5歳になったのに、感情を言語化できず『すぐ怒る』お子さんの様子を心配に感じている親御さんはいらっしゃいませんか?本記事では、5歳の子どもがすぐ怒ったり癇癪を起こす原因と発達障害の特性との関連性、発達特性に合った癇癪への対応をご紹介します。
1.5歳児ですぐ怒る子どもは発達障害?
✔️些細なことですぐキレて癇癪を起こす。
✔️親に反抗して、叩いたり蹴ったりしてくる。
✔️嫌なことがあると、なかなか機嫌が治らない。
✔️怒りスイッチがすぐに入ってしまう。
このような子どもの態度にイライラしてしまい、つい叱ってしまったり「いい加減にしなさい!」と突き放すような態度をとってしまった経験はありませんか?
『すぐ怒る子どもにどう対応したらいいのか?』子育て中の親御さんなら誰しもが悩んだ経験があるのではないでしょうか。
私の個別相談にも、お子さんの「癇癪」の対応に悩まれて相談に来てくださる方がたくさんいます。
特に5歳児の親御さんからの「癇癪」に関するご相談は、比較的多いと感じています。
5歳児は小学校就学前の時期であり
「これまでは幼かったら、多少の癇癪も許せたけど…もうすぐ小学生になるのに、このままだと心配だ」と思われている親御さんが多いようです。
また「周りの子どもはそんなに怒らないのに、うちの子の癇癪は異常。発達障害かもしれない」と癇癪と発達障害との関連性を心配されてご相談に来られる親御さんも少なくありません。
本記事では
・5歳児ですぐ怒るのは何故?
・発達特性による癇癪の原因
・癇癪が起きた時に親はどう対応したら良いのか?
をご紹介します。

2.朝から晩までずっと怒っている息子に振り回される毎日
私の個別相談に来られた5歳のお子さんをお持ちのママの体験談をご紹介します。
※この内容はご本人の承諾の上、ご紹介させていただきます。
(Aさんの体験談)
私の息子は5歳で、来年小学生になります。
息子は幼い頃からすぐ怒る子で、正直、とても育てにくい子でした。
息子が怒る原因は様々。
・朝ごはんが本人が予定しているものではないと怒る
・洋服の着心地が悪いと怒る
・幼稚園に行きたくないと怒る
・幼稚園から帰ってきたら、もっと遊びたかったと怒る
・おやつが食べれるものではないと怒る
・お風呂に入りたくないと怒る
・眠れずに怒る
1日中を振り返ると、朝から晩までずっと怒っている日がほとんどでした…。
私も兄弟たちも何も息子に対して悪いことなんてしていないのに、息子は家族に対して怒りをぶつけてきます。
息子が怒る→家族がそれに対して怒る→息子の怒りがもっとひどくなる…
息子のイライラ連鎖が家族全員に伝染して、家庭崩壊の寸前でした。

3.発達特性からくる癇癪の原因
個別相談の中で、Aさんの息子さんの癇癪が起こる時の状況を詳しくお聞きしたところ
Aさんのお子さんの癇癪は
・不安がある時
・予定通りにならなかった時
・苦手な感覚があった時(食事、服)
このような場面でよく起こっていることがわかりました。
Aさんのお子さんは幼い頃からこだわりが強くマイルール通りにならないとよく癇癪を起こすことがあったそうです。
また、食事や着る服も本人の馴染みのあるものであれば癇癪は起きないものの、新しいメニューや新しい服だと癇癪を起こしていました。
こだわりが強い、マイルールがある、感覚過敏
これらは、代表的な自閉スペクトラム症(ASD)の特性です。
また、Aさんのお子さんは言葉の発達が少し遅れており、自分の気持ちを言葉で表すことが苦手だということがわかりました。
Aさんのお子さんのように、言葉で自分の気持ちを表すのが苦手な子どもは5歳児にはとても多いようです。
5歳になると大人と対等に話すことができるようになりますし、言葉の理解は進んでいると思ってしまいがちですが…
実は、まだまだ言語理解の発達は未熟な状態。
自分の感情を理解し(自己認知)、言葉で表現できるようになるのは、まだ5歳の子どもにとっては、難しいことなんです。
特に、発達障害の傾向のあるお子さんは、この自己認知と言語表出が苦手な場合が多いため、自分がどのような感情を抱いているのかがわからず、癇癪となって表出することがあります。

4.ASDの発達特性に合った癇癪への対応
要するに、Aさんのお子さんの癇癪は
「不安なんだ!」「心配なんだ!」「苦手なんだ!」という気持ちを言葉で表現できないお子さんからの「SOS」だったのです。
そこで Aさんには、ASDの特性にあった癇癪対応を2週間実践してもらうことを提案しました。
ここではAさんにアドバイスしたASDの特性にあった癇癪対応を3つご紹介します。
◆子どもの行動を観察し、すぐ怒る理由を見つける
お子さんがすぐ怒るのには必ず理由があります。
どのような場面でイライラしたり、癇癪が起こるのかをしっかりと観察することから始めましょう。
特にASD傾向のある子どもは、自分の身を守るため『安全でなはいこと』と判断したことに対して、脳の防御反応が強く働き、その結果『不安』や『怒り』となって表出することがよくあります。
この『不安』や『怒り』の表出は、ASDの発達特性であり、決して『わがまま』ではないのです。
ASDの発達特性で『本人にはどうしようもないこと』であることを親は理解しておきましょう。
◆癇癪が起こったら、気持ちを受容し理解してあげよう
癇癪が起こったら、その時のお子さんの行動や感情をまずは受容してあげましょう。
「嫌なことがあったんだね」
「イライラしちゃうんだね」
「泣きたいほど嫌だったんだね」
嫌な感情や思いを言葉にしてあげたり、状況を実況中継してあげると、本人も自分の状況を理解しやすくなります。
この対応が自分の気持ちを理解する(自己認知)の発達を促す一歩となります。
◆癇癪中は問題を解決しようとしない
イライラしていたり、怒っている状況は脳が興奮状態にあるので、親御さんが正しいことに導いても、子どもは冷静に物事を判断できる状況にありません。
まずは、子どもの気持ちを落ち着かせることに注力しましょう。
焦らず、しばらく時間をかけて、子どもの癇癪が落ち着いたら
「食べたことがないものがあったから、不安だったんだよね。」
「本当は〇〇って言いたかったんだよね。」
親が自分のことを理解してくれている。
怒っている僕も、受け入れてくれる。
この気持ちが子どもの中に芽生えると、子どもは安心して、自分の気持ちを親に伝えることができるようになります。
すると、癇癪を起こす回数は、自ずと減ってくるはずです。

5.3ヶ月で癇癪がほとんどなくなった!
Aさんはこの対応を徹底して3ヶ月間実践しました。
・息子さんが新しいものを食べることに対して『不安』を感じていると理解することができたので、無理やり新しいものを食べさせようとせずに、安心したメニューを毎日提供することにしました。
・朝の準備の時間は本人の望むルールがあるようなので、事前にそれを確認し、なるべくその通りに動けるよう先回りして準備をするようにしました。
・本人のルール通りに行かない時は、勝手に親がルールを変えず、本人と話し合って可能な方法を考えるようにしました。
・そして、癇癪が起きてしまった場合は「何か不安なことがあるんだな」とお子さんの気持ちを理解しようとして、受容を徹底するようにしました。
1ヶ月経った頃から、息子さんは「嫌だったこと」を少しずつAさんに話してくれるようになったそうです。
初めはネガティブな感情をただAさんにぶつけるだけだったそうですが、少しずつ怒らずに話をできるようになったそうです。
3ヶ月経った頃には怒ることはあっても、すぐに気持ちを吐き出せば、気持ちを切り替えることができるようになり、大きな癇癪を起こすことがほとんどなくなりました。
お子さんが
・すぐ怒る
・癇癪を起こす
これだけで発達障害かどうかを判断することはできません。
しかし、子どもの問題行動には必ず理由があり、その理由を親御さんが理解する上では、発達障害の子どもの特性を理解することは、大いに役立ちます。
もし、ASDの発達特性についてもっと知りたいと思う方は、個別相談でお子さんの状況をお話していただくことで、お子さんの発達特性を知ることができます。
お子さんの特性を理解したい親御さんがいらっしゃいましたら、お気軽に個別相談にお越しください。
