何度言っても切り替えできない子どもに、つい声を強めていませんか?「言うことを聞かない」のではなく、動き出すまでに時間が必要なのかもしれません。同じトーンで伝え、動き始めを褒めることで、親子のぶつかりが減ったわが家の関わり方をご紹介します。
1.なかなか切り替えられない子どもに声が強くなる毎日
遊びをやめる時間になっても、なかなか切り替えられない。
「もう終わりだよ」と声をかけても、動かない。
「テーブル片付けようか」と言っても反応がない。
何度も同じことを言わないと聞いてくれず、やっと立ち上がったと思ったら、また元に戻ってしまう。
そのたびに、私の声は少しずつ強くなり、最後は強い口調で急かしてしまう。
どうしてこんなに切り替えができないのだろう。
どう関われば、この子は自分で動けるようになるのだろう。
そう悩みながら、今日も同じやりとりを繰り返していませんか。

2.何度言っても届かない。空回りしていた私の声
おやつを食べたあとのテーブルは、いつも袋や食べかすでいっぱいでした。
「食べたら片付けてね」
そう伝えても、そのまま立ち去ってしまう。
もう一度言う。
それでも動かない。
「テーブル汚いと思わない?」
「何度も同じこと言わせないでよ」
気づけば、私は強い口調で急かしていました。
しかし、本当につらかったのは、片付けないことではありません。
何度も言っているのに、私の言葉が空回りしているように感じること。
伝えたはずなのに、また同じことを言っている自分がいる。
どうしてうまくいかないのだろう。
どうして私は、こんなに余裕がなくなるのだろう。
本当は怒りたいわけではないのに、気づけば強い口調で急かしている。
その繰り返しが、私のイライラを少しずつ大きくしていました。

3.切り替えられないのは反抗ではない。発達途中のスイッチ
子どもが切り替えられなかったのは、やる気がないからでも、わざと無視していたからでもありませんでした。
何かに夢中になっているとき、子どもの頭の中はそのことでいっぱいになります。
そこに「片付けてね」という言葉が入っても、すぐに行動へ切り替えることは簡単ではありません。
特に不安が強い子は、今していることをやめたり、次の行動へ移ったりすることに不安を感じ、切り替えに時間がかかることもあります。
子どもの「止める・考える・動く」という力 =“切り替えスイッチ”はまだ発達の途中で、これから育っていく力なのです。
つまり、私の言葉が届いていなかったのではなく、聞いてから行動に移すまでに時間が必要なのかもしれない。
そう考えるようになりました。
私はそれまで、その時間を待てずに、
「聞いてる?」
「さっき言ったよね」
と言葉を重ね、どんどん声を強くしていたのです。
これが私の空回りの正体でした。
「言っても動かない=言うことを聞かない」と考えるのではなく、
「今はまだ切り替えている途中なのかもしれない」
と捉えられるようになると、私の関わり方も変わっていきました。

4.エスカレートしない関わり方―同じトーンで伝える4ステップ
そこで私が試したのは、発達科学コミュニケーション(発コミュ)で学んだ、提案を“同じトーン”で繰り返し伝えることでした。
私が意識したのは、次の4つです。
- やってほしいことを短く伝える
- 動かなくても、少し待つ
- 声を強めず、 同じトーンで、同じ提案をする
- 動き始めたら、すぐに褒める
以前までは一度伝えて動かなかったとき、「聞いてる?」「早くして」「何回言ったらわかるの!」 と、声も言葉もどんどん強くなっていました。
でも子どもにとっては、何回目の声かけでも、まだ“処理の途中”かもしれない。
聞こえていないのではなく、聞こえてから動くまでに時間がかかっているだけ。
そう思いながら、「さっき言ったよね」と重ねないようにし、責める言葉を足さず、同じトーンで同じことを伝えるように心がけました。
その結果、子どもは少しずつ自分で動けるようになり、私はイライラを大きくせずに済むようになりました。
必要だったのは、子どもがすぐ動くような「うまい言い方」を探すことではなく、私が声をエスカレートさせず、子どもが動き出すのを待つことだったのです。

5.怒らなくても動けた日。小さな変化のはじまり
ある日、おやつのあとに何も言わなくても、子どもが自分から袋をゴミ箱に捨てました。
毎回ではありません。
それでも、確実に変化はありました。
同じトーンで伝え続ける中で、子どもは少しずつ自分で動ける場面が増えていきました。
切り替えにかかる時間も、前より短くなっています。
そして変わったのは、子どもだけではありません。
私は「また言わなきゃ」と身構えなくなり、イライラが大きくなる前に止まれるようになりました。
怒らずに済む回数が、少しずつ増えていったのです。
この関わり方は、お風呂に入らないときや出かける準備をしないときにも応用できています。
完璧ではありませんが、親子でぶつかる回数は確実に減りました。
もし今、何度言っても子どもが切り替えられず、つい声が強くなってしまっているなら、まずは次の一回だけ、声を強めず同じトーンでもう一度伝えてみてください。
そして、ほんの少しでも動き始めたら、その瞬間を言葉にして伝えてみてください。
その小さな積み重ねが、子どもが自分から動き出す力を育てる一歩になるかもしれません。

執筆者:夏井 さや
発達科学コミュニケーション トレーナー





