お子さんをご褒美で誘導したことはありますか?実は、発達障害・ADHDの子どもは脳の「報酬系」に働きかけるとやる気を引き出すことができるので、ご褒美を使うのも効果的なんです!そこで、ご褒美を使うときに押さえておきたいポイントをお伝えします。 |
【目次】
1.発達障害の子どものやる気を引き出すための「ご褒美」は良くないの?
2.ADHDタイプの脳の特性からみた「ご褒美」とやる気の関係とは?
◆脳の「報酬系」機能とは?
◆「アンダーマイニング効果」とは?
3.子どもにとって一番の「ご褒美」は、お母さんの○○です!
1.発達障害の子どものやる気を引き出すための「ご褒美」は良くないの?
子どもがなかなか宿題をやる気にならないから、
「宿題やったら、好きなアイス買いに行こう!」
などと、ご褒美で誘導してみたことはありませんか?
でも、子育ての専門書などでは、
「子どもにご褒美を使うのは良くない」
「ご褒美を設定すると、ご褒美のために動くようになってしまう」
など、ご褒美に対して否定的な内容も多く見られます。
さらに、「ご褒美を与えるとやる気を損なう(アンダーマイニング効果)」という研究結果も聞かれたことがあるかもしれません。
ご褒美を使うと子どもは動き出すけれど、
「ご褒美が無かったら動かなくなってしまうのでは?」
「ご褒美で誘導するのは良くないのでは?」
と思われているお母さんもいらっしゃるかもしれません。
発達障害の子どもは、興味のないことに取り組むのが苦手です。
そんな子どもたちのやる気を引き出すための「ご褒美」は有効なのか?
子どもの脳の発達の面から「ご褒美」と「やる気」の関係についてお伝えします!
2.ADHDタイプの脳の特性からみた「ご褒美」とやる気の関係とは?
今回特に注目したいのは、注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもたちについてです。
◆脳の「報酬系」機能とは?
発達障害の中でも、ADHDの子どもは、脳の「報酬系」機能に特性があります。
ADHDタイプの脳は、長期的な利益のために我慢をする、報酬系と呼ばれる機能が未熟なことが分かっています。
この機能が未熟だと、興味のないものには頭が働かなくなって、行動しにくくなります。
その反面、興味や関心があることには非常に意欲的なので、
・宿題をやらずにゲームばかりしている
・お菓子ばかり食べて食事では嫌いなものを残す
といった行動が起こりやすくなります。
たとえ本人が、「勉強は大切」とか「色々な食品を食べると健康に良い」と分かっていたとしても、それより興味のあるものが目の前にあったら、そちらを優先して動いてしまうのです。
そして、興味のあることしかやらないように見えるので、「わがままな子」というレッテルを貼られてしまったりします。
お子さんが興味のないことをやりたがらないのは、わがままや努力不足だからではないのです!
◆「アンダーマイニング効果」とは?
では、先ほどの、ご褒美がやる気を奪ってしまうというアンダーマイニング効果は、発達障害ADHDタイプの子どもにも当てはまるのでしょうか。
アンダーマイニング効果を簡単に説明すると、
① やりがいを感じて自分から行っていた行動にご褒美を与えられた結果
↓
② その行為の目的が「やりがい」から「ご褒美」に変わってしまい
↓
③ ご褒美がないとやる気が下がる
ということです。
でも、ご褒美がやる気を下げる結果になるには条件がいくつかあり、そのひとつが「ご褒美がなくても子どもが面白いと興味をもてる活動」をしている時です。
その活動は、例えばゲームなど、お子さんが自分から喜んでしていることです。
ここで質問です。
お母さんがご褒美で誘導してまでやらせたいと思うことは、お子さん本人が自分から喜んでやる行動でしょうか?
宿題にしても片付けにしても、まず間違いなくお子さん本人は、「面白くない」と思うから行動していないわけです。
となると、お子さんが嫌だと思っていることにご褒美を使っても、アンダーマイニング効果は起こらないということになります。
それが分かれば、ご褒美を使うことを必要以上に心配しなくてすみますね。
ちなみに、発達障害ADHDタイプのお子さんが好きなことや興味を持って取り組んでいることでも、行動した後にたまたま得られた報酬ならアンダーマイニング効果は起こらないそうです。
例えば、子どもが好きな絵を描いているときに、家にたまたま親戚が来たとしましょう。
「わあ、素敵な絵が描けたね!じゃあ、ご褒美にお小遣いあげるよ」となったとしても、絵を描くことに対してやる気がなくなるということはないのです。
むしろ、褒められたことが嬉しくてさらに頑張る、なんていうこともあるかもしれませんね。
発達障害ADHDタイプのお子さんに「ご褒美はダメ」と決めつけるのではなく、うまくご褒美を使うことで脳を刺激し、お子さんの行動を変化させていきましょう!
3.子どもにとって一番の「ご褒美」は、お母さんの○○です!
発達障害ADHDタイプで脳の報酬系機能が未熟なお子さんには、「ご褒美を積極的に使う」のがおススメです。
例えばどんなご褒美があるかというと、
・おやつ
・お金
・人からの感謝
・ほめ言葉
など色々なものが、ご褒美=脳にとっての報酬になります。
一番のおススメは、お母さんの肯定やほめ言葉です!お母さんに見てもらえること、肯定してもらえることは子どもにとってはとても嬉しいことなんです。
お母さんがお子さんに肯定的な声かけを続けると、お子さんと良いコミュニケーションを取れるようになり、行動も驚くほど変わるんです。
そうと分かったらADHDタイプのお子さんには、脳の報酬となるほめ言葉を沢山かけてあげたいですよね。
では、お子さんの「ほめポイント」を増やすためには、どんなときに褒めるのがいいと思いますか?
簡単にできてオススメなのは、お子さんが何かをやり始めたときにほめることです!
何かを始めるときは一番エネルギーを使うので、脳に負荷がかかります。
そのタイミングでほめ言葉をかけてあげれば、肯定されることが脳の報酬系に作用するので、大変なことも頑張ることができます。
「上手にできたらほめよう」と思っていても、ADHDタイプは興味がすぐに移り変わってしまいますから、ほめるタイミングを逃してしまうかもしれません。
ぜひ、お子さんが何かに取り組み始めるタイミングを逃さず、たくさんほめて肯定してあげてくださいね!
発達障害の特性でワーキングメモリが低い場合、家事など日常生活のスキルにも難しさを感じたりします。
好きなことしかやらなかったため、大人になってから自立できないケースもあります。
ADHDタイプは、目の前に報酬がある方が適切な行動をしやすくなります。
ご褒美を上手に使って、子どものうちに生活に必要なスキルを訓練しておくと将来も安心ですね!
どんな場面ならご褒美を使っても大丈夫なのかという知識をお母さんが持っていれば、「ご褒美は積極的に使う」という選択ができます。
何が報酬となるのかはその子によって違うと思いますので、お子さんの好き嫌いをよく観察してみてくださいね。
お子さんにとってはお金や物よりも、お母さんからの誉め言葉が何より嬉しいご褒美です。
お子さんの褒めポイントを見つけて、発達障害ADHDタイプに効果的な「ご褒美作戦」をぜひ使ってみてくださいね!
発達障害ADHDタイプのやる気を引き出す効果的な方法を多数配信しています。
執筆者:三浦知花
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)