発達凸凹っ子は、独自のマイルールを持つ子が多いです。それは、決まった行動や物があることで、安心できるから。これは子どもの性格ではなく、脳の特性によるものです。我が子のこだわりとどのように向き合っていけば良いのか、そのポイントをお伝えします。
1.息子のこだわりは譲れない!
我が子の「こだわりの強さ」に困っているママはいませんか?
母子分離不安があるうちの息子は、自分なりのマイルール(こだわり)をいくつか持っています。
その中でも特に強いこだわりについて、2つお話しさせてください。
まず、一番のこだわりは、枕カバーです。
元々は肌触りが気に入って購入したカバーでしたが、使い続けるうちに息子はそのカバーをかけた枕じゃないと寝られなくなりました。
同じ種類の新しいカバーに変えるのもダメ。
もう何年も使っていて、生地が伸びてきたり端が破れてきたりしていますが、そのカバーが良いようです。
そのため、旅行に行く際も必ず持参し、ホテルの枕にカバーを付けて使用しています。
家にいる際も、カバーを触ると安心するのか、ちょくちょく寝室に触りに行ったり、匂いをクンクン嗅いだりして気持ちを落ち着かせています。
2つ目のこだわりは、朝のトイレです。
息子は朝、便意があってもなくても、必ず20分以上はトイレに座るというルーティーンがあります。
健康のために朝のトイレの時間を取る人は多いと思いますが、息子の中ではそれがとても重要で、その時間が十分にとれないと不安で仕方がなくなってしまうのです。
また、朝のトイレタイムには必ず何かおもちゃを持参するというルールもあります。
時間が長いからということもありますが、おもちゃがないと落ち着かないのだそうです。
そのため、我が家の朝は大忙し!
息子のトイレタイムを十分に確保するために逆算で動く必要がありますし、他の家族は息子がトイレに入る前に用を済まさないと、しばらくはトイレを利用できなくなってしまうのです。
そんなバタバタもあり、私には息子のそのこだわりの強さやマイルールが理解できずにいました。
しかし、発達凸凹っ子や不安が強い子の「こだわり」には、理由があったのです。
2.発達凸凹っ子のこだわりが強い理由
一言で「こだわり」と言っても、その対象は子どもによって多岐にわたります。
・物へのこだわり(ぬいぐるみ、タオルなど特定のものを持ち歩きたがる)
・現象へのこだわり(ゲームの勝ち負けにこだわる、など)
・行動へのこだわり(いつも同じ道を通りたがる、朝のルーティーンを崩せない、など)
このように、様々な事柄に対するこだわりが存在します。
ある物や場所など、特定の対象に強い執着を見せ、それが変化することを嫌ったり、気に入った言葉や行動を繰り返したりすることも、こだわりの一つです。
発達凸凹っ子では特に、行動に対するこだわりを持つ子が多くいます。
基本的に、こだわり行動は『子どもが自分自身を安定させるためにやっている行為』です。
見通しがつかないこと、初めてのことを嫌う凸凹っ子は、決まったルーティーン行動を繰り返すことで安心でき、いつも通りの自分でいられるのです。
こだわり行動は、一見「わがまま」や「我が強い」「融通がきかない」と思われがちですが、これは子ども自身の性格のせいではありません。
発達段階における脳の特性によるものです。
そのため、周囲が無理にやめさせようとしても、本人が自分の意思でコントロールできない場合もあります。
そこを何度も注意したり、やめさせようとしたりすることで、子どもの中で「自分は言われた通りにできない」という失敗経験が積み重なってしまい、自己肯定感の低下を招く恐れもあります。
また、自分が大切にしているもの、事柄を否定されることは、子どもにとって大きな悲しみでありストレスですよね。
周囲の大人は、凸凹っ子が持つこだわりを理解した上で、適切なサポートをしていく必要があります。
3.こだわりとの向き合い方のポイント3つ
それでは、発達凸凹の子たちが持つ「こだわり」に対して、どのような形で向き合っていけば良いのでしょうか。
3つのポイントに分けてご紹介します。
◆①認めて共感する
まずは、子どものこだわりをしっかりと認めて、共感してあげることです。
「そっか、そうしたいんだね」
「このぬいぐるみと一緒にいると安心なんだね」
どんな行動でも、まずは子どもの「やりたい」という気持ちに共感してあげる。
それが、こだわりに対応する第一歩です。
否定の言葉は封印し、共感の言葉で子どもとの信頼関係を築きましょう。
◆②無理にやめさせずに待つ
共感したら、次はそのこだわりの行動を見守り、待ちます。
一旦何かを始めると、その行動をいつまでもやり続ける子がいますが、このようにエンドレスに見えるこだわり行動の中でも、一瞬子どもがフッと気持ちを緩めたり、動きが止まるタイミングがあります。
そのときを見計らって、「集中していたね」「やりたいことができたね」などと声をかけてあげると、子どもは行動に区切りがつけやすくなります。
無理にやめさせようとしたり、別のことをさせようとするのは、反発して逆効果になりますので、子ども自身のタイミングを待って声をかけるようにしましょう。
また、タイマーやアラームを使って終了の見通しがつくようにすることもおすすめです。
その際は、時間の経過が目で見てわかるものだと、子どもも視覚的に確認することができます。
あらかじめ「○時までだよ」と伝えておいて、その時間までは静かに見守ってあげましょう。
◆③代わりの行動を子どもと一緒に考える
こだわり行動が、周囲に影響のないものなら良いですが、中には周りの迷惑になる行動もあります。
例えば、きれい好きで、授業中に自分の机の中を何度も整理したくなる子がいたとします。
本人はただ整理整頓しているだけのつもりでも、周囲の子からするとガサゴソと音が気になり、授業に集中できないことも考えられます。
このように、こだわり行動が周りに迷惑をかけてしまうような場合は、頭ごなしに否定するのではなく、まずは共感した上で、その行動に対して周囲がどのように感じるのかを話すことが大切です。
そして、代わりになるような落ち着く行動はないか、子どもと一緒に考えます。
この場合、「机の整理は休み時間にやろうね」と決めて、授業中は筆箱の中身を整理するだけにするとか、ノートをきれいに取ることに集中してみるとか、本人が納得できる別の行動を考えます。
この際に大切なのは、周囲が「代わりにこれをしなさい」と押し付けるのではなくて、あくまで本人が納得して決めることです。
こだわり行動は子ども自身の安定のための行為なので、大人が一方的にルールを決めてしまうと、発達凸凹っ子の場合かえって不安が強くなってしまうことも考えられます。
周囲に迷惑がかからないような行動で代わりになるものはないか、本人と一緒に考えましょう。
以上3つのポイントを意識することで、子どものこだわりへの対応がグンと楽になります。
前述した通り、こだわりは脳の特性によるものなので、介入しても治るものではありません。
しかし、成長とともにそのこだわりが薄くなっていったり、子ども自身がこだわりと上手に向き合えるようになったりしていくものだと思います。
我が子のこだわりがあまりに強いと、戸惑うこともあるかもしれませんが、「それがこの子の安心材料なんだな」という広い心で見て、こだわりと上手く付き合っていけるようにサポートしてあげましょう。
ママのそんな姿勢が、発達凸凹っ子の大きな安心につながります。
執筆者:
発達科学コミュニケーション トレーナー
長谷川まこ