スーパーマーケットでのお買い物、安心してお子さんを連れて行けますか?カートで暴走する、商品を触る、走り去る…恐怖の時間はもう終わりにしたいですね。発達障害の特性があるとなぜ叱っても効果がないのかを知り、ADHDの脳に届く有効な対策を手に入れてください。
【目次】
1.発達障害の子どもを連れてのお買い物、安心してできますか?
2.泣きながら叱ることしかできなかった、悲しいお買い物の記憶
3.「じっとして」は「汗止めて」と同じ難易度
4.平和なお買い物のための、ADHDの脳に届く事前準備
① 子どもが我にかえるための下地作り
② 戦略的ご褒美で成功体験に昇華
1.発達障害の子どもを連れてのお買い物、安心してできますか?
今日のお夕飯は何にしますか?お献立はもう決まりましたか?
先に献立を決めて2週間分の食材を注文しているしっかりママ、週末に1週間分の作り置きをしている凄腕ママ、心から尊敬します。
今、私はその日の気分で献立を決めたい、ゆるゆる母です。
「今?前は違ったの?」
はい、違いました。その日の気分で作ろうとすると、足りない食材が出てきたりします。そうするとお買い物に行く必要があります。
少し前まで、私は息子をおつかいに連れて行くことができなかったので、そんな気まぐれは許されなかったのです。
お子さんが未就学や低学年であれば、お留守番をさせるのが心配なご家庭も多いと思います。
でも夏休みや冬休みなど、長期のお休みに入ると、ママのひとり時間は激減。どうしたってお買い物に付き合ってもらう場面が増えます。
もし今、かつての私と同じような悩みをお持ちのママがいらしたら、ぜひ参考になさってください。
2.泣きながら叱ることしかできなかった、悲しいお買い物の記憶
注意欠陥多動性障害(ADHD)の特性を持つ息子が年長の頃のことをお話しします。
何にでも興味を示し、観察して触って、そこから得たひらめきを形にするのが得意でした。
この力が工作などの創造に発揮されるとき、彼は最強アーティストとなり、賞賛されます。
一方で困ったことに、スーパーマーケットでもこの好奇心は変わらず発揮されてしまうのです。
気になるものが目に入ればカートごと突進して行き、ペットボトルや箱に入ったお菓子ならまだしも、肉、野菜、パン…まるで、触感の違いを確かめているかのように触りまくります。
暴走させないように片手でカートを抱えこみ、とにかく触らせないように子どもの手首(振りほどけないように)を握り、全速力で商品をカゴに入れたら、最後の難関、お会計です。
両手を使わなくてはお財布を扱えないので、子どもがバーコードリーダを触らないように、また逃げ出さないように、足の間に胴体を挟みます。
それでも会計途中で逃走して、折悪しく開いたエレベータに乗り込んだときは、とっさに、人質としてお財布を小銭トレイに置いて追いかけました。
行列ができているレジに戻って、店員さんにも後ろのお客さんにも謝りながら精算を済ませた後は、涙が出ました。
なんで私はこんなにダメ母なんだろう…他の子はお母さんの後ろをおとなしくついて歩いているのに。
この頃まだ「発達障害」の存在を知らなかった私は、息子を叱ることしかできませんでした。
そして、工作の時と同じことをしているだけなのに、褒められたり叱られたりして混乱する息子は、かんしゃくを起こして泣き叫ぶことしかできませんでした。
あれから数年経った今思い出しても、息子に申し訳なくて胸がぎゅっとなります。
3.「じっとして」は「汗止めて」と同じ難易度
発達障害ADHDの特性を持つ子どもの脳は、退屈が嫌い。常に刺激を必要としています。
刺激というと、ジェットコースターやホラー映画をイメージしてしまうかもしれませんが、そうではありません。
何もしていない状態が耐えられないということです。
お買い物なら、ただぼんやりとママの横を歩くなんて、耐えられないのです。
加えて視覚優位、つまり、耳よりも目から入った情報が優先的に処理される傾向があります。
スーパーマーケットの色彩、どうでしょうか。色とりどりに並べられた商品の間にはレシピ動画も流れていたりしますね。次から次へと吸い寄せられるのは当然です。
そして目からの情報過多で大忙しですから、残念ながらママの声は脳に届きません。
これらの特性は、子どもが小さければ小さいほど、自分でコントロールすることが難しいのです。
たとえるなら、「じっとしてなさい」は「汗を止めなさい」と言われているのと同じくらい難しいと思ってください。
どうでしょう、お子さんのこと叱れますか?
4.平和なお買い物のための、ADHDの脳に届く事前準備
発達障害ADHDの特性をもつ子どもの脳がどんな動きをしているのかイメージできたところで、ではどんなアプローチをしたら平和なお買い物ができるのか、お伝えします。
◆①我に返るための下地作り
スーパーマーケットという、視覚的な刺激が多い環境で長々と叱っても、子どもの脳には届きません。
ここで必要なのは、お説教じゃなくて、ただ「我に返ってもらうこと」それだけです。
あらかじめ、どんな行動がカッコいいか、どんな行動が好ましくないか、話し合って確認しておきます。
「このクリームパン、フニフニで柔らかくて美味しそうね〜。でも、食べるときに誰かの指の跡がついてたらどう思う?」
「お会計中にお母さんから離れちゃうと、探しに行かないといけないから困っちゃうんだ。前の人のお会計がなかなか終わらないと、後ろに並んでるお客さんはどう思うかな?」
おやつを食べながら、または就寝前のお話タイムなど、落ち着いているときなら、息子はちゃんと望ましい回答をします。
頭では、何が正しい行動かも分かっているんです。
衝動的な身体の動きをコントロールすることが難しいだけなのです。
事前準備の仕上げとして、お店に入る直前に、もう一度最終確認をします。
「お店の中では?」「歩く!」
「お店の商品は?」「見るだけ!」
「声の大きさは?」「お母さんにだけ聞こえる声!」
そしてもうひとつ。私も息子にオトコマエ宣言をします。
「15分で店を出る!協力してほしい。」
それでも自由な行動をしてしまう時は、「頼む!15分チャレンジが…!」と言えば、「あ、そうだった!」と我に返ってくれます。
◆②戦略的ご褒美で成功体験に昇華
静かに歩けていたら、その都度ほめます。できていないことではなく、できていることに注目して、その行動を強化します。
そして最後まで上手にお付き合いしてくれたら、ご褒美に小さな駄菓子も買ってあげます。
このご褒美ひとつで、成功体験としてインプットすることができるからです。
うまくいったことは脳が繰り返そうとしますから、次もルールを守ろうとします。
ご褒美がないと、できない子どもになりそうですか?
心配ご無用です。ほめ言葉やご褒美は、好ましい行動を形成するまでの戦略です。
自信がつけば、ご褒美がなくても満足感が生まれ、自ら適切な行動が取れるようになります。
この点は、宿題や朝の支度などを定着させる過程で、息子が何度も実証してきてくれているので、自信を持ってお伝えできます。
お買い物問題でも、駄菓子の累計が1000円になる頃には、手首を握りしめることもなくなっていました。
もちろん、子どもの機嫌や疲労の度合いによって、そううまくはいかない日もあります。
そんな日はさっと撤収してお夕飯はレトルト利用。手抜きしましょ!
ちなみに、小学3年生になった息子は、相変わらずショッピングカートが大好きで、どんなに少量でもカートを引いてついて来ます。
暴走して人にぶつかったりすることはありません。必要なものだけを手に取ります。
私は安心して「牛乳2本カゴに入れて来てね、卵売り場にいるね」が、できます。
まずは、「ちゃんとできた!」をたくさん経験させてあげてくださいね。 くれぐれも、お買い物メモはお忘れなく♪