自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが手洗いを嫌がることは、この時期にはとても悩みますよね。どうすればスムーズに習慣化できるのか、具体的な工夫や実践例をご紹介しています。手洗いが楽しいルーティンになり、嫌がらず手洗いをできる子にしていきましょう!
1.ASDの子どもが「手洗い」を嫌がらずにできるためには?
お子さんは外から帰ったらすぐに手洗いをする習慣が身についていますか?
今の季節、様々な感染症が流行する時期ですので、手洗いはとても重要な感染予防です。
しかし自閉スペクトラム症(ASD)の子どもの中には手洗いを嫌がる子もいます。
ただ手を洗うだけなのに、なぜ嫌がるのでしょうか?
その原因とスムーズに手洗いをできるようになるための対応策をご紹介します。

2.「もう無理…」手洗いを嫌がる子どもに迎えたママの限界
3歳のASDの息子は、手洗いをすごく嫌がります。
幼稚園から帰って来てすぐに「手洗うよー」と洗面台に促しても「イヤ」と言うだけで、全く手を洗おうとしません。
それどころか帰るとすぐに指しゃぶりを始めてしまうので、感染症などがとても心配です。
なんとか手洗いをしてほしいので、お人形を使って誘導してみたり、バケツに水をはって洗わせてみたり…とあの手この手を使い、
きちんと洗い終わるまでに毎日30分くらいかかってしまっていました。
時には嫌がって泣いている息子の手を引っ張り、無理やり洗わせてしまったこともありました。
終わった頃にはお互いイライラして「もう無理…」と嫌な気持ちになってしまったことも…。
親としては「手洗い」は簡単なことなのに、なぜこんなに時間がかかるのか?
なぜこんなに手洗いを嫌がるのか理由がわからず、とても困っていました。

3.自閉スペクトラム症の子どもにとって「手洗い」が難しい理由とは?
ASDの子どもが手洗いを嫌がる理由は、さまざまな特性が関係しているためです。
・水に濡れるのが嫌、などの感覚過敏がある
・目に見えない汚れが理解できず「なぜ洗うの?」という手洗いの必要性が理解できない
・手洗いの手順ややり方がわからない
・手洗いでネガティブな記憶がある
今回はこの中で「手洗いの手順ややり方がわからない」について詳しく説明していきたいと思います。
大人にとっては「手洗い」とは石鹸で手を洗うこと、と簡単に説明ができますが、
ASDの子供にとって「手洗い」と言っても具体的に何をするのかが理解できず、見通しが持てないことが理由で嫌という原因になることもあります。
「手洗い」が具体的にイメージできないのに、「手洗いしたら、お菓子を食べていいよ」と言われても、子どもは余計パニックになってしまいます。
大人の当たり前の感覚で話すのではなく、しっかりと子どもに伝わるように説明する必要があります。
わかるように説明されたら、子どもも落ち着いて行動ができるようになるのです。
そのためには「手洗い」と言う動作を細かく分解して、具体的にどのようなことをしていくのかを、子どもに説明する必要があります。

4.もう「手洗い」で困らない!ASDの子ども向け簡単ステップ
まずは子どもでもわかるように「手洗い」の動作を細かく分解してみましょう。
①洗面台の前に立つ
②腕まくりする
③水で手を濡らす
④石鹸を手につける
⑤石鹸を洗い流すために、ゴシゴシ手を動かす
⑥手を拭く
ひとつひとつの動作を簡単に分解すると6つの手順になります。
すると子どもでもわかりやすく、具体的に何をすればいいのかがわかります。
そうすることで、これだったら「できるかもしれない」と思い、「取り組んでみようかな?」という思いに切り替えることができます。
では「手洗い」を嫌にしないために、どのようなことをしたら良いのでしょうか?
◼️何をするか視覚化する
ママや家族が手を洗う様子を写真や動画に撮って見せてあげる。
目で見て確認することで、何をするかがわかります。
手洗いの手順などイラストで描いているものを貼っておいたり、YouTubeを活用して楽しいイメージを持たせるのもいいですね。
◼️ひとつひとつの行動をできたら褒める
まずは洗面台の前に立つだけでもオッケーです!それで「できたね」と褒めてあげましょう。
次の日は洗面台の前に立って「腕をまくる」だけでもオッケー!
小さなことからスモールステップで乗り越えていくことが大事なんです。
子どものハードルをぐんと下げてあげると「できた!」という達成感を味わえます。
するとそれが成功体験となり、次もやってみたいという原動力に繋がります。
◼️無理に強要しない
はじめのうちは「嫌!」と言ってしまうかもしれません。
洗面台に立つことができた後は、消毒用のティッシュで拭いてしまってもいいんです。
大切なのは「できた」という体験をたくさん味わせてあげることです。
さらに、ひとつひとつの動作の中には、子どもにとって「嫌なこと」があるかもしれません。
子どもの苦手な工程を見極め、知ることも大事です。
「嫌なこと」がわかったらどのように工夫すれば「手洗い」ができるのか考えて、対策してあげましょう。
やってはいけないのは、特性による苦手を、無理に改善することは避けましょう。
【例】
「オートディスペンサーの音が怖い」→「手動式の泡石鹸にしてみる」
「冷たい水が嫌」→「お湯にしてみる」

5.「手洗い」をルーティン化!スモールステップで小さな成功を
我が家の息子の場合は、「洗面台の前にあるステップ階段がズレるのが嫌」という理由で洗面台に行く事を拒否していました。
ズレない違う台を用意してあげると、嫌がる事なく洗面台の前の台に立つようになりました。
その台に立ったら大袈裟すぎるほど「よく立てたね」と褒めて肯定してあげると、徐々に手洗いも最後までできるようになりました。
ASDの子どもは、嫌な理由を自分でうまく説明できないからこそ、親である私が理解してあげないといけないんだ!と気づくことができました。
そして、「嫌なこと」を改善すれば子どもは驚くほどスムーズに動いてくれるようになり、今では「手洗い」も帰宅後のルーティンになりつつあります。
「手洗い」に困っているママの参考になると嬉しいです。

執筆者:豊泉 えま
発達科学コミュニケーション トレーナー