発達障害で不器用な子は鍵盤ハーモニカが苦手になりやすいです。しかし、学校のやり方にこだわらず、その子に合ったやり方をすれば楽しく吹けるようになるのです。発達障害で不器用な子でも「吹ける!」と自信をもてるようになるママの対応をご紹介します。
【目次】
1.発達障害の息子が鍵盤ハーモニカに自信をなくす
2.鍵盤ハーモニカが苦手になる理由は発達障害の不器用さ
3.発達障害で不器用な子が吹けるようになるママの対応
①我が子に合った音楽会の目標を決める
②楽譜を外して耳で覚える
③「間違えない」以外のことをほめる
④適度な距離で見守りながら、ほめ逃さない
4.音楽会後も楽しく吹くようになった息子
1.発達障害の息子が鍵盤ハーモニカに自信をなくす
小学校1年生から音楽の授業で使う鍵盤ハーモニカ。みんな喜んで吹いているのに、「うちの子、全然吹けない…」と心配されていませんか?
特に発達障害のお子さんは不器用な特性をもっている子が多いので、鍵盤ハーモニカがうまく吹けなくても無理はないのです。
「みんなと合わせて最後まで吹くこと」を求める前に、その子に合ったやり方を示すことで「ぼくにも吹ける!」という自信をつけることから始めてみませんか。
必ず楽しく吹けるようになります。
我が家には発達障害で不器用な小学校2年生の息子がいます。
息子の通う小学校では、毎年1回音楽会があります。
息子たち2年生は、「歌1曲と鍵盤ハーモニカ4曲を発表する」ということが学年通信に書かれていました。
それを見たのは音楽会の2週間前…登校日数にして9日前です。
え?2週間で4曲覚えるの?
案の定、鍵盤ハーモニカが大の苦手な息子は「ウソ…4曲も…」と焦ったらしく、楽器を家に持ち帰ってきました。
そして、泣きそうな顔で「お家で毎日練習する」と言ったのです。
4曲はどれも短くて簡単な曲。聞きなじみもあり、見ただけで吹けてしまう子もたくさんいるでしょう。
しかし、息子にとってはどれも難しく、学校の授業だけでは習得できなかったのです。
「みんなと合わせて吹けない」「音楽会にとても間に合わない」と悲しそうな顔をする息子に胸が痛みます。
「できるようになりたい」という息子の気持ちをひしひしと感じた私は、どうにか息子に「ぼくにも吹ける!」という自信をつけられるような対応を考え始めました。
この記事では、発達障害で不器用な子が鍵盤ハーモニカを吹けるようになるママのおうち対応をお伝えしていきます。
2.鍵盤ハーモニカが苦手になる理由は発達障害の不器用さ
◆目と指と息を同時に使うのが苦手
鍵盤ハーモニカでは、なんと同時に4つの動きをすることが必要とされます。
①楽譜で音の並びを確認する
②目で鍵盤の音(ドレミファソラシ)の位置を確認する
③指でその確認した鍵盤を押さえる
④鍵盤を抑えながらホースに息を吹き込む
このように、ひとつの動作をする際に体の複数の機能を同時に使うことを「協調運動」といいます。
発達障害で不器用な子はこの協調運動が苦手な場合が多いので、鍵盤ハーモニカを弾くことは非常にハードルが高くなります。
◆楽譜の音の並びや鍵盤の位置を覚えていられない
脳の働きに「ワーキングメモリ」というものがあります。
これは、情報を一時的に覚えておきながら、考えたり行動したりする脳の働きです。
このワーキングメモリで、楽譜の音の並びや鍵盤の音の位置を記憶して、その位置に指を動かすのです。
発達障害の子はワーキングメモリが弱いという特性を持っていることが多いので、楽譜の音の並びや鍵盤の音の位置を覚えておくのが難しくなります。
次の音がどこにあるのか迷ってしまうので、指が思うように動かないのです。
◆学校という環境で自信を失う
発達障害で鍵盤ハーモニカが苦手な子にとって、学校の授業における次の状況が辛くなります。
・自分の出している音が聴こえない
常にクラス全員の音が大音量で鳴っているので、自分が吹けているのかどうかよくわかりません。
・みんなで合わせて吹く機会が多い
途中で間違えると全体と合わせて吹き終わることができず、「できなかった」というネガティブな記憶が脳に色濃く残ってしまうことで自信を失ってしまいます。
息子には上記の理由がすべて当てはまり苦しい状況でした。
しかし、息子は音楽会まで家で毎日練習することで「ぼくにも吹ける!」と自信をもつことができました!
わたしがどのように対応したかを次の項でお伝えします。
3.発達障害で不器用な子が吹けるようになるママの対応
◆①我が子に合った音楽会の目標を決める
「音楽会でみんなと合わせて吹ける」「最後まで間違えないで吹く」という目標は、息子にとってはまだ先の学年でよいと思いました。
ですから、息子の2年生の音楽会の目標は「ぼくにも吹ける!という自信をつける」に決めました。
◆②楽譜を外して耳で覚える
楽譜と鍵盤の両方を見るのが辛そうだったので楽譜なしで練習しました。
息子は耳から聞いたフレーズを覚えるのは早くて得意です。
まず、わたしが2小節ずつ鼻歌のようにドレミで何度も歌って聞かせました。
それを息子が記憶して、鍵盤の音の位置を確認して吹くようにしたら、楽譜を見るよりもずっとスムーズに吹けました。
◆③「間違えない」以外のことをほめる
息子は間違えないで最後まで吹くことを目指していましたが、それはとても難しいことでした。
自信を失って欲しくなかったわたしは「間違えない」以外の吹き方や音色をほめました。
「カッコーの鳴き声にそっくりな吹き方だね」
「カエルの元気な合唱に聞こえる音色だよ」
息子はそのような言葉をすごく喜んで、何度も吹く姿がありました。
◆④適度な距離で見守りながら、ほめ逃さない
ある程度吹けるようになったら、わたしは息子の練習に注目していない風を装いました。
間違えた時に誰も聞いていないという状況をつくったことで、プレッシャーから解放されて自由に吹く姿がありました。
しかし、息子は自分なりに満足する演奏ができたら必ずわたしの方をチラっと見ます。
そんな時は、必ず視線が合うように準備しておき、笑顔やグッジョブサインでほめる気持ちを伝えることを心がけました。
息子は音楽会までの2週間、毎日必ず鍵盤ハーモニカを吹く時間を作っていました。
家は学校とは違う静かな環境なので、いつも自分の音だけを聴くことができました。また自分のペースで最後まで通して吹く経験がたくさんできました。
徐々に「ぼくにも吹ける!」という自信をつけていく様子が分かりました。
なによりも、「楽しいね!」という言葉が聞けたことが嬉しかったです。
音楽会では、一生懸命に指を動かす姿が誇らしく、ヒーローに見えました。
4.音楽会後も楽しく吹くようになった息子
音楽会後に奇跡のようなことが起こりました。
音楽会のしばらく後、夫が息子に「音楽会の曲を聞いてみたいな。息子くん、吹いてみてくれる?」と頼みました。
夫は単身赴任のため音楽会には来られなかったし、息子の練習の様子も見ていなかったのです。
息子は「仕方ないなぁ」と初めて父親というお客さんの前で鍵盤ハーモニカを吹くことができました!
最初は「1曲だけね」と一番自信のある曲を吹いたのですが、吹き終わったら「やっぱり全部聴きたい?」と言って、結局4曲全て吹いていました。
途中で間違えても最後まで吹き通しました!
夫はその姿に感動して息子をほめ、息子はニコニコしていました。わたしは、息子に自信がついたと感じてとても嬉しかったです。
音楽会から5ヶ月ほど経ちましたが、今でもたまに鍵盤ハーモニカを持ち帰ってきて、音楽会の曲を吹いてくれます。吹けるようになったことがとても嬉しかったのだと感じています。
鍵盤ハーモニカが苦手でみんなと合わせて吹けないことに悩んでいるお子さんとママの参考になったら嬉しいです。
行事での我が子に合った目標の立て方については、ぜひこちらの記事をお読みください。
「協調運動」が苦手な子へのアプローチ方法がたくさん見つかるのはこちらです。
執筆者:はた まゆ子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)