夏休みで生活リズムが崩れると、強いこだわりを持つASDの子どもは混乱しやすくなります。ASD傾向のある子への具体的な対応法を解説します。
1.夏休み、こだわりの強い子が混乱しやすいのはなぜ?
夏休みに入ると、学校という“毎日の決まった流れ”がなくなります。
朝の支度、登校、授業、給食、帰宅…。
この一定の流れがあることで、ASD傾向のある子どもやこだわりの強い子は安心して過ごせていたのです。
ところが夏休みに入ると、その「決まった流れ」が崩れてしまう。
たとえば、朝起きる時間が毎日違う、予定が日によってバラバラ、家族の都合で外出が急に決まる…。
こうした日常の変化は、大人にとっては「よくあること」ですが、こだわりの強い子にとっては「予測不能な不安」となります。
結果、「癇癪を起こす」「固まって動けなくなる」「パニックになる」といった行動が見られやすくなるのです。

2.こだわりが強いASDキッズの夏休み
私の娘はASD傾向があり、予定変更や環境の変化がとても苦手な子です。
特に学校のない夏休みは毎回大変でした。
朝の登校までのルーティンがなくなるわけですので、朝からソワソワして、何をやっても心ここにあらず…
私が仕事が入って祖母宅に預かってもらう日は「今日はおばあちゃん家に行こう」と伝えた瞬間、「予定が違う!聞いてない!」とパニック。
家族で旅行に出かけても、いつもと違う環境に不安でいっぱいな様子で、全く楽しむことができていませんでした。
外出先のショッピングモールで若干パニックになりながら、泣いて床にうずくまり、動けなくなってしまったこともありました。
当時の私は、「もう少し柔軟になってほしい」「みんなと同じようにできるようになってほしい」と願う一方で
その気持ちが子どもをさらに追い詰めていることに気づけませんでした。

3.子どもの“こだわり”って悪いこと?
まず大前提として知っておいていただきたいのは、「こだわり=悪いもの」ではありません。
特に不安の強いASD傾向の子どもにとって、安心して自分らしく過ごすために、こだわりは必要なものでもあります。
たとえば…
・朝ごはんはいつも同じお皿じゃないと落ち着かない
・靴下を右から履きたい
・外出の前に必ず地図で場所を確認したい
といった行動は、一見「わがまま」「融通がきかない」と受け取られがちですが、子どもなりの「不安への対処法」ともいえます。
ですから、こだわりを無理やり変えさせるよりも、どうサポートすれば安心して過ごせるのかを考えることが大切です。

4.夏休み中の“こだわり”にどう対応する?5つの実践ポイント
◆①生活リズムをできるだけ「見える化」する
夏休みはスケジュールが不規則になりがちですが、できるだけ「いつ、何をするのか」を視覚的に示す工夫をしましょう。
・学校の時間割のように、一日の予定をホワイトボードに書く
・自分でカレンダーに予定を書きこむ
・起きる時間と寝る時間は学校がある日と同じ時間にする
・食事やお風呂の時間をなるべく同じにする
「先の見通し」があるだけで、子どもの安心感はグッと増します。
◆②いつもの流れをなるべくキープする
学校がないぶん、生活に変化が出やすい夏休みですが、「子どもが安心する流れ」はできるだけ守ってあげましょう。
・朝起きたら着替える → 朝食をとる → お気に入りの遊び時間
・昼食後は自分の好きな遊びを楽しむ → 夕方は一緒に買い物
こうしたルーティンの繰り返しが、子どもの心を安定させてくれます。
◆③急な変更は“予告”をする
どうしても予定が変わることもあります。
そんなときは「いきなり変更」ではなく、事前に知らせて心の準備時間を作ることが大切です。
・「今日は雨が降るかもしれないから、お出かけは延期になるかもしれないよ。もし行けなかったら、明日行こうね。」
・「明日は午前中おばあちゃんちに行くよ。おばあちゃんちでもゲームはしていいからね」
また、変更があった後は、「変更後の流れ」もセットで伝えると混乱が減ります。
◆④こだわりに“とことん付き合う日”を作る
毎日、こだわりへの対応が続くと、大人のほうが疲れてしまいますよね。
そこでおすすめなのが、「今日は〇〇ちゃんのこだわりの日」と、大人が割り切って、子どものルールやこだわりを最大限尊重する日を作ってしまうのもオススメです。
・本人に納得の行くように、好きなように行動してもいい
・気が済むまで同じ遊びをしてOK
・自分でスケジュールを決めてもらう
そんな一日があることで、子ども自身が「自分は受け入れられている」と感じ、安心することができます。
◆⑤困ったときの“合言葉”を決めておく
こだわりが強く出てパニックになりそうなとき、大人が落ち着いて対応するために「合言葉」を決めておくと便利です。
たとえば…
・「今は安心タイムだよ」
・「ちょっと深呼吸しようか」
・「自分の部屋に行こうか(安心できる場所)」
これは、親だけでなく子ども自身も心を落ち着けるきっかけとして使えるようにしていくとより効果的です。

5.親も完璧じゃなくていい!
こだわりが強い子の育児は、毎日が気づかいや調整の連続です。
親として、「何が正解なんだろう」と悩むこともあるでしょう。
でも、子どもが安心して過ごせる環境を少しずつ整えようとするあなたの姿勢こそが、すでに最善のサポートになっています。
ときには対応に疲れて、イライラしたり、思うようにいかない日もあるかもしれません。
そんなときは、「今日は7割できたらOK」と、自分にも優しくしてあげてください。
こだわりの強さは、子どもの「安心したい」「自分を守りたい」というサインです。
夏休みという日常と違う時間だからこそ、子どもがどんな場面で不安を感じやすいのか、どんな対応が合っているのかを知るチャンスでもあります。
まずは、「流れをつくる」「予告する」「安心のしかけをつくる」の3つを軸に、少しずつ対応を試してみてくださいね!
