学校に行きたくても行けない子を、どう休ませればいいのでしょうか?大切なのは、ただ休ませるのではなく、安心して回復できる環境を整えること。学校を休んでいる間に家庭でできる5つの関わり方をお伝えします。
1.「どうしたら動き出せるの?」学校にいけない息子が心配でした
2.今必要なのは、頑張らせるより安心して休めること
3.学校に行けない子の回復につながる5つの休ませ方
監修者:吉野加容子
発達科学コミュニケーション創始者/パステル総研主宰/発達科学ラボ代表
脳科学をベースに、発達障害・発達グレーゾーンの子どもの発達支援を専門とする。広島大学教育学部卒業後、東京学芸大学大学院修士課程、慶應義塾大学大学院博士課程で学び、民間企業での脳科学研究、医療機関での発達支援、大学での教育に従事。
15年以上にわたり発達に悩む親子と向き合う中で、「子どもの発達を本当に伸ばすのは、家庭での365日の関わりである」という結論にたどり着く。
病院や学校だけでは支援が届きにくい発達グレーゾーンの子どもたちに対して、家庭で再現できる支援を確立するため、脳科学・教育学・心理学を融合した独自メソッド「発達科学コミュニケーション」を開発。
これまでに数多くの親子の変化を生み出し、“ママが変われば子どもが変わる”という発達支援の新しい当たり前を広げている。
著書に『発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室』『脳を育てる親の話し方』『脳が喜ぶ子育て』など。
1.「どうしたら動き出せるの?」学校にいけない息子が心配でした
私には注意欠如・多動症(ADHD)・自閉症スペクトラム(ASD)グレーゾーンの息子がいます。 息子は小学1年生の入学当初から登校しぶりがありました。
友達と遊ぶことは好きだけれど、自分から輪の中に入っていくことが苦手。目立ちたい気持ちはあるけれど、授業中に手を挙げられない。運動会も練習には楽しそうに参加するのに、本番には出られない。
そして小学3年生の夏休み明けから、息子の状態は悪化しました。
「学校潰れろ!」
暴言、暴力、癇癪が続き、そのまま不登校になりました。
無気力になり、1日中ゲームをして過ごす息子を前に、もうどうしたら動き出せるのか、毎日心配がつきませんでした。
学校を休ませたら、ますます行けなくなるのではないか。 けれど、学校に行きたくても行けない息子を、無理に動かすこともできません。
同じように、
「休ませていて大丈夫なの?」
「このままずっと学校に行けなくなったらどうしよう」
と不安になっているお母さんもいるのではないでしょうか。
私自身、発達科学コミュニケーションを学び、息子への関わりを変えていく中で分かったことがあります。
学校に行きたくても行けないときには、まず子どもが安心して休める状態をつくることが大切だということです。
2.今必要なのは、頑張らせるより安心して休めること
学校に行けないと、
「もう少し頑張れば行けるんじゃない?」
「行ってしまえば何とかなるよ」
と励ましたくなることがあります。
けれども、発達凸凹の子どもたちは、学校生活の中でたくさんの刺激やストレスを受けていることがあります。
✅集団で過ごすと疲れやすい
✅集中が続きにくい
✅気持ちの切り替えに時間がかかる
✅先生や友達から注意されることが多い
ストレスが大きくなっているときは、考えたり、気持ちを切り替えたりすることも難しくなります。
「学校に行きたいのに行けない」のは、単にやる気がない、頑張りが足りないということではありません。
だからこそ、今必要なのはさらに頑張らせることではなく、まず子どもが「ここなら安心できる」と感じられる環境をつくることです。
「休ませたら、ますます学校へ行けなくなるのでは?」 そんな心配もありますよね。
けれど、休ませることは「何もしないで待つ」ことと同じではありません。大切なのは、休ませた後にどんな環境をつくり、どんなふうに関わるかです。
3.学校に行けない子の回復につながる5つの休ませ方
では、学校を休んでいる間、家庭ではどんな関わりをしていけばいいのでしょうか。
ここからは、子どもが安心して休み、少しずつ元気を取り戻していくための5つの関わり方をお伝えします。
①指示や注意を減らす
まずは、お母さんからの指示や注意をできるだけ減らして、お家を安心して過ごせる場所にしていきましょう。
学校を休んでいると、
「宿題は?」
「少し勉強したら?」
「明日はどうする?」
と、つい声をかけたくなります。
けれども、すでにたくさんのストレスを抱えている子にとっては、お母さんからの指示や注意も負担になることがあります。今すぐ何かをさせようとするよりも、まずは安心して過ごせることを優先しましょう。
②生活リズムを整える
休ませるからといって、すべてを自由にする必要はありません。
「何時に起きる」「午前中は〇〇する」など、ある程度決まった生活や見通しがあることで、子どもも次にどう動けばいいのか分かりやすくなります。
寝不足や昼夜逆転が続いている場合には、子どもの状態を見ながら、無理のない範囲で生活リズムを整えていきましょう。休ませることと、何の見通しもなく自由に過ごさせることは別です。
③学校に行けない理由を無理に聞かない
「学校で何があったの?」
「どうして行けないの?」
「話してごらん」
子どものことが心配だからこそ、理由を知りたくなりますよね。
けれども、学校に行けないほどストレスがかかっている子は、自分でも何がつらいのか整理できていないことがあります。そんな状態で何度も理由を聞かれると、それ自体が負担になってしまうこともあります。
話したくないのではなく、まだ話せる状態ではないのかもしれません。子どもが自分から話せるようになるまで待つことも、安心につながる大切な関わりです。
④好きなことに没頭できる時間をつくる
ゲームや絵、料理など、子どもが好きなことに夢中になっていると、「学校には行けないのに、ゲームはできるの?」と思うこともあるかもしれません。
けれども、好きなことに没頭できる時間は、「楽しい!」「できた!」とポジティブな気持ちになれる時間 でもあります。
学校に行けないことで自信をなくしているときだからこそ、好きなことやできることまで取り上げるのではなく、子どもが楽しめる時間を大切にしてほしいと思います。
ゲームをしている時間だけを見るのではなく、家族との会話はあるか、生活リズムはどうか、イライラしたり攻撃的になっていないかなど、子どもの様子を全体で見ていきましょう。
⑤お母さんの安心感を伝える
子どもは、お母さんの言葉だけでなく、表情や声のトーン、雰囲気からもたくさんの情報を受け取っています。
だからこそ私は、できていないことではなく、今子どもがやっていること、できていることに目を向けることを大切にしています。
「〇〇しているんだね」
「〇〇してくれてありがとう」
「そうだよね」
そんな短い言葉の積み重ねが、子どもの安心につながります。
私も息子への関わりを変えていく中で、ひどかった暴言や癇癪が落ち着いていきました。 そして息子は、
「本当はオレだって学校に行きたいねん!」
と、自分の気持ちを言葉にするようになりました。 わが家の場合は、その後、学校復帰にもつながりました。
学校を休ませることは、子どもを止めることではありません。 今は動けない子が安心して休める環境をつくり、自信を少しずつ取り戻していくことが、次に自分から動き出すための土台になります。
「学校へ行かせるにはどうしたらいい?」と考える前に、まずは「今、この子が安心できる関わりは何だろう?」と考えるところから始めてみてください。
よくある質問
Q1. 学校を休ませたら、ますます行けなくなりませんか?
A1.休ませるだけで学校に行けなくなる、と考える必要はありません。学校に行きたくても行けないほどストレスが大きくなっているときには、まず安心して休める環境をつくることが大切です。ただし何もしないまま待つということではなく、生活リズムを整える、指示や注意を減らす、安心できる会話を増やすなど、休んでいる間の関わり方も意識していきましょう。
Q2. 学校に行けない理由は聞かない方がいいですか?
A2.無理に聞き出す必要はありません。子ども自身も、何がつらいのかうまく整理できないことがあります。「何があったの?」「どうして行けないの?」と繰り返し聞くより、まず安心して過ごせる状態をつくり、子どもが自分から話せるタイミングを待ちましょう。
Q3. 学校を休んでゲームばかりでも大丈夫ですか?
A3.ゲームをしていることだけを見て、すぐに取り上げる必要はありません。好きなことに没頭できる時間は、子どもが「楽しい」と感じられる時間でもあります。一方で、寝不足や昼夜逆転になっていないか、家族との会話があるか、イライラや攻撃的な状態が続いていないかなど、子どもの様子を全体で見ることが大切です。
Q4. 休ませている間、親は何を一番意識すればいいですか?
A4.まずは、子どもに「家では安心していて大丈夫」と伝わる関わりを意識してみてください。 指示や注意を減らし、できていることに目を向け、 「〇〇しているんだね」 「ありがとう」 「そうだよね」 といった短い肯定の言葉を増やしていきます。 子どもを急いで動かそうとするよりも、安心できる関係をつくることが、次の一歩につながっていきます。
執筆者:山本みつき
発達科学コミュニケーショントレーナー
好奇心旺盛で自然が大好きな息子が、小学校入学をきっかけに学校へ馴染めなくなり、母子登校から不登校を経験。
毎日の癇癪や暴言、学校や家からの飛び出しに悩み、「どうすればこの子を助けられるのか」と試行錯誤する日々を過ごしてきました。
そんな中、発達科学コミュニケーションに出会い、「子育てが間違っていた」のではなく、“この子に合った育て方”を知らなかっただけだと気づきます。
脳に届く声かけを実践していくことで、荒れていた息子は少しずつ落ち着きを取り戻し、「本当は勉強がしたい」と再び前を向けるようになりました。
現在は、「普通じゃないって、これからの時代の強みになる!」という想いのもと、子どもたちが持ち前の好奇心や才能を伸ばし、 この子にしかできない夢を描ける社会を目指して活動しています。
不登校でゲームばかり…。関わり方に悩むママへ。脳を回復させながら未来につなげる関わり方があります。