癇癪を起こす子どもに怒鳴ってしまい、自己嫌悪になっていませんか?子どもの癇癪はわがままではなく、声が届きにくい状態のサインかもしれません。止める前に知っておきたい対応を紹介します。
【目次】
監修者:吉野加容子
発達科学コミュニケーション創始者/パステル総研主宰/発達科学ラボ代表
脳科学をベースに、発達障害・発達グレーゾーンの子どもの発達支援を専門とする。広島大学教育学部卒業後、東京学芸大学大学院修士課程、慶應義塾大学大学院博士課程で学び、民間企業での脳科学研究、医療機関での発達支援、大学での教育に従事。
15年以上にわたり発達に悩む親子と向き合う中で、「子どもの発達を本当に伸ばすのは、家庭での365日の関わりである」という結論にたどり着く。
病院や学校だけでは支援が届きにくい発達グレーゾーンの子どもたちに対して、家庭で再現できる支援を確立するため、脳科学・教育学・心理学を融合した独自メソッド「発達科学コミュニケーション」を開発。
これまでに数多くの親子の変化を生み出し、“ママが変われば子どもが変わる”という発達支援の新しい当たり前を広げている。
著書に『発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室』『脳を育てる親の話し方』『脳が喜ぶ子育て』など。
1.癇癪を起こす子どもはわがまま?怒鳴る前に知っておきたいこと
「早く落ち着かせなきゃ」
「ちゃんとわからせなきゃ」
そう思って声をかけているのに、子どもはさらに怒る。
ママの声もだんだん大きくなり、最後は親子でぐったりしてしまう。
癇癪を起こす子どもに向き合う毎日の中で、こんな姿に悩んでいませんか?
・すぐ怒る
・泣き叫ぶ
・切り替えられない
・ゲームやYouTubeを終われない
・宿題や準備が進まない
・思い通りにならないと物に当たる
・きょうだいに手が出る
特に5歳を過ぎても癇癪が続いていたり、小学生になっても泣き叫ぶ子どもの姿があると、
「これってわがままなの?」
「しつけが足りなかったのかな」
「このまま大きくなったらどうしよう」
と不安になりますよね。
けれど、癇癪の最中、子どもはわざとママを困らせているとは限りません。
脳の中では「考える力」や「自分で止まる力」よりも、「感情の反応」が強くなり、ママの声を受け止めにくい状態になっていることがあります。
怒り、不安、悔しさなどの感情が一気にあふれると、ママの声を聞く力や、自分で行動を止める力が働きにくくなってしまうのです。
つまり、癇癪を起こしている子どもに言葉が届きにくいのは、ママの伝え方が悪いからでも、子どもがわざと話を聞かないからでもないんです。
感情があふれている最中に、正論で説明したり、理由を聞いたり、反省させようとしたりしても癇癪は止まりません。
ママは落ち着かせたい。だけど、子どもは受け止められない。
すると、ママの声が大きくなり、癇癪も長引いてしまう…。
こんな悪循環が起きてしまうんです。
注意欠陥多動性障害(ADHD)傾向がある子どもや、発達障害・グレーゾーンの子どもの癇癪でも、まず見る必要があるのは、「わがままかどうか」ではありません。
・今、この子は声が届く状態にいるのか
・それとも、落ち着ける状態へ戻る手助けが先なのか
癇癪を止めようとする前に、この順番を知ることが、親子で苦しくなる悪循環を抜け出す最初の一歩になります。
癇癪を止めようとするほど
親子バトルが長引く子へ
まず指示をひとつ減らして、
子どもの脳が安心して
動ける状態をつくる
↓↓

2.「そのうち落ち着くかな」と待つ前に知っておきたいこと
「男の子だし、大丈夫」
「大きくなったら落ち着くよ」
「今だけだよ」
そう言われると、もう少し様子を見ようかなと思うかもしれません。
もちろん、子どもの成長を待つ視点は大切です。
けれど、すぐ怒る、泣く、切り替えられない状態が毎日のように続いているなら、それは単なる一時的なものではなく、子どもの脳がストレスをためているサインです。
宿題、生活リズム、ゲーム、きょうだい喧嘩、学校で頑張った反動。
子どもは外で頑張っている分、おうちで小さなきっかけから崩れることがあります。
そしてママも、毎日その癇癪に巻き込まれていると、だんだん判断する力が削られていきます。
「怒鳴りたくないのに怒鳴ってしまう」
「落ち着かせたいだけなのに、私まで感情的になる」
「何が正しい対応なのか、もう分からない」
ここまでくると、必要なのはママがもっと我慢することではありません。
わが子に合った関わり方と、声が届きやすくなる順番を知ることです。
3.癇癪に巻き込まれていた親子に起きた変化
私自身も、かつては子どもの癇癪に向き合うたびに、何度も自己嫌悪になっていたママの一人でした。
落ち着かせたいだけなのに、結局巻き込まれて声を荒げてしまう。
ですが、もっと強く叱ることでも、かんしゃくに耐え続けることでもない関わり方が必要だったのだと、今ならわかります。
その経験があるからこそ、今は講師として、癇癪に悩む親子が関わり方の順番を整えることで少しずつ変わっていく姿に出会っています。
◆親子バトルになっていた7歳の男の子
宿題や学校の準備に取りかかれず親子バトルになっていた7歳の男の子がいました。
帰ってきたらランドセルを放り投げて、ゲームやYouTube三昧。
注意をすると癇癪を起こし、ママもイライラしてケンカになっていたそうです。
けれど、講座で関わり方を学び実践していく中で、癇癪を起こすことがなくなり、順番を待てるようになったり、「まいっか」ができるようになったりしたとママは話してくれました。
帰ってきてランドセルや上着を片付けるようになり、自分でYouTubeやゲームの時間を決めて、終わらせようとする姿も出てきました。
◆大声で叫び、物やママに八つ当たりしていた5歳の女の子
できないことや気に入らないことがあると大声で叫び、パニックになると物に八つ当たりしたり、友達やママに手が出ることもあった5歳の女の子のケースもあります。
講座を受けたママは、「あれ、最近かんしゃく起こしてないな」と受講を始めて1ヶ月くらいで気づいたそうです。
毎日のようにイライラしていた娘さんもママ自身も、穏やかに過ごすことができるようになり、思い通りにならない時に大声で叫んだり八つ当たりするのではなく、「嫌だ!」と言葉で伝える姿も出てきました。
これはたった一度の声かけで起きた変化ではありません。
ママがわが子の状態を知り、関わり方の順番を整え、毎日の中で実践を続けてきたからこそ、少しずつ育ってきた力です。
だから私は、癇癪を起こす子どもを前にして「もっと厳しく叱らなきゃ」と一人で抱え込んでいるママに、まず知ってほしいのです。
癇癪は、ママがもっと我慢すればいいものでも、子どもをもっと強く叱れば解決するものでもありません。
声が届きやすくなる順番を知ることで、親子の流れは変わり始めます。
4.今すぐできる!「止める」より先に意識したいこととは?
癇癪を起こす子どもへの対応で、まず意識したい軸は1つです。
言葉を重ねる前に、子どもが落ち着ける状態へ戻すこと。
そのために、次の3つの順番で考えてみてください。
◆① 危ない時は、まず安全を確保する
手が出る、物を投げる、きょうだいに向かっていくなど危険がある場合は、理由を聞く前に安全の確保が最優先です。
距離をとる。危ない物をよける。きょうだいを離す。
この時点で、反省させようとしなくて大丈夫です。
◆② 癇癪の最中は、説明を重ねすぎない
怒っている時に、
「なんでそんなことするの?」
「ちゃんと考えなさい」
「謝りなさい」
と伝えても、子どもの脳が受け止められる状態ではないことがあります。
そんな時は、言葉を増やすよりも、
「落ち着いたらで大丈夫だよ」
「ここで待ってるね」
と短く伝え、落ち着ける状態へ戻る時間をつくります。
◆③ 落ち着いてから、できた行動を肯定して次の選択肢を出す
落ち着いた後に、
「自分で落ち着けたね」
「言葉で教えてくれたね」
と、できた行動を肯定します。
そのうえで、
「1問だけやる?それとも音読にする?」
「今度は“やめて”って言う?それともママに教えてくれる?」
と、子どもが選べる形で次の行動につなげます。
大切なのは、癇癪を無理に止めようとしてママまで巻き込まれてしまうことではありません。
子どもが落ち着ける状態へ戻れるように、順番を変えて関わることです。
お子さんが今どこでつまずいているのかによって、必要な関わり方は変わります。
「うちの子の場合は、どこから整えればいいのかな?」
そう感じたら、一人で判断し続けなくて大丈夫です。
まずは、癇癪を起こす子どもを「困った子」と見る前に、「コントロール力が育ち途中の子」として見直すこと。
そこから、親子の毎日は少しずつ変わり始めます。
▼癇癪に振り回されない対応を動画で解説
よくある質問(FAQ)
Q1.癇癪を起こす子どもはわがままなのでしょうか?
A1.癇癪を起こす子どもは、必ずしもわがままでママを困らせているわけではありません。怒りや不安、悔しさなどの感情が一気にあふれ、「考える力」や「自分で止まる力」が働きにくくなっている状態かもしれません。まずは、わがままかどうかを判断する前に、声が届く状態にいるのかを見ることが大切です。
Q2.子どもの癇癪に怒鳴ってしまうときはどうしたらいいですか?
A2.怒鳴ってしまうのは、ママが子どもを落ち着かせたいと必死に関わっているからこそ起きていることもあります。癇癪の最中は、正論で説明したり理由を聞いたりしても届きにくい状態です。まずは「止める」より先に、子どもが落ち着ける状態へ戻る手助けをする順番を知ることが、親子で苦しくなる流れを変える一歩になります。
Q3.ADHDや発達障害の子どもの癇癪にはどう対応すればいいですか?
A3.ADHD傾向や発達障害・グレーゾーンの子どもの癇癪でも、最初に見るのは「わがままかどうか」ではありません。今、声が届く状態なのか、落ち着ける状態へ戻る手助けが先なのかを見ていくことが大切です。お子さんによって必要な関わり方は違うため、一人で判断し続けず、わが子に合った順番を知ることが入口になります。
執筆者:岡野ゆか
発達科学コミュニケーショントレーナー
ADHD+ASD傾向もある長男の癇癪に悩み、スーパーに行くことすら不安だった元・かんしゃくっ子ママ。
発達科学コミュニケーションに出会い、子どもを抑え込むのではなく、脳の成長段階に合った関わり方へ変えたことで、息子の癇癪は少しずつ落ち着いていきました。
今は5歳を過ぎても癇癪が続く子を育てるママへ、家庭でセルフコントロール力を育てる声かけと関わり方を伝えています。
癇癪に巻き込まれず、子どもに声が届くヒントをお届けしています。