ADHDの子の漢字の覚え方|苦手でも何度も書かずに覚える3ステップ

 

注意欠陥多動性障害(ADHD)タイプの子が漢字を覚えられず、何度も書かせても進まないと悩んでいませんか?繰り返しが苦手な子に合う、形・意味・物語を使った漢字の覚え方を、親子の実践をもとに3ステップで紹介します。
 

監修者:吉野加容子

発達科学コミュニケーション創始者/パステル総研主宰/発達科学ラボ代表

 

脳科学をベースに、発達障害・発達グレーゾーンの子どもの発達支援を専門とする。広島大学教育学部卒業後、東京学芸大学大学院修士課程、慶應義塾大学大学院博士課程で学び、民間企業での脳科学研究、医療機関での発達支援、大学での教育に従事。

 

15年以上にわたり発達に悩む親子と向き合う中で、「子どもの発達を本当に伸ばすのは、家庭での365日の関わりである」という結論にたどり着く。

 

病院や学校だけでは支援が届きにくい発達グレーゾーンの子どもたちに対して、家庭で再現できる支援を確立するため、脳科学・教育学・心理学を融合した独自メソッド「発達科学コミュニケーション」を開発。

 

これまでに数多くの親子の変化を生み出し、“ママが変われば子どもが変わる”という発達支援の新しい当たり前を広げている。

著書に『発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室』『脳を育てる親の話し方』『脳が喜ぶ子育て』など。

 

【目次】

1.ADHDの子が漢字を覚えられない…何度も書かせて疲れていませんか?
2.ADHDの子はなぜ漢字が苦手?覚え方が合っていない可能性
3.漢字が苦手な子どもは「楽しい」「なるほど」で覚えやすくなる
4.ADHDの子に合う漢字の覚え方|親子でできる3ステップ

 
 

1.ADHDの子が漢字を覚えられない…何度も書かせて疲れていませんか?

 
 
「何回書いても漢字を覚えられない」 
「お手本を見ているのに、線が抜けたり形が変わったりする」 
「漢字の宿題になると、なかなか進まない」
 
 
注意欠陥多動性障害(ADHD)タイプの子の漢字学習に、このような悩みはありませんか? 
 
 
わが家の長男にもADHDの傾向があり、小学3年生だった頃は、同じことを何度も繰り返す勉強がとても苦手でした。
 
 
特に漢字の書き取りでは、すぐに飽きて手が止まったり、書くスピードが遅くなったり、次第に字が雑になったりしていました。   
 
 
私も以前は、 「もう少し丁寧に書こう」 「ここが違うから、もう一度書いてみよう」 と声をかけていました。
 
 
 
 
けれども、書き直しをさせるほど長男のやる気は下がり、親子ともに漢字の宿題がつらくなっていきました。 
 
 
そこで私は、練習が足りないのではなく、繰り返し書く覚え方が長男に合っていないのかもしれないと考えました。 
 
 



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2.ADHDの子はなぜ漢字が苦手?覚え方が合っていない可能性

 
 
ADHDタイプの子どもの中には、興味を持ちにくいことに集中し続けるのが難しい子がいます。 
 
 
同じ漢字を何度も書く練習は、変化が少ない単調な作業です。 最初はお手本を見ていても、だんだん注意がそれて、漢字の形を確かめるよりも「書く作業を終わらせること」が中心になってしまいます。  
 
 
また、漢字には、線の長さや向き、点の位置などの細かな違いがあります。 漢字全体の形は似ていても、一部分を見落とし、お手本とは違う字になることもあります。  
 
 
そこで、 
「きれいに書けていないからやり直し」 
「もっとよく見て」 
 
 
と繰り返し言われると、漢字への苦手意識がさらに強くなってしまいます。 
 
 
※声かけ、対応を変えたことで兄弟で宿題に取り組む姿が見られるようになりました。
 
 
漢字を覚える力がないのではありません。 何度も書く方法よりも、漢字の形や意味に興味を持てる覚え方のほうが、その子に合っている可能性があるのです。  
 
 


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3.漢字が苦手な子どもは「楽しい」「なるほど」で覚えやすくなる

 
 
人の脳は、自分にとって大切だと感じたことを優先して覚えます。 
 
 
たとえば、 
・楽しい、面白いと感じたこと 
・心が動いたこと 
・自分で考えて「なるほど」と分かったこと 
・何度も経験したこと 
 
などです。 
 
 
繰り返し書くことが苦手な子には、「楽しい」「面白い」「分かった」という体験を使うと、情報が記憶に残りやすくなります。 
 
 
 
 
長男は漢字の書き取りは苦手でしたが、お父さんとポケモンカードゲームをするようになると、ポケモンの名前だけでなく、進化の順番や技、身長や体重まで自然に覚えていきました。 
 
 
ゲームに勝ったときの喜び、お父さんと遊ぶ楽しさ、自分で作戦を考える面白さが、たくさんの情報を覚えることにつながっていたのです。 
 
 
その姿を見て私は、漢字にも「面白い」「見つけた」「分かった」という体験を加えてみようと考えました。 
 
 

4.ADHDの子に合う漢字の覚え方|親子でできる3ステップ

 
 
ここからは、わが家で実践した漢字の覚え方を3ステップで紹介します。 
 
 
✅ステップ1 漢字の形や部分を一緒に見る 
 
 
最初から漢字を書かせるのではなく、まずは親子で一緒に眺めます。
 
「何に見える?」 
「知っている形は入っている?」 
「どの部分が気になる?」
 
問いかけ、子どもが漢字の形に注目できるようにします。 すぐに答えが出なくても大丈夫です。  
 
「ここに四角があるね」 
「この部分は木という漢字に似ているね」 
 
と、親が気づいたことを言葉にすることから始めても構いません。 
 
 
大切なのは、「もっとよく見て」と伝えるだけでなく、漢字のどこを見るのかを一緒に見つけることです。 
 
 
✅ステップ2 意味・絵・物語と結びつける 
 
 
次に、漢字の形から思いついたことを自由に話します。 わが家では「国」という漢字を覚えるとき、こんなやり取りをしました。  
 
母:「四角の中に玉があるね。どうしてかな?」 
 
長男:「玉って言ったら、将棋の玉将だ。王様だよ」 
 
母:「王様が四角に囲まれて、国の真ん中にいるみたいだね」 
 
長男:「国の中心に王様がいるんだよ」 
 
 
さらに、外側の四角を「口」に見立て、変な顔の王様が口から出てくる絵を描くと、長男は笑いながら漢字の形を確認していました。 
 
 
これは「国」という漢字の正式な成り立ちを説明したものではありません。 子どもが漢字の形を覚えるために、自分なりのイメージや物語を作っているのです。  
 
 
子どもの発想が少し変わっていても、すぐに正しい答えへ直す必要はありません。「面白いね」 「よく見つけたね」 と受け止めましょう。  
 
 
興味が続いているときは、「国語」の「国」と「黒」の音読みがどちらも「こく」になることを探すなど、漢字同士のつながりを楽しむこともできます。 
 
 
※分割された感じカードを組み立てるという工程で、じっくり見て(観察)記憶に残す。書く練習をほとんどしていないで漢字テスト8割クリアに!その時の工夫の様子がこちらです。 
 
✅ステップ3 お手本を見ながら、ゆっくり1回書く
 
 
形や物語を確認したら、最後に漢字を書きます。 同じ漢字を一度に何度も書かせるのではなく、習字を書くような気持ちで、お手本を見ながらゆっくり1回書きます。  
 
 
文字の大きさは自由です。マスに収めることが難しければ、最初は大きな紙に書いても構いません。 
 
 
書き終わったら、間違いを探すよりも、できている部分を具体的に伝えます。 
 
「この部分はお手本とそっくりだね」 
「この線はきれいに書けたね」 
「さっき話した玉の部分を覚えていたね」 
 
このように、小さな成功を言葉にすることで、漢字を「できなかった記憶」ではなく、「分かった」「書けた」という楽しい記憶につなげていきます。 
 
 
一度で覚えられなかったときも、すぐに何度も書き直す必要はありません。 別の日に、 「この漢字、どんな話を作ったっけ?」 と思い出してから、もう一度だけ書いてみましょう。  
 
 
ADHDタイプの子が漢字を覚えられないときは、書く回数を増やす前に、その子が興味を持てる入り口を探してみてください。 
 
 
漢字の形を見つけ、物語を作り、ゆっくり1回書く。この3ステップなら、苦手な漢字の勉強を、親子で発見を楽しむ時間に変えていけます。 
 
 
子どもが動けないとき、「やる気がない」「努力が足りない」と見えることがあります。しかし実際には、今の方法がその子の脳に合っていないだけかもしれません。 
 
 
漢字だけでなく、宿題や片づけ、朝の支度なども、その子が動きやすい方法に変えることで、親子のやり取りはラクになっていきます。 
 
 

よくある質問

 

Q1.ADHDの子は漢字を何回書けば覚えられますか?

A1:必要な回数は子どもによって異なります。回数を増やすほど覚えられるとは限りません。一度に何度も書かせるより、漢字の形や意味を確認して1回書き、別の日にもう一度思い出す方法を試してみましょう。
 

Q2.1回書いただけで覚えられないときはどうしたらよいですか?

 
A2:覚えていなくても、すぐに書き直しをさせなくて大丈夫です。「どんな形だった?」「どんな物語を作った?」と、漢字を見ずに思い出す時間を作ります。思い出せない場合は、再びお手本を見て、短時間で確認しましょう。
 

Q3.学校の宿題で何度も書くように指定されている場合は?

 
A3:学校の課題は必要な範囲で取り組みながら、家庭では書く前に形や意味を確認する時間を取り入れてみましょう。宿題の負担が大きい場合は、子どもの様子や家庭で行っている工夫を担任の先生に相談する方法もあります。
 

Q4.漢字の苦手さが強い場合はどうすればよいですか?

 
A4:漢字だけでなく、文字を写すことや読むことにも強い苦手さがある場合は、努力不足と決めつけず、学校の先生や専門機関に相談してみましょう。子どもに合った教材や学習方法、合理的な配慮を一緒に考えてもらえることがあります。
 
 
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執筆者:大島さくの
発達科学コミュニケーショントレーナ

 

長男は予定日より約2か月早い妊娠31週で生まれで、幼い頃は発達の遅れや子育ての困りごとに悩んできました。

 

発達科学コミュニケーションに出会い、親子の会話を変えたことで困りごとが大きく減少。

 

現在は自身の経験を活かし、早産で生まれた子どもの発達を専門に、子どもの自信と行動力を育てる関わり方をお伝えしています。

 
 

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