子どもの発達が気になる、でも、相談して発達障害の診断がつくのは怖い。そう思っているお母さん。実は、困りごとをしっかり相談すれば、診断がなくても、子どもの発達をしっかり伸ばしてくれる支援が受けられるんです。熊本市での一例をご紹介します。 |
【目次】
1.やっぱり発達障害?悩んだら何度相談してもOK。
2.悩んでいた私に勇気をくれた「ペアレントトレーニング」
3.発達障害の診断がなくても、子どもをしっかり発達させる方法とは?
4.かゆいところに手が届かず…。療育を始めるまでの思わぬハードルはこれ。
1.やっぱり発達障害?悩んだら何度相談してもOK。
私の息子は、発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断のある小学校2年生です。
はじめに発達障害を疑ったのは年少のとき。行政の相談窓口である熊本市子ども発達支援センターへ相談したのですが、結果的に欲しかった支援は受けられませんでした。
初回の相談については、以前の記事でお伝えしていますのでご参照ください。 『【熊本県 発達支援情報】うちの子、発達障害?それとも個性?悩んだときには専門家に相談していいんです!〜熊本市子ども発達支援センター~』
前回の相談で得られた、子どもの特性に合わせた具体的な対応を頑張っていた私。それでも、息子の状態はあまり変わりませんでした。
支援センターからのアドバイスにより、保育園でも適切に対応していただき、その後園から困りごとの訴えもなかったため、問題は解決したと思っていました。
仕事が忙しくなったこともあり、息子の発達のことはあまり気にせず過ごしていました。
しかし、年中に進級した息子は、どんどん発達していく周りの友達との違いがはっきりしていたのです。
多動傾向に加え、衝動的にお友達にかみついてしまう、発表会では周りの様子が気になり歌も演奏もうまくできない、その結果、いつもお友達に注意されてしまう。 息子は、
「どうせ僕なんかうまくできない」
「いつも僕だけ怒られる」
といったネガティブな発言が増えてきていました。
年中の冬、担任の先生に「保育園での様子はどうですか?立ち歩きとか」と尋ねると、「うーん、あまり変わってないですね」と話されました。
やっぱり変わってないんだ。このままじゃ年長さん、小学生になるときに困るかもしれない。
急に危機感を感じた私は、再度子ども発達支援センターへ相談することにしました。 前回の教訓を生かし、相談の前に発達障害について徹底的に調べました。
息子の状態は今どのような状態か、就学に向けて受けられる支援はどのようなものがあるか。たどり着いた答えは「療育を受けた方がよいのではないか?」ということ。
今回はそのような目的をもって、再度支援センターへ向かいました。
前回の相談から1年半が経過していましたが、同じスタッフが担当してくれました。相談後の経過を説明し、療育を受けられないかを相談した私。
園の先生がまとめてくれた最近の息子の様子を持参し、今度ははっきりと、今の息子の困りごとについて説明することができ、
「そうですね。では、療育を受けられるように、意見書を作成しますね。」
というスタッフの言葉を引き出すことができました。
そう、診断がなくても、意見書を作ってもらい、療育を受けることができるのです!事前に調べただけではわからない情報でした。
このような支援は、地域によって差があるため、行政機関に相談することではじめて得ることができた情報でした。
それともう1つ、2回目の相談で得られた有用な情報がありました。
支援センターでペアレントトレーニングを開始することとなり、よかったら受けてみませんか?とお声かけいただいたのです。
親が子どものためにできることを学べる、という魅力的なお誘いでした。 こうして、3か月のペアレントトレーニングを受けることになりました。
2.悩んでいた私に勇気をくれた「ペアレントトレーニング」
私が受けたペアレントトレーニングは、次年度から正式に導入されるプログラムのためのお試し版でした。
本来なら小学生以上の子どもを持つお母さんが対象とのことでしたが、私の熱意を受けたスタッフさんが推薦してくれたのです。
8名のお母さんが参加して始まったプログラム。そこでは、子どもの行動を分けること、ほめることの重要性や指示の出し方などを学びます。
座学だけではなく、実際にロールプレイもあるため、お母さん同士でほめたり指示を出したりして、子どもの気持ちを疑似体験することができました。
中でも私が大好きだったのは、プログラムの最初に毎回行われる「今週の子どものほめポイント」の時間。
参加者がそれぞれ、自分の子どもの良かったところを発表して、それを皆でほめ合い、喜びあう時間です。
はじめは「ほめるところがない」と言っていたお母さんも、最後には「これもこれもこれも頑張りました」と笑顔で子どもをほめまくるようになりました。
お互いの子どものことを知らないはずなのに、ほほえましい気持ちにさせてくれると同時に、自分の子どもの成長や頑張りを他のお母さんがほめて喜んでくれるのはとてもうれしかったです。
今は発達科学コミュニケーション(発コミュ)を学び、子どもをほめるのが得意になった私ですが、あのペアレントトレーニングは私の原点になっています。
そして、ペアレントトレーニングを介した他のお母さんたちとの交流で、自分の子どもの発達の心配なことを「こんないいところもある」と肯定的にみられるようになりました。
そして、療育を受けることに対する自分の気持ちが前向きに変わっていったのです。
※熊本市子ども発達支援センターでのペアレントトレーニングは、現在正式なプログラムとして開催されています。開始時期などは施設のHPを確認されてくださいね。
3.発達障害の診断がなくても、子どもをしっかり発達させる方法とは?
子どもに療育を受けさせたい、けど、発達障害の診断は怖い。そう思うお母さんは多いと思います。
でも、療育の現場においては、発達障害の診断があるから療育を受ける、のではありません。
子どもの困りごとを少しでも解決するために、そして、子どもを良い方向に発達させるために療育を受ける、というのがスタンダード。
そう、診断があるかないかは関係ないのです。
地域差もあるかもしれませんが、現行の法律では、支援が必要なお子さんは療育を受けることができる体制になっています。ただ、療育を受けるには手続きが必要です。
我が家の場合、それが意見書でした。 意見書をもらうためには、行政の窓口での相談が必要な場合が多いので、まずは1歩踏み出して、行政機関へ相談することからはじめてみませんか?
さらに、意見書を書いていただいたことで、もう一つメリットがありました。
それは、保育園で加配の先生を付けてもらえたことです。 普段の保育時間や、発表会や運動会などの行事のとき、加配の先生がいつもそばにいて、困った息子を助けてくれました。
年中の冬から卒園まで、同じ先生がついてくださったので息子とはとっても仲良し。うまく息子の特性を理解し、成功体験を積ませてくれました。
おかげで年長の時期に息子はぐぐっと発達を見せてくれたのです。 意見書があるから必ずしも加配が付くわけではないのですが、申請してみる価値はあると思います。
4.かゆいところに手が届かず…。療育を始めるまでの思わぬハードルはこれ。
こうして2度目の相談から3か月後、年長進級に合わせて、息子は療育を開始できました。
これは行政機関に相談したおかげではあるのですが、療育開始までの間にちょっと注意するハードルがあったのでお伝えしておきます。
熊本市の場合、子ども発達支援センターからは療育先を紹介してはくれません。療育先のリストを渡されるだけです。
そう、療育先は自分で探さないといけないのです。
また、療育を受けるには、指定相談支援事業所を探す必要があります。これも親が自分で探す必要があります。
相談支援事業所が決まれば、目的に合う、空きのある療育先を探してくれる場合もあるのですが、当時私はそのことを知らず、両方とも自分で探しました。
相談支援事業所については、どこもいっぱいで見つからず、全部で20件電話してようやく探し当てることができました。
また、療育先は、電話で尋ねて、空きがあれば見学に行ったので、ものすごい労力がかかりました。
療育を受けると決まったものの、かゆいところに手が届く支援体制ではなかったことがやや不満でした。
ただ幸い、子どもにぴったりの療育先が見つかり、無事年長の4月から療育を開始することができたのです。
今回の私の体験を通じてお伝えしたいことは3つあります。
①子どもの発達相談をするときには、目的意識を持つこと。
②発達障害の診断がなくても、受けられる支援はあるということ。
③相談できる場、仲間の存在は、自分の背中を押してくれること。
お子さんの発達のことで悩むお母さんが、最適な支援に巡り合えることを祈っています。
そして、私にとっては、相談できる場、仲間を得る場として、発コミュに出会えたことが、今息子とうまく向き合えていることに大きな影響を与えています。
今悩んでいるお母さんと、発コミュで出会い、仲間として進んでいければうれしいです。
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※こちらの記事の情報は2017年~2018年の情報です。相談の際には必ず最新の情報を確認してください。
執筆者:森博子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)