発達障害・グレーゾーンの子どもたちは、定型発達の子よりも不登校になりやすい傾向があります。学校で安心して過ごせるためには、どのような環境調整ができるでしょうか。お母さんが、学校の環境調整について考える際のポイントをお伝えします。 |
【目次】
1. 発達障害・グレーゾーンの子どもが不登校になりやすいワケ
2. 学校に義務づけられた「障害者差別解消法」に基づく合理的配慮とは?
3. 考えられる支援例
◆支援例
◆別室を居場所にする
4. 子どもの学校での居場所作りのためにお母さんに必要な3つのポイント
◆ポイント①目的は、子どもが安心でき成長できること
◆ポイント②押しつけない!
◆ポイント③我が子にあったお母さんの対応
1. 発達障害・グレーゾーンの子どもが不登校になりやすいワケ
皆さんは、不登校の小中学生のうち何割に、発達障害またはその可能性があると思われますか?
日本保健福祉学会誌(2010年)で報告された調査結果によると、約2割となっています。
発達障害のある児童生徒の割合は約7%ですので、発達障害の子どもは、定型発達の子どもに比べて、不登校になる可能性が高いということが言えます。
発達障害の子どもは、授業に集中できない、読み書きが極端に苦手、人の多さが辛い、指示が理解できない、クラスになじめない・・・
などなど、学校生活において人一倍、苦労していることがあります。
そういう毎日を繰り返すうちに、怖い、辛い、もう嫌だ…となる。それが、不登校や登校しぶりや隠れ不登校の状態です。
2. 学校に義務づけられた「障害者差別解消法」に基づく合理的配慮とは?
学校での負担が大きい状況にあるのであれば、学校環境を子どもに合わせて調整して、負担を軽くしてあげたいですよね。
学校を山登りに例えるなら、今歩いている道が過酷なら、より歩きやすい道を歩かせてもらったり、荷物を軽くしてもらったりするということです。
視力の悪い子にとってメガネが必要なように、発達障害・グレーゾーンの特性による困難のある子どもにも、その子にあったサポートが必要です。
このような、個人に合わせた環境調整は、「合理的配慮」と呼ばれています。
2016年に施行された「障害者差別解消法」により、負担が大きくなりすぎない範囲で、必要に応じて合理的配慮を提供することが義務付けられています。
3. 考えられる支援例
では、発達障害・不登校傾向のある子どもにはどのような支援や工夫があると良いでしょうか。
まずは、お子さんが困っていること(困っていると予想されること)を整理し、それをもとに、どのような配慮を望むのか、具体的なアイディアをまとめてみましょう。
学校の様子が分らない場合は、学校に直接出向いて様子を見るのもおすすめです。
具体的な例をいくつか記載しますので、参考にしてみてください。
◆支援例
困っていること(例) | 考えられる対策(例) |
授業に集中できない | ・座席の配慮をしてもらう ・掲示物が目に入らないようにする |
読み書きが苦手 | ・タブレットなどICT機器を利用することで、教科書の文字を拡大して読む ・板書をタイピングや写真撮影することで書く負担を減らす |
見通しが立たず不安 | ・一日の予定を詳しく教えてもらう ・予定変更の際は事前に個別に伝えてもらう ・不安解消のために好きな文房具を持たせることを許容してもらう |
感覚過敏によって特定の活動が出来ない | ・活動への参加を強要しない ・その時間過ごせる場所や課題を設定する ・テストやプリントの用紙の色を変える ・座席の配慮をしてもらう |
指示が理解できない | ・指示を一度に出さずに、一つずつ出してもらう ・黒板に書き出してもらう ・支援の先生を付けてもらう |
授業中に座っているのが苦痛 | ・活動内容を分割して途中に体を動かす ・先生のお手伝いとして配り物役を任命する |
クラスになじみにくい | ・少しでも話しやすい子と座席を近くにしてもらう、班を同じにしてもらう |
叱られて自信をなくしている | ・特性を説明し、できていることに注目する対応をしてもらう |
パニックを起こす | ・クールダウンスペースを作る |
あくまでも一例ですので、お子さんや学校の状況によって、他にもさまざまな工夫が考えられます。
◆別室を居場所にする
通常の学級にこだわらず、別室を利用することも考えられます。保健室、相談室、図書室、校長室などです。通級指導教室や特別支援学級の制度もあります。
このような通常学級以外の場所では、発達障害・グレーゾーンの子どもが、より落ち着いて学習ができたり、自分の興味に合わせて学びを進められたり、通常の学級でのトラブルから距離を置いたりすることができます。
また、「適応教室」(身体面・情緒面で一時的に困難があるときに利用できる)や、「個別学習」を、学校独自の裁量で、校内に用意していることもあるようです。
必ずしも公表されていない制度です。お母さんが学校に問い合わせて初めて、そのような場があることを知ったというケースもあります。まずは学校に確認されることをおすすめします。
4. 子どもの学校での居場所作りのためにお母さんに必要な3つのポイント
では実際に、発達障害・グレーゾーン不登校傾向の子どものために、必要な支援を考えたり、学校にお願いしたりする際のことを考えていきましょう。お母さんにはどのような視点が必要でしょうか。知っておきたいポイントを3つお伝えします。
◆ポイント① 目的は、子どもが安心でき成長できること
合理的配慮・環境調整を行うにあたっては、どういう環境があれば子どもは安心できて、かつ自信を育み成長していけるかという視点を持ちましょう。
支援を受けることは、悪いことでも劣っていることでもありません。合うやり方が違うだけです。
視力が悪いのに、メガネをかけさせずにいたら、授業は身につくでしょうか?安全に過ごせるでしょうか?
それと同じで、学校の環境を調整することは、学校で安心して過ごせ、かつ勉強や社会性などを身につけるという本来の学校の目的を達成するために必要なことです。
◆ポイント② 押しつけない!
大人の目線だけで支援を押しつけず、不登校傾向にある発達障害・グレーゾーンの子ども本人の意思を尊重しましょう。
大人から見て良いと思われる配慮でも、本人にとって使い勝手が悪いのなら意味がありません。これでは、度の合わないメガネと同じですね。
子ども本人が使いやすい配慮であること、また、本人がその配慮をうまく使いこなせるようサポートすることが大切です。
◆ポイント③ 我が子にあったお母さんの対応
お伝えしてきたとおり、学校環境を整えることはとても重要です。しかしながら、学校では、必ずしもその子に合うサポートが得られるとは限りません。
そこに固執してしまうと、親も子どもも先生も、辛くなります。
じゃあどうすればいいのかというと、お家でのお母さんの対応です。
たとえ学校が合わなくても、お母さんが、発達障害・グレーゾーンの子どもの発達を加速させ、自信を育むことができます。
私の娘も、学校は合いません。それでも彼女なりに大きく成長しているのは、私が対応を学び、実践しているからです。
子どもの、好きなことに取り組む姿勢、挑戦しようとする気持ち、親からの愛を素直に受け取れる心、自己肯定感。
お母さんの、子どもへの共感力、才能を見つけ伸ばす力、見守り応援できる余裕、子どもを受け入れる度量。
それらは、学校うんぬん関係なく、いや、不登校傾向があるからこそ、これから子どもが生きていく上でも、子どもを発達させる上でも、重要になってきます。
学校環境にこだわりすぎなくても、お母さんがお子さんの安心と自信を育み、楽しく発達を加速させることができるということを知っておいてくださいね。
以上、3つのポイント、①目的は安心と成長、②押しつけない、③お家での対応、をおさえながら、お子さんに合った支援が得られるように、学校と連携していきましょうね!
執筆者:水原沙和子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)