「ママやって」「ママ~」が増える子の中には、不安を感じやすく、ママと離れることに強い不安を抱く“母子分離不安”の子もいます。ここでは、「ママやって」を減らし自分で行動できるようになった3つの関わり方を紹介します。
1.「ママやって」が増えるのは、子どもの不安のあらわれかもしれません
「ママやって」
「ママきて~」
「ママ~」
いつもは自分でできていたことができなくなり、なんでも「ママやって」と言うことが増えてきた。
そんなとき、ママは 「どこまで手伝えばいいの?」 「どう接したら、自分でできるようになるの?」 と悩んでしまいますよね。
時間に追われていると、つい手伝ってしまうことも多くなり、 「過保護かな?」と気になったり、 周りの人に「ママが優しいからだよ」と言われてモヤッとしたりすることも。
実は、「ママやって」「ママ~」が増える子の中には、もともと不安を感じやすい特性があり、ママと離れることに強い不安を抱く「母子分離不安」の場合があります。
👉お子さんの様子が当てはまるかの目安には、こちらの記事のセルフチェックをどうぞ。
合わせて読みたい
身の周りの事をママやってと言うこと以外にも、
・自分でやってと言うと不機嫌になり時間がかかる
・ママと離れることを強く嫌がる
・学校や幼稚園に行きしぶりがある
このような様子が見られると不安が強くなっており、母子分離不安が進行していく可能性があります。
この記事では、「ママやって」が増えていた息子が、たった2週間で自分で行動できるようになった、私が実践して効果を感じた3つの対応を紹介します。

2.息子の「ママやって」に困っていました
現在、小学校低学年の息子は小さい頃から不安が強く、幼稚園の頃は、離れるときにいつも「ママ~」と大泣きしていました。
小学生になった今も学校には苦手が多く、不安が強いときは、私が授業に付き添いながら登校しています。
新学期の緊張が続いたり、毎日頑張って登校している時期などは、家でだらだらとソファーに寝転ぶことが増え、なんでも「ママやって」と言うことが多くなります。
朝、「歯磨きしよっか~」と声をかけても「やだ~ママやって!」。
私が歯ブラシを持ってきて「自分でやってみようか」と優しく声をかけても、「やだー!ママやって!」と不機嫌になってしまいます。
着替えも水も「ママ持ってきて」「ママ、ママ」と呼ばれることが多く、私はだんだん疲れてしまっていました。
母子分離不安の子が「ママやって」とママ任せになるのには、理由があります。
「わがまま」でも「甘え」でもなく、脳のしくみによるものです。

3.母子分離不安の子が「ママやって」とママ任せになるのはなぜ?
♦行動の始めは脳に一番負担がかかるから
行動の始めは脳に一番負担がかかるんです。
たとえば、子どもがYouTubeを見ていて、そこから着替えや歯磨きをして学校の準備をするとなると、脳が「いやだな…」とブレーキをかけてしまうのです。
大人も、テレビを見てゆっくりしている時に「そろそろ夕飯つくらなきゃ」と思っても、なかなか動きたくないことがありますよね。
子どもも同じで、「めんどうだな」という気持ちから「ママやって」と甘えるようになるのです。
♦不安が強い子は刺激に敏感で疲れやすいから
母子分離不安のある子は、人の表情や音、周囲の雰囲気などにとても敏感です。
先生や友達の表情から感情を読み取りすぎて不安になったり、大勢が集まるざわざわした空間が苦手だったりします。
これは、「扁桃体(へんとうたい)」という脳の部分が過敏に反応してしまうからなんです。
扁桃体とは、危険を感じるセンサーのような場所で、人によって感度が違い、母子分離不安の子はこのセンサーが敏感なため、刺激を感じすぎてしまいます。
さらに、学校など外の環境では頑張りすぎてしまう傾向があり、外では、着替えや荷物の準備を「自分でしっかりやろう」と思い、人一倍頑張っています。
その分、家に帰るとエネルギー切れでぐったりしてしまい、その結果、「ママやって」が増える、「自分でやって」と言うと不機嫌になることが多くなってくるのです。
この状態が続くと、脳が「ママがいないとできない」と記憶してしまい、自分でやらない行動パターンが定着してしまうことがあります。
ママとしては、「自立してほしい」と焦り、つい強い口調で、「自分でやって!」とイライラしてしまったり… でも、それは逆効果。
ママの強い口調や怖い顔は、子どもの記憶に残ってしまい、「自分はできてないんだ…」と自信を失ってしまいます。
その結果、さらに不安が高まり、母子分離不安が進行してしまうこともあるのです。

4.母子分離不安の子が自分で行動できるようになるための3つの関わり方
「ママやって」を減らし、子どもが自信をもって行動できるようになるために、 ママにぜひ試してほしいのが“肯定”の声かけです。
ここでは、我が家で効果があった3つの関わり方を紹介します。
♦肯定の言葉とセットでやってあげるようにする
初めは、「ママ、歯磨きもってきて」とお願いされた時、歯磨きを渡しながら「歯磨きしようとしたんだね」とニコッと笑顔で声をかけます。
このひと言は「ママが気づいてくれた!」「行動しようとしたことを認めてくれた」という肯定の声がけになります。
♦行動の始まりと途中で肯定する
例えば、着替えを始めたら、「パジャマ脱げたね!」と肯定します。
そうすることで、子どもは「ママが着替えようとしてるのに気付いてくれた!」
じゃあ、次は「洋服着てみようかなー」と次の行動へのやる気をアップさせることができます。
母子分離不安の子は、完璧主義な傾向があるので、最後までできないとダメなんだと思いがちです。
そのため、行動の最初や途中に肯定することが大切です。
肯定されることで「できた!」と成功体験が積み重なると、脳がどんどん自分から行動することを選ぶようになっていきます。
♦ママからスキンシップをとる
母子分離不安の子は、「ママ、ママ」と自分から甘えてくることが多いと思いますが、ママから積極的にスキンシップをとることもとても効果的です。
スキンシップは、不安を安心に変える力があります。
また、感情の脳を育てる効果もあり、ママからスキンシップをたくさんすることで、不安が和らいできます。
子どもが嫌がらなければ、ハグをしたり、手をつないだり、高学年のお子さんなら、物の受け渡しや肩や背中に触れるだけでも、「肯定」の関わりになります。
こういった「肯定」の声がけや関わりを2週間ほど続けると、息子にこんな変化がありました。
・朝、自分から歯磨きを取りに行く
・「ママ~着替え~」と言っても、「ハンガーにあるよ~!」と伝えると、「そっか~」と自分で取りに行く
・水を自分で入れに行く
・爪を自分で切るようになる
・「歯磨きしよー」と声掛けて待つと、「やだー!ママやって」と言わず自分で動き始める
脳は行動することで育ちます。
「ママやって」を解消して、子どもがどんどん自分で行動できるようになると良いですよね。
我が家の体験が、同じように悩むママの参考になると嬉しいです。

執筆者:木村 まい
発達科学コミュニケーション アンバサダー




