ってきた情報を頭で記憶し、整理する能力です。
この結果を小中学校の先生に伝え、中学生に上がってからも国語以外の教科は、「ひらがなの解答もいいですよ。」とテストにマルをもらいました。
私は、中学校の先生から息子が“寺”という字を書くとき、「何回も“寺”の字を見て書いていた。」と言われたことを思い出しました。
息子は、見たものを記憶する力が弱いのだと気づきました。
知的な発達には遅れはないので、書くことに困難が生じるディスレクシアだったとわかったのです。
間違えたくない息子は、低学年のとき、もの凄く頑張っていたんだなと思います。高学年になり、書く量が増え、ついていけなくなったのです。
青少年相談センターの方から、
「他の子は、漢字練習をノートに、1ページ書くという宿題を、息子さんは、5個書いたらいいことにし、スモールステップでいきましょう。」
と励ましてもらいました。
スモールステップでいいんだと私は気持ちが軽くなりましたが、それでも息子は、やる気がないと5個でも漢字を書くのを嫌がってしまいました。
3.子どもが「勉強しよっかな」という気持ちになるママの対応策
◆勉強の環境は、本人の集中しやすいスタイルでOK
息子は、常に、日常生活で、自分の横にタブレットをおき、動画を見ながら他のことをします。勉強のときも同じです。
なかなか勉強が終わらないので、早く、終わらせて、好きなことをするほうがいいと思い、「5分、動画停止!どのくらい進むかな。」と声をかけ、動画を見ながら勉強することをやめさせようとしていました。
しかし、この声掛けが、字を書きたくない息子には、「うるさい。」と余計、イライラさせる声掛けでした。
イライラして、勉強しても頭には入らないのです。
勉強の環境は、自分がやりやすい環境でしたほうが頭にはいります。
アメリカでは、寝ながら勉強してもいい学校もあり、また、歩きながら本を読むほうが、頭に入る人もいます。
イライラした気持ちで取り組むより、楽しみながら、取り組んだほうが、頭に覚えられるのです。
小学6年生のとき、先生から「工作しながら、授業を受けさせていいですか。工作していても、あてると答えます。授業を聞いています。」と言われたことを思い出しました。
息子は、耳で音を聞き、理解しながら、手の作業もできる。
動画を楽しく聞きながら、ノートを書くという勉強をしたほうが、息子は、頭に入るのかもしれない。
息子がやりやすい勉強スタイルでいいと思い、何も口を出さないようにしました。
◆自分から勉強に取り組んだら認める声かけ
自分から勉強に取り組んだら、「勉強しているね。いいね。」と“やろう”という姿勢をほめました。
勉強しない日は多いです。紙や段ボールで銃などを作るのが好きで、頭にひらめいたら工作ばかりしています。「何を作ろうか、どう作ろうか、考えている今が、息子の心が安定する時間、脳が発達する時間だ」と思い、勉強についてはふれませんでした。
このような肯定的な声かけで接していると、イライラしながらも、宿題へ取り組もうという気持ちが出てきました。
漢字練習だけではなく、答えを書き写して提出する社会ワークの宿題では、書き写すのに疲れ、途中でイライラしてしまうのでした。
なかなか思うようにいかないと、イライラした態度になりましたが、その態度はスルーし、「ここまで書いたね。頑張っているね。」と認める声かけしました。
最初のうち、漢字練習は後回し。好きな社会のワークから始めるようにして、問題の解答を見ながら、ノートへ答えを書き写していきました。
「やっているね。こんなに書いたね。」と認め、「疲れた~。」と言えば、「お母さんがマルつけしておくね。早く休んでね。」と伝えました。
次の日、学校で提出し、先生からも褒められ、“やろう”という気持ちが芽生えてきているようです。
4.漢字テストが0点から20点へ!
少しずつ、学習習慣がつけられるようになってきたため、次は、書かなかった漢字練習の宿題へ取り組み始めました。
毎週、20点満点の小テストがあります。いつも、0点ばかりでしたが、漢字練習を始めると、漢字テストを白紙で出すことはなくなり、一つずつ正解が増えてマルをもらえるようになりました。そこで私は「漢字練習頑張っているからだね」と声をかけました。
すると、自分からノートを開いて、漢字練習を取り組むようになりました。
「今日も、漢字練習、自分からやっているね」と声をかけました。
そんな小さな変化を具体的に褒める声かけをしていたら、ついに!息子が、20点満点をとれるようになりました!息子が、満点をとったテストを私に渡してきました。
私に見せたかったようです。
「やったね。頑張っていたからだね。感動。このテスト、お母さんに頂戴。宝物にするね。」といい、喜びました。
息子も、「うん。いいよ。」といい、“やったよ”という気持ちが伝わってきました。
“漢字を見て書くこと”を毎週していると、自然と見る力がつき、字を書く量も増えていました。
勉強のスタイルは、本人のやりやすいスタイルでいい。やっていることを認めてあげる声かけで、やる気がおきる。本人がやろうという気持ちを引き出す声かけが大切ですね。苦手なことにも挑戦できるようになります。
ディスレクシアのお子さんには、世間でいいと言われている勉強の仕方が合っていないことがあります。
大人にとっては、スモールステップと思っていることも大きな負担になることもあります。
ぜひ、子どもの負担感をよく観察して、楽に取り組める方法を考えてあげてくださいね!
執筆者:佐々木優子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
勉強が苦手なディスレクシアの子が楽しく勉強できるようになるおウチでの関わり方をお届けします!