「不安が強い子どもには、共感して寄り添いましょう」と育児サイトには書いてあるのに、共感の声かけをすると怒り出す…そんなことはありませんか?この記事では、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが怒る原因と共感の仕方についてお伝えします。
1.不安が強いASDの子どもに共感の声かけが逆効果?
子どもに「そうだね、分かるよ」という共感の言葉をかけると、安心感を与えることができると言われますよね。
多くの育児本やサイトでも、共感の声かけは効果的な方法だとされています。
しかし、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもには、共感の声掛けが思わぬ結果を招くことがあります。
例えば、子どもに「そうだね。いいと思うよ」と声をかけたのに、「そんなこと言わないで!」と怒り出してしまったり、癇癪を起こしてしまうことはありませんか?
ASDの子どもは、不安が強い傾向があります。
このタイプには、親が良かれと思ってかけた言葉が逆効果になることがあります。
なぜ、共感の言葉が逆効果になるのでしょうか?その理由を見ていきましょう。

2.声掛けが響かない理由は、ASDの特性「完璧主義」
ASDの子どもには、脳の特性として「0か100かで考える」傾向があり、これが完璧主義につながると言われています。
例えば、何かをするときに、「できる」か「できない」かのどちらかで判断してしまうため、自分が満足できないとイライラや不安が募りやすくなります。
さらに、彼らは「こうなりたい!」「こうやりたい!」という目標が非常に高いことがあります。
そのため、目標に届かない自分に自己評価が下がり、親から「よく頑張ったね」と言われても、「全然ダメだ」と納得できないのです。
例えば、学校や園で絵を描く時間に、他の子が自分の描いた絵を嬉しそうに見せ合う中、ASDの子どもは細部にこだわりすぎて、「ここがうまく描けていない」と落ち込んでしまうことがあります。
親や先生がどれだけ「よくできたね」と言っても、本人が「思った通りにできていない」と感じている場合、共感の言葉が逆効果になるというわけです。

3.共感したのに怒り出す息子の気持ち
息子が幼稚園の年中の頃、絵を描くことにハマって、毎日いろんな絵を描いていました。
図鑑を見てカブトムシを真似てみたり、想像して怪獣を描いてみたり。
私は良かれと思い「いいね!かっこいい」「この角のところ、よく見て描いたんだね」など共感の声掛けを心がけていましたが、ある日、息子が突然怒り出しました。
「全然上手に描けない!もう描かない!」と言って怒り出し、描いた紙をぐちゃぐちゃにしたり、「もうママが書いて!」と癇癪になってしまったのです。
えー?何が悪かったの?何て言えば良かったの?
私は戸惑い、途方に暮れました。
そこで私は、息子の機嫌の良いときに「絵が上手に描けないって言っているとき、ママに何て言ってほしかった?」と聞いてみました。
すると息子がこう本音を話してくれました。
「ママがいいねって言っても、僕にとっては全然上手に描けていなかったから嫌なの。上手に描きたいの」
そう。私は共感しているつもりでしたが、実際には息子の「自分で納得できていない気持ち」に寄り添えていなかったのです。
完璧主義の息子にとって、「かっこいいね」という言葉は共感ではなかったのです。

4.共感が難しいときに!ASDの子どもの癇癪と要求への正しい接し方
息子が思い通りに描けず癇癪を起こしているとき、私が何を言っても怒りがヒートアップすることに気づき、何も話しかけず見守ることにしました。
ASDの子どもが癇癪を起こしているときは、脳が過剰に興奮し、理性的な言葉が届きにくいと言われています。
そのため、まずは落ち着くのを待つことが大切です。
見守る対応を続ける中で、息子が「もう描けないからママが描いて」と言ってきた事がありました。
私は息子の思いに応え、絵を描いてあげました。
それからしばらくは「ママ描いて」とばかり言われ、時には私の絵にダメ出しをされることもありましたが、「自分で描いて」と言いたい気持ちをグッと我慢して、息子が満足するまで描き続けました。
するとある日、息子は自分で描き始めたのです!
そのとき、「描いてるね。一生懸命だね」と過程を褒める声掛けを意識しました。
息子は何も言いません。
そして、一人で描き終え「ママ見て」と持ってきたので、「一生懸命描いてたね。見てたよ」と伝えました。
その時の息子の笑顔は達成感に満ち溢れ、とても嬉しそうにしていました。
それ以降、自分から積極的に描くようになったのです。

5.完璧主義を和らげる自己肯定感を育てる方法
完璧主義を和らげるためには、子どもが「自分にOKを出せる力」、つまり自己肯定感を育てることが大切です。
そのためには結果ではなく、過程や努力を認める声掛けを意識しましょう。
「できたこと」ではなく、「やろうとしていること」「挑戦していること」に目を向けることがポイントです。
また、ASDの子どもは「要求を否定されない」ことで、自分が受け入れられていると感じます。
小学校に入る前の時期は、自己肯定感を育てる黄金期。
この時期に適切なサポートをすることで、子どもは自分に自信を持ちやすくなります。
ASDの子どもの完璧主義や不安の強さを理解し、共感の方法を工夫することで、少しずつ自己肯定感を育てることができます。
焦らず、ゆっくりと見守りながらサポートしていきましょう。

執筆者:増満咲奈
発達科学コミュニケーション トレーナー