「引っ越し時の盲点」ってなに?発達障害で感覚過敏の子どもの引っ越し注意点

子どもの小学校入学前に、よい環境や学校を求めて引っ越しを考える親は結構多いものです。 また、感覚過敏や変化に弱い発達障害の子どもには、住む環境に注意が必要となります。引っ越しで、事前に注意することをお伝えできればと思います。
 

1.発達障害の子どもの引っ越しでチェックしたいことって?

 
 
子どもにとって良い支援環境を求めていたり、または、突然転勤することになったりして、引っ越しすることがありますよね。
 
 
光のまぶしさや音に敏感な感覚過敏があったり、見通しがつかない事や変化に弱かったりする発達障害の子どもは、引っ越しのときに色々配慮が必要となります。
 
 
例えば、視覚と聴覚過敏のある子は、家の環境に注意がいります。
 
 
引っ越ししてから、壁紙やカーテンが白くまぶしすぎて、視覚過敏でイライラしていたり、外の騒音に絶えず驚いて、聴覚過敏で安心できずに過ごしていると…
 
 
だんだん荒れたり、逆に元気がなくなってしまうかもしれません。
 
 
また普段は過敏がおさまっていても、ストレスを受けると、一時的に強く出てくる子どももいます。
 
 
引っ越しの環境変化で、普段より過敏が強くなる可能性もありますね。
 
 
未就学や小学校低学年の子どもだと、その環境変化のつらさを言葉で訴えることはなかなか難しく、親の察しが必要でしょう。
 
 
また、地域によって、発達障害の子どもが学校で受けることができる支援は異なっています。
 
 
取り出しで授業の補講をしたり、ソーシャルスキル訓練をしてくれたりする通級指導教室を利用したくても、引っ越し先の学校にないと、親の送迎が必要となります。
 
 
また、授業中に支援員についてほしくても、その自治体には制度がなかった場合、再度引っ越しを検討するのも大変な作業となります。
 
 
安心して新しい環境に入り、より子どもにあう支援を受けるために、引っ越しする際、事前にチェックした方が良いことを、子どもが小学生の場合を中心にお伝えできたらと思います。
 
 
 
 

2.学区の支援や体制

 
 
地域や学校によって、小学校で受けることのできる支援は異なってきます。
 
 
引っ越し先の自治体で、義務養育の支援体制を調べて、より良い支援をうけられる地域を選ぶのもいいでしょう。
 
 
支援は市の教育委員会にたずねたり、学校独自の支援制度を設けている場合もあるので、直接学校に問い合わせをするといいと思います。
 
 
校長先生が変わることで、支援の体制が変わることもあるので、年度をまたいで情報収集をしている場合は注意が必要です。
 
 
通常級に所属する小学生で具体的に確認したいこととして、
 
 
・通級指導教室の有無
 
友達とのかかわりが難しかったり、学習に困難がある子どもが、週に数時間、通常級の授業時間に個別指導を受けることのできる教室があります。
 
所属する学校に通級指導教室がない場合、保護者が設置校まで送迎する必要のある場合もあります。
 
 
・支援員制度の有無
 
学校生活の手助けをしてくれる支援員が通常級につく地域もあります。
 
週に数時間~ほぼ一日ついてくれるところもあり、どの程度の時間支援が得られるかの確認も必要です。
 
 
・小学校の校舎の形態
 
壁やドアがないオープンな学校だと、音や刺激が多く、おちつかない子どももいます。
 
 
その他、スクールカウンセラーの配置、ボランティアの支援員の配置などもあります。
 
 
引っ越し地区を考えるときに、子どもに触覚過敏がある場合、中学校の詰襟制服につらさを感じると予想。制服がブレザータイプの学区を選ぶ保護者もいました。
 
 
少し先の中学校の体制も見越して情報をあつめられると、より安心ですね。
 
 
 
 

3.家の注意点

 
 
家や内装に関しても、視覚過敏や聴覚過敏など過敏への配慮が必要となります。
 
 
子どもの感覚過敏やこだわりは、他人が想像するのは意外と難しいもの。
 
 
本人でないとわからない事が多いので、可能であれば、子どもに事前に見てもらうほうが安心ですよ。
 
 
我が家の子どもは、普段は問題ないのですが、真夏にストレスを受けると光への過敏がでてきます。
 
 
そこで、引っ越しする時にストレス時を考慮して、より安全な壁紙やカーテンを選びました。
 
 

◆壁紙の色

 
 
真っ白の壁紙は、太陽の光や光の色、強さによって、まぶしくみえて、ストレスに感じる子どもがいます。
 
 
逆にカラフルな色が苦手な子もいますが、家の壁紙ではあまりみられませんよね。
 
 
リフォームであれば、壁紙のサンプルを取り寄せして、実際の照明の下で子どもに見てもらうのもいいでしょう。
 
 
リフォーム会社の方もおっしゃっていましたが、5㎝程度のカタログサンプルだと、実際に壁にはったときと印象にギャップがあるそうです。
 
 
なので、メーカーで A4サイズ程度の大きめのサンプルを取り寄せして確認するほうが実際に近くなりますよ。
 
 

◆カーテン

 
 
カーテンも壁紙と同じく、白でミラーカーテンのものなどは、真夏の光にギラギラと反射し、つらい子どももいます。
 
 
メーカーや販売店でサンプル請求できるものも多いようです。
 
 
窓のそばで光にあててまぶしくないか子どもに実際に見てもらうほうが安全でしょう。
 
 
わからない場合は、クリームがかったものが安心です。
 
 

◆家の照明

 
 
引っ越し先の新居の内装が決まっていて変えられないこともありますね。
 
 
内装の色が視覚過敏にふれそうなとき、照明の色でカバーすることができます。
 
 
LED の照明だと、電球色から昼光色まで、色と光の強さを変更できるものがあります。照明の交換で対応できる可能性がありますよ。
 
 
まぶしいときは、白く見えない電球色の方が楽になる傾向があります。
 
 
我が家の子どもも、おちつかないときは、ややオレンジがかった電球色が安心できるようです。ですので、状態によって照明の色を変えています
 
 

◆騒音

 
 
線路や大通りに近くて騒音が気になる場所だったり、救急車やヘリコプターが頻繁に通る場所。
 
 
そんな場所だと、聴覚過敏の子どもにはつらいかもしれません。
 
 
逆に、子どもが騒いでご近所に迷惑がかかることが心配な場合もありますね。
 
 
このような場合は、防音カーテン二重窓にすることで対応できます。二重窓の防音の程度はショールームで体験できるところもありますよ。
 
 

◆臭い

 
 
臭いに過敏があると、新築の家のにおいにイライラして怒る子どももいますね。
 
 
リフォームであれば、壁紙に消臭効果のあるものも販売されています。
 
 
風を通したり、消臭剤を利用したり、対策するのがオススメです。住みはじめるまでに極力臭いを取っておくと安心ですね。
 
 

◆子どもの好きな要素

 
 
環境変化に弱い子どもでも、好きなものがあれば受け入れがよいことも多いです。
 
 
例えば、収納のための部屋があれば 「新しい家は秘密基地があるよ」と言ってみるのはどうでしょうか?
 
 
庭や屋外に水道があれば「外で水鉄砲バトルができる家だよ」と言ってみるのもいいですね。
 
 
すこし子どもがわくわくしたり、嬉しくなる要素があれば受け入れもよくなりますよ。
 
 
 
 

4.学校との連携はどうしたらいい?

 
 

◆支援シートを渡し、クラス見学をする

 
 
事前に転校先の先生と面談し、子どもの特性と配慮してほしい点をまとめた支援シートを渡しておくといいでしょう。
 
 
また、長期休暇明けや新学期からの登校の場合、休み中に担任の先生と子どもの顔合わせや、クラスの見学を希望するのもオススメです。
 
 
希望を受け入れていただける可能性は十分にありますよ。
 
 

◆集団登校について

 
 
大人のいない、子どもだけの時間がトラブルの要因になることはよくある事です。
 
 
入学前であれば、登校班の調整もしてもらえる可能性が高くなります。
 
 
我が家の子どもは友達とのかかわりがマイペース。私は引っ越しのとき、集団登校でのトラブルを心配していました。
 
 
集団登校の登校班によっては、トラブルを繰り返しおこしているところもあるようです。
 
 
校長先生に相談したところ、そういった子どものいない登校班にあらかじめ設定することも検討してくださる様子でした。
 
 
 
 

5.親にとっても引っ越ししたい場所ですか?

 
 
子どものために環境の良いところへ引っ越しする場合「親にとっても、良い場所であるか」も大切な視点となります。
 
 
子どもの事を中心に考えていると、自分たちの事がおろそかになり、盲点となりがちです。
 
 
子どものために良い環境へ引っ越ししたとしても、新しい問題がでてくる事はよくあります。
 
 
そのときに、親にとって良くない環境だった場合、不満が噴出し、家庭の和が乱れる可能性もあるのです。
 
 
家族で落ち着いて暮らすために「親にとっても良い環境」という視点をもちながら、家探しをすることをおすすめします。
 
 
過敏と不安に配慮して、新しい家でおちついて生活をスタートしたいですね!
 
 
 
 
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執筆者:森富ゆか
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
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