「子どもには、共感して寄り添いましょう」とどの本にも載っているのに、共感の声掛けをすると怒り出す。そんなときありませんか?この記事では、分離不安の子どもが怒る原因と共感の仕方についてお伝えします。
1.分離不安っ子へ共感の声掛けは必須なはずなのに?
不安の強い分離不安の子どもへの「そうだね。そう思うよ。」という共感の言葉は、『自分を肯定されている』と感じるので安心感を与えることができますよね。
いつもと同じように子どもに「そうだね。いいと思うよ」と共感の声掛けをしたのに、「そんなこと言わないで!」と怒り出し、癇癪がひどくなることありませんか?
え?何がいけなかったの?と困惑してしまいますよね。
2.原因は完璧主義
分離不安の子どもは、脳の特性により、0か100かで考える完璧主義なところがあります。
こうなりたい!こうやりたい!という目指す目標が高すぎて、それに届かない自分にイライラ。
親からすれば、頑張っている姿を褒めているつもりが、子ども本人からすればこれくらいじゃダメだと自信を無くしている状態です。
できたか、できないかは、自分が一番よく分かっている。
それに対して何を言われても、納得できないのです。
また、完璧主義の裏には、自己評価が低いということも隠れています。
それは、分離不安の子ども自身の高い価値基準があるため、それに達しないと失敗したと自己評価が低くなりがちだからです。
それゆえになかなか、自分にOKが出せない面があります。
3.共感したのに、怒り出す息子
息子が幼稚園の年中の頃、絵を描くことにハマって、毎日いろんな絵を描いていました。
図鑑を見てカブトムシを真似てみたり、想像して怪獣を描いてみたり。
私は良かれと思い「いいね!かっこいい」「この角のところ、よく見て描いたんだね」など共感の声掛けを心がけていました。
ところがある日、いつものように「いいね」と共感の声掛けをしたのに、「全然上手に描けない!もう描かない!」と言って怒り出し、描いた紙をぐちゃぐちゃにしたり、「もうママが書いて!」と癇癪になってしまったのです。
えー?何が悪かったの?何て言えば良かったの?
度々このようなことがあるので、私は、どう対応したらいいのか途方に暮れていました。
そこで私は、息子の機嫌の良いときに「絵が上手に描けないって言っているとき、ママに何て言ってほしかった?」と聞いてみました。
すると息子が「ママがいいねって言っても、僕にとっては全然上手に描けていなかったから嫌なの。上手に描きたいの」と本音を話してくれたのです。
そう。私は共感しているつもりでいただけで、息子の「上手く描けていなかった」という気持ちに全然共感できていなかったのです。
思い通りに描けていないと思っている息子に「かっこいいね」の言葉は全然納得できず、共感ではなかったのです。
4.癇癪には見守り、要求にはとことん応える
私は、息子が思うように描けず癇癪を起こしているときは、何も話しかけないで見守ることにしました。
というのも、息子の癇癪に対してどんな言葉をかけてもますます怒り出すので、ヒートアップした脳には届いていないことが分かったからです。
そんな見守りの対応を続けていましたが、息子は、うまく描けない時はイライラして「もういい!」とそのままやめてしまうことが多かったです。
でもそんなある日、怒りながらも「もう描けないから、ママが描いて」と言ってきたことがあったのです。
その時、私は息子の思いに答えて、絵を一緒に描いてあげました。
それからは自分で描こうとせず、いつも「ママ描いて」と持ってくるようになりました。
「自分で描いて」と言いたい気持ちをグッと我慢して、息子が飽きるほど描いてあげました。
時には、私の描いた絵に、「全然違う」とダメ出しを食らうこともありましたが、根気強く、息子に訊ねながら、何度も描き直しました。
するとある日、息子は自分で描き始めたのです。
描きはじめてから「描いてるんだね」と労いの言葉をかけました。
息子は何も言いません。
「一生懸命描いているね」
息子は何も言いません。
そして、一人で描き終え「ママ見て」と持ってきたので、「一生懸命描いてたね。見てたよ。いいね」と共感の声掛けをしました。
その時の息子の笑顔は達成感に満ち溢れ、とても嬉しそうにしていました。
それからは、水を得た魚のように、一人でどんどん描くようになり、今では、何も言わずにさっさと描いています。
5.幼児期は自己肯定感を育てる黄金期
完璧主義を和らげるには、自分にOKを出せる自己肯定感を育てることです。
自己肯定感を育てるには、結果でなく過程を褒めることが大切です。
できたことではなく、やろうとしたこと、やっていることです。
そして、自分の要求を否定されないことで、肯定されたと感じます。
小学校低学年以降は、周りの子と違うということを感じやすい発達段階に入り、ちょっとしたことで劣等感を感じやすくなります。
分離不安の子どもは、特に不安が強いため、もっと早い段階からそのような気持ちを持ちやすいので、早めに対応してあげたいところです。
幼児期の脳は柔軟で、特にこの自己肯定感が育ちやすい発達黄金期です。
早目早めの対応で、ぐんぐん育っていきますよ。
執筆者:
発達科学コミュニケーション トレーナー
増満咲奈