不登校の子が一日中ゲームやYouTubeばかり見ていると、「このままで大丈夫?」と心配になりますよね。実は、関わり方を変えることで、おうち時間は考える力、伝える力、動き出す力を育てる時間に変えられます。子どもの小さな「できた」を増やす5つの声かけをお伝えします。
1.「このままで大丈夫?」不登校の息子とのおうち時間が心配でした
2.不登校のおうち時間は子どもの力を育てる時間に変えられる
3.不登校の子の動き出す力を育てる5つの声かけ
監修者:吉野加容子
発達科学コミュニケーション創始者/パステル総研主宰/発達科学ラボ代表
脳科学をベースに、発達障害・発達グレーゾーンの子どもの発達支援を専門とする。広島大学教育学部卒業後、東京学芸大学大学院修士課程、慶應義塾大学大学院博士課程で学び、民間企業での脳科学研究、医療機関での発達支援、大学での教育に従事。
15年以上にわたり発達に悩む親子と向き合う中で、「子どもの発達を本当に伸ばすのは、家庭での365日の関わりである」という結論にたどり着く。
病院や学校だけでは支援が届きにくい発達グレーゾーンの子どもたちに対して、家庭で再現できる支援を確立するため、脳科学・教育学・心理学を融合した独自メソッド「発達科学コミュニケーション」を開発。
これまでに数多くの親子の変化を生み出し、“ママが変われば子どもが変わる”という発達支援の新しい当たり前を広げている。
著書に『発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室』『脳を育てる親の話し方』『脳が喜ぶ子育て』など。
1.「このままで大丈夫?」不登校の息子とのおうち時間が心配でした
私の息子は、注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉症スペクトラム(ASD)のグレーゾーンです。 小学1年生の入学式から、早速登校しぶりが始まりました。
そして、小学3年生の夏休み明けには、
「学校潰れろ!」
と叫び、暴言・暴力・癇癪がひどくなりました。
学校に行けなくなった息子は無気力になり、家では一日中ゲームをして過ごしていました。
そんな息子を見ながら、私は、
「勉強が遅れたらどうしよう」
「ゲームばかりで、本当に動き出せるのかな」
「このまま学校に戻れなかったら、将来はどうなるんだろう」
と不安でいっぱいでした。どうしたら学校に戻れるのかばかりを考え、気づけば私の人生まで止めてしまっていたのです。
不登校になったのだから、まずは休ませた方がいい。 そう思っても、一日中ゲームをしている姿を見ると、「この過ごし方で本当に大丈夫なの?」と焦ってしまいます。
けれど、発達科学コミュニケーションに出会い、脳の発達という視点で息子を見るようになってから、おうち時間への見方が変わりました。
学校に行けない時間は、未来が止まっている時間ではありません。 関わり方を変えれば、おうち時間は子どもの考える力、伝える力、動き出す力を育てる時間に変えられるのです。
2.不登校のおうち時間は子どもの力を育てる時間に変えられる
不登校の子どもを前にすると、「何かさせた方がいいのでは」と思いますよね。 けれど、いきなり勉強をさせることより先に必要なのは、子どもの脳が安心して動ける状態になることです。
スマートフォンやパソコンも、たくさんのアプリを開きすぎるとフリーズしてしまいます。 そのときに「もっと動いて!」と何度もボタンを押しても、余計に動かなくなってしまうことがありますよね。
子どもの脳も同じです。
学校で疲れすぎたり、失敗や怒られる経験が重なったり、「自分はダメだ」と思うことが増えたりすると、脳はフリーズしやすくなります。 不安でいっぱいのとき、脳は考えることよりも、自分を守ることを優先します。
その状態で、
「勉強しなさい」
「そろそろ学校に行ったら?」
「ゲームばかりやめなさい」
と働きかけても、子どもはなかなか動き出せません。
動かない子を動かそうとする前に、まずは動ける状態に戻してあげることが必要です。 子どもは、安心しているときに学びやすくなります。
小さな成功体験があると、「またやってみようかな」と思いやすくなります。 大人との会話の中では、考える力や伝える力も育っていきます。
ここでいう「子どもの力を育てる」とは、テストで100点を取れるようにすることだけではありません。
自分で考える
気持ちを言葉にする
いくつかの中から選ぶ
失敗しても切り替える
「やってみようかな」と動き出す
こうした力を、おうちで少しずつ育てていくことです。 大きな成功を目指す必要はありません。
・朝、顔を洗えた
・ゲームを一度やめられた
・外出の予定を一緒に立てられた
そんな小さな「できた」が、子どもの脳に「自分にもできるかも」という自信を取り戻すスイッチになります。
3. 不登校の子の動き出す力を育てる5つの声かけ
不登校中のおうち時間には、子どもの力を育てる場面がたくさんあります。 特別な教材を用意しなくても大丈夫です。
ゲームやYouTube、お手伝い、好きなことなど、毎日の生活を使ってできる5つの声かけをご紹介します。
◆声かけ① ゲームを「考える力」に変える
ゲームは悪いものだと決めつけず、子どもがどんな力を使っているのかに目を向けてみましょう。 ゲームの中には、
「どうしたら勝てるかな」
「次はどの作戦にしよう」
「何がうまくいかなかったのかな」
と考える場面がたくさんあります。 これは、考える力、試す力、振り返る力を使っているということです。 ゲーム中に注意する前に、まずは、
「今、作戦を考えているんだね」
と、子どもがしていることをそのまま言葉にしてみましょう。 ゲームが終わったあとには、
「今の、どこが難しかった?」
「次はどうする作戦?」
「さっきよりうまくいったところはある?」
と聞くことで、子どもが自分の行動を振り返るきっかけを作れます。
◆声かけ② YouTubeを「伝える力」に変える
YouTubeばかり見ている姿は、受け身に見えるかもしれません。 けれど、見たものを言葉にすることで、伝える力を育てることができます。
・見たことを思い出す
・大事なところを選ぶ
・順番に話す
・相手にわかるように説明する
これは、国語の学習にもつながる力です。 YouTubeを見終わったあとに、
「どんな動画だったの?」
「どこが面白かった?」
「ママにも分かるように教えて」
と聞いてみましょう。 いくつも質問する必要はありません。
「どこが一番面白かった?」 と、一つだけ聞くところから始めてみてください。
◆声かけ③ 日常会話で「自分で決める力」を育てる
子どもが動かないと、ママが先回りして決めたくなることがありますよね。 けれど、大人がすべて決めてしまうと、子どもが自分で考える機会が少なくなってしまいます。
大切なのは、子どもが自分で考えられる余白を作ることです。
ただし、「どうするの?」と聞かれても、考えることが苦手な子には答えにくいことがあります。 その場合は、選びやすいように選択肢を小さくしてみましょう。
「先にお風呂にする?ごはんにする?」
「明日の朝、何から始めたら動けそう?」
「5分だけならできそう?それとも10分にする?」
このように、子どもが選べる形で聞くことで、「自分で決められた」という小さな成功体験を増やせます。
◆声かけ④ お手伝いを「動く力」に変える
不登校の子にとって、いきなり勉強を始めることはハードルが高い場合があります。 そんなときは、短い時間で終わるお手伝いがおすすめです。
・お皿を並べる
・洗濯物をたたむ
・料理を一緒にする
こうした行動では、順番を考える力、手を動かす力、最後までやり切る力を使います。 最初からたくさん頼む必要はありません。
「お皿を3枚だけお願い」 など、30秒ほどで終わるお手伝いから始めてみましょう。 できたときは、
「できたね」
「助かったよ」
「ここまでできたね」
と、できたことをそのまま伝えます。 子どもの脳に「自分にもできた」という経験を残すことが大切です。
◆声かけ⑤ 好きなことを「動き出す力」につなげる
好きなことばかりしていると、「苦手なことから逃げているだけでは?」と不安になりますよね。けれど、好きなことには、子どもの脳を動かす力があります。
・好きだから、見ることができる
・調べることができる
・話すことができる
・もう一度やってみることができる
この「好き」を入り口にすると、止まっていた子どもも動きやすくなります。
「それ、誰かに説明するとしたら、どう言う?」
「それに似た場所に行ってみたい?」
「それを使って、何か作れそう?」
と、次の行動につながる声かけをしてみましょう。 何を聞けばよいか迷ったときは、 「それ、もう少し教えて」 の一言から始めてみてください。

私も発達科学コミュニケーションを学び、焦って息子を動かそうとするのではなく、落ち着いて、できていることに目を向ける声かけに変えていきました。
すると息子は、 「本当は俺だって学校行きたいねん!」 と自分の気持ちを言葉にし、3か月で学校復帰を果たしました。
現在は毎朝7時に一人で起き、自分で食べたいものを用意しています。自分でだし巻き卵を作り、私よりも早く登校の準備を終えることもあります。
学校に行けない時間は、失われた時間ではありません。 関わり方を変えれば、おうち時間は子どもの脳を安心させ、考える力、伝える力、動き出す力を育てる時間に変えられます。
まずは今日、子どもの好きなことに、「それ、もう少し教えて」と声をかけるところから始めてみませんか?
よくある質問
Q1. 不登校の子がゲームやYouTubeばかりでも、やめさせなくてよいのでしょうか?
A1.ゲームやYouTubeを無制限にさせるという意味ではありません。まずは悪いものと決めつけず、子どもがその中で考えたり、試したり、楽しんだりしていることに目を向けます。いきなり取り上げるのではなく、会話の入り口として活用することで、考える力や伝える力につなげられます。
Q2. ゲームやYouTubeについて聞いても、子どもが話してくれません。
A2.たくさん質問すると、子どもが尋問されているように感じることがあります。まずは「今、作戦を考えているんだね」と、していることを言葉にするだけでも構いません。質問するときも、「どこが一番面白かった?」など、一つに絞ってみましょう。
Q3. 子どもがお手伝いを嫌がるときは、どうしたらよいですか?
A3.最初から最後までやらせようとせず、「お皿を3枚だけ」など、30秒ほどで終わることを頼んでみましょう。少しでもできたら、「ここまでできたね」「助かったよ」と伝えます。大切なのは、完璧に終わらせることよりも、小さな「できた」を積み重ねることです。
Q4. 勉強が遅れることが心配です。勉強を促さなくても大丈夫でしょうか?
A4.不安が強く、脳が自分を守ることを優先している状態では、勉強を促しても動きにくいことがあります。まずは安心できる関わりの中で、考える、選ぶ、説明する、手を動かすといった力を育てていきましょう。こうした日常の積み重ねが、子どもが再び学び始めるための土台になります。
執筆者:山本みつき
発達科学コミュニケーショントレーナー
好奇心旺盛で自然が大好きな息子が、小学校入学をきっかけに学校へ馴染めなくなり、母子登校から不登校を経験。
毎日の癇癪や暴言、学校や家からの飛び出しに悩み、「どうすればこの子を助けられるのか」と試行錯誤する日々を過ごしてきました。
そんな中、発達科学コミュニケーションに出会い、「子育てが間違っていた」のではなく、“この子に合った育て方”を知らなかっただけだと気づきます。
脳に届く声かけを実践していくことで、荒れていた息子は少しずつ落ち着きを取り戻し、「本当は勉強がしたい」と再び前を向けるようになりました。
現在は、「普通じゃないって、これからの時代の強みになる!」という想いのもと、子どもたちが持ち前の好奇心や才能を伸ばし、 この子にしかできない夢を描ける社会を目指して活動しています。
不登校でゲームばかり…。関わり方に悩むママへ。脳を回復させながら未来につなげる関わり方があります。