集団生活が苦手な発達障害・グレーゾーンのお子さん、その理由、ソーシャルスキルにあるかもしれません。発達の専門家ではなく、お母さん自身がやるおうちソーシャルスキルトレーニングのメリットを知って、ぜひチャレンジしてみませんか? |
【目次】
1.集団生活が苦手な発達凸凹キッズ、ソーシャルスキルを伸ばすと生きやすくなるんです。
2.専門家がやるんじゃないの!?ソーシャルスキルトレーニングを「おうちで」お母さんがやる理由とは?
①マンツーマンでやるから失敗しない!
②わが子の専門家であるお母さんだからできる、オーダーメイドのトレーニング!
③工夫次第で毎日トレーニングできちゃう!
3.私がやるっきゃない!と腕まくりしたお母さんに、おうちトレーニングの極意、教えます!
1.集団生活が苦手な発達凸凹キッズ、ソーシャルスキルを伸ばすと生きやすくなるんです。
親や先生など、大人との1対1の会話ではさほど問題を感じない。 でも、園や学校など、同世代の子どもたちが集まる集団生活になると、急に困りごとが出てきてしまう。 これって、発達障害・グレーゾーンのお子さんあるあるではないでしょうか?
その原因として最も重要なのが、ソーシャルスキルの問題だといわれています。
ソーシャルスキルとは、他人と上手に関わるための技術やコツのこと。人が社会の中で円滑な人間関係を築くために、土台となるスキルです。
園や学校、家庭でのルールを理解しそれを守ることができる。
自分の周りで何が起きているかを理解し、適切な行動をとることができる。
他のメンバーとコミュニケーションをとりながらうまくやっていくことができる。
このような、集団生活に必要なソーシャルスキルが育っていないと、対人関係のトラブルに発展したり、将来社会に出て自立していくことが難しくなったりと、子どもの将来にまで大きな影響を及ぼしてしまうことだってあるんです。
ソーシャルスキルがうまく育っていないお子さんは、集団生活をしていく過程で様々なつまずきを感じてしまいます。
友達の気持ちを想像できず、うまくやりとりできないので親しい友達がなかなかできない。
ゲームのルールが理解できず、負けたらかんしゃくを起こす。
勝ちにこだわりすぎることで、仲間外れにされてしまう。
自分の好きなことの話を延々と続けてしまい、楽しく会話することができない。
このようなちょっとしたつまずきが、子どもの自己肯定感を下げ、不登校・引きこもりなどの二次障害に発展していくこともあるのです。
すなわち、ソーシャルスキルを伸ばすことが、集団生活が苦手な発達障害・グレーゾーンの子どもが生きやすくなるためのカギになるという訳なんです。
じゃあどうやって伸ばせばいいか?次の項で解説していきますね。
2.専門家がやるんじゃないの!?ソーシャルスキルトレーニングを「おうちで」「お母さんが」やる理由とは?
確かに、うちの子にはソーシャルスキルが足りないかも、じゃあ鍛えることができるのかな?と思ったあなた。ずばり、ソーシャルスキルは練習することで伸ばすことができるんです。それがソーシャルスキルトレーニング(SST)です。
ソーシャルスキルは、一般的には日常生活の中で自然に身につけていくものであるため、お子さんがうまく集団生活を送れないことを、「なんでうちの子だけできないんだろう」と考え、悩んでしまうお母さんもいらっしゃるでしょう。
でも、発達障害・グレーゾーンの子どもにソーシャルスキルが育っていないことが多いのは、特性の影響でソーシャルスキルを経験する機会が少なく、必要なスキルがまだ身についていない、あるいはスキルを間違って覚えてしまっているだけ、という風にもとらえられます。
まだ知らないなら学べばいいし、間違っているなら正せばいい。その方法がSSTなのです。
だったらSSTやってみたい、トレーニングっていうくらいだから、専門の施設で専門家がやってくれるんでしょ、って思いましたか?
確かに、就学前の療育や、放課後等デイサービス、通級指導教室や支援学級で実施されることが多いSSTですが、実は、おうちで、お母さんがやることだってできるんです。そして、このおうちSSTには、専門施設でやるSSTにはないメリットがあるのです。
◆①マンツーマンでやるから失敗しない!
発達障害・グレーゾーンのお子さんとのトレーニングで一番大切なのは失敗しないこと。成功体験を通して、行動と、成功してうれしいというポジティブな感情がリンクして行動が定着していきます。
おうちSSTだと、お母さんのさじ加減ひとつでトレーニングを成功に導くことができますよね。
療育や通級指導教室でのSSTは、集団で行うことが多いので、お子さん一人がスキルを磨いても、他の子どもたちの状態によっては失敗体験につながることもあります。
その点、おうちSSTはお母さんと1対1でやるため、他人のコンディションで結果が左右されることもありません。子どもは安心して自分のスキルを伸ばすことができるのです。
◆②わが子専門家であるお母さんだからできる、オーダーメイドのトレーニング!
ソーシャルスキルには、さまざまな種類があります。
人とのコミュニケーションスキルだけでなく、自分のことを知ること、問題が起こったとき解決法を考え実行すること、自分の身の回りを整えること、ストレス解消法を考えることなどもソーシャルスキルの一部です。
例えば、同じ診断を持つ、同じ年齢のお子さんであっても、必要なソーシャルスキルは異なりますし、自閉症スペクトラム症のお子さんが全員同じスキルを必要としているわけではないですよね。
わが子の特性や得意・苦手を一番わかっている、わが子専門家であるお母さんが、必要なスキルをオーダーメイドできちゃうことは、おうちSSTのメリットといえますね。
◆③工夫次第で毎日トレーニングできちゃう!
SSTは、学ぶだけでなく、日々の生活の中で繰り返しやってみることが最大のポイントです。療育や通級指導教室などは通う頻度も少なく、たまに先生とやってみる、というSSTではなかなか定着してくれません。
それに比べて、おうちSSTではお母さんと家でできるため、場合によっては毎日取り組むことも可能です。
普段の生活の中でお母さん・お子さんなりに、アレンジしながらソーシャルスキルを伸ばしていく経験を取り入れていけることが、おうちSSTの醍醐味ともいえますね。
3.私がやるっきゃない!と腕まくりしたお母さんに、おうちトレーニングの極意、教えます!
どうでしょう、だったらおうちSSTやってみよう!という気持ちになってきたでしょうか?そんなお母さんのために、おうちSSTの進め方を教えちゃいます。
SSTでは
①ソーシャルスキルを知識として教える
②お母さんとの間でロールプレイをやってみる
③日常生活で使う機会を作って定着させる
というステップを踏んでいきます。
①の方法としては、お母さんが言葉で説明してもよいのですが、視覚優位なお子さんには、動画教材を利用してもよいでしょう。教材としては、NHKで以前放送していた「スマイル」という番組が参考になります。 (※現在はNHKのHPで動画を見ることができます:https://www.nhk.or.jp/tokushi/smile/)
また、ソーシャルスキルをコミック仕立てで紹介する「よのなかのルール」「こういうときどうするんだっけ」「学校では教えてくれない大切なこと」シリーズもおすすめです。
②のロールプレイですが、絵本やコミックを子どもと一緒に読んでみるのが一番簡単な方法です。できあがったものを読むだけなので、子どもが失敗することもなく、不安の強いお子さんでも安心してやることができますね。
アドリブが得意なお子さんの場合は、「あなたならどうする?」と声かけしてお子さんの意見を聞いてみるのもよい方法です。ノリノリでやってくれたら、しっかりほめてあげましょう。
そして、③の定着がSSTのキモになる部分。②でやった内容を、日常生活の中で使う機会を作ってあげてください。あいさつをする、順番を待つ、ものの貸し借りをする、困ったときに助けを求める、など、おうちの中でやりやすい項目に絞るのが成功のコツです。
ソーシャルスキルは、たくさんやればやるほどよい、という性質のものではありません。
「今からトレーニングするよ」と言って構えて練習をしたり、嫌がること・苦手な部分をむりやり、繰り返しやるなどの楽しくないトレーニングではお子さんも発達してくれません。まずは自然な形で、楽しいこと、好きなことから少しずつ始めてみましょう。
最後に、おうちSSTの目的は、家でのSSTがリハーサルの役割を果たすことです。
集団生活の中でソーシャルスキルを実行するとき、「あれ、これ前にお母さんとやったやつだ!」と思えればしめたものです。外での本番に備えておうちでリハーサルを経験させるつもりでSSTに取り組んでみてくださいね。
でも、おうちSSTって難しそう、アレンジなんてできないよ、と思ったみなさんに朗報です!
今回パステル総研では、発達障害・グレーゾーンのお子さんと、楽しみながらおうちSSTを実施できる教材を作成しました。
それぞれの年齢で必要なソーシャルスキルを、おうちでトレーニングできちゃう教材になっていますので、ぜひダウンロードしておうちSSTを体験してみてくださいね。
SSTに必要な親子のコミュニケーションを増やす方法、たくさん紹介しています。
▼ご登録はこちらから
病院・療育センターで聞けなかったWISCのアレコレ、インスタグラムで解説中!▼
この投稿をInstagramで見る
執筆者:森博子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)