「卒業式に行きたくない」と言われて、対応に迷っていませんか?子どもが卒業式に出たくない理由を、不安の特性や体験をもとに整理。子どもの心を守るために、親が大切にしたい考え方と選択肢をお伝えします。
1.卒業式に行きたくない子の親へ、まず知ってほしいこと
「卒業式に行きたくない…」
その言葉を子どもから聞いたとき、多くのママは胸がぎゅっと苦しくなるのではないでしょうか。
最後の行事だし、ここまで頑張ってきた姿を見届けたい。
でも一方で、無理をさせてまで行かせることが、本当にこの子のためなのか——。
まず、これだけはお伝えします。
『卒業式に行かない』という選択肢もあります。
もちろん、家庭の事情や学校の方針によってすぐに決められることではないかもしれません。
ただ 「必ず出なければならない」と一人で抱え込まなくていい、
子どもの心に大きな負担をかけてまで、同じ形にこだわらなくてもいい場合がある、
そんな視点もあることをまず知ってもらえたらと思います。
この記事では、「行かせるべきか」「欠席していいのか」という二択から一度離れて、子どもにとって本当に大切なことは何なのかを体験を交えながら一緒に考えていきます。

2.「卒業式に行きたくない」と言われて、私の心が揺れた日
我が家でも、娘から「卒業式に行きたくない」と言われたとき、私はすぐに答えを出すことができませんでした。
卒業式は、たった一度の節目。
できることなら、みんなと同じように参加させてあげたい。
けれど、娘が抱えている不安やこれまでの様子を思い返すと、「本当にそれが娘のためなのか?」という問いが、何度も浮かんできました。
我が家の娘には、次のような発達障害・グレーゾーンの特性があります。
・場面緘黙があり、人前で話すことが苦手
・大きな音や視線に強い不安を感じやすい
・人に注目される場面が大きなストレスになる
普段から大勢の人が集まる場所やイベントは極力避けていますが、必要な場合にはイヤーマフやイヤホンを利用したりしています。
卒業式は、
・大勢の前を歩く
・名前を呼ばれて返事をする
・壇上に上がり、卒業証書を受け取る
といった、娘にとって苦手な要素が一度に重なる行事でした。
さらに娘の通う小学校では卒業式前に在校生からの『卒業生を送る会』がありますし、卒業式当日は式以外にも、
・卒業アルバムに友達や先生がメッセージを書きあう
・在校生の輪を潜りながら玄関までお見送り
・玄関の外で同級生や先生方と写真を撮る
・こっそり友達とLINE交換
・お友達と卒業おめでとう会をする
など、様々なイベントが目白押し。
私達には楽しいイベントでも人と関わるのが苦手な娘にしたら、できるなら避けたい場所です。
「卒業式にそこまでして出る意味がわからない」
「卒業証書も、別に欲しくない」
そう言う娘の言葉の裏には、「やりたくない」ではなく、「これ以上自分を追い込めない」という必死な気持ちがあるように感じていました。
一方で、担任の先生や校長先生は、
「6年間頑張ってきた証として、できる限り娘さんの希望に添う形で卒業証書を渡したい」
という思いを、私に伝えてくださいました。
その言葉を聞いて、娘の負担は最優先に考えたいと思いながらも、
「行かせたほうがいいのかな」
「欠席して後悔しないかな」
と、親として揺れる気持ちが正直に生まれたのも事実です。

卒業式に行きたくない背景には、
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3. 「行きたくない」は甘えじゃない ——発達障害グレーゾーンの子に起きていること
卒業式に行きたくないという気持ちは、決して甘えではありません。
発達障害・グレーゾーンの子どもは、特性として
・環境の変化に強い不安を感じやすい
・先の見通しが立たない場面で緊張が高まりやすい
・注目される状況や「失敗できない空気」に敏感
といった傾向をもつことがあります。
卒業式は、いつもと違う流れ・空気・人の多さ・音・視線が一気に重なる行事です。
大人にとっては「一度きりの大切な式」でも、子どもにとっては安心を保つための処理が追いつかない状態になることもあります。
「少し頑張ればできるでしょ」
「保護者は我が子にしか興味ないから誰も見てないよ」
「大丈夫!気にしないで!すぐ終わるよ」
そう言われても、本人の中では“気持ちの問題”ではなく、体や神経が限界を迎えていることも少なくありません。
これは、性格や気合いの問題ではなく、その子の感じ方・受け取り方の特性です。
だからこそ、「行きたくない」という言葉は、逃げではなく自分を守るためのサインとして現れている場合があるのです。

4.行かない選択は、子どもの心を守る判断になることもある
子どもの心を壊してまで、やらなければいけない行事はありません。
卒業式は、出席したかどうかで価値が決まるものではなく、どんな気持ちで卒業を迎えたかがその子の中に残ります。
無理をして参加し「怖かった」「つらかった」という記憶だけが残る卒業と、
安心できる形で「大切にされた」「認めてもらえた」と感じられる卒業。
行かない選択は、逃げではなく子どもの未来を守るための判断になることもあるのです。

5.『卒業』をいい思い出にするために大人ができること
行かないと決めたからといって、『卒業』を大切にしないわけではありません。
大人の関わり方次第で、卒業は子どもにとって安心できる節目に変えることができます。
① 学校と相談し、別の形で卒業証書を受け取る
卒業証書は 「式に出席しなければもらえないもの」ではありません。
・式の前後に、校長先生から個別に受け取る
・教室や別室など、安心できる場所で渡してもらう
子どもにとって落ち着ける環境で区切りをつくることで、「卒業した」という実感を無理なく持たせることができます。
② 出席する場合も、負担を小さくする工夫をする
「全部は無理でも、ここまでならできそう」そんな場合もあります。
・当日の流れを事前に伝え、見通しをもたせる
・過去の卒業式の写真や動画を見て、雰囲気を知る
・途中参加・途中退出など、柔軟な参加の仕方を相談する
出る/出ないの二択ではなく、どうすれば安心して関われるかを一緒に考えることが大切です。
③ 家族で「卒業」を祝う時間をつくる
式に出席しない場合でも、卒業を祝う方法はいくつもあります。
・家族で「卒業おめでとう会」を開く
・子どもの好きな食事や場所を選ぶ
・「ここまで頑張ってきたね」と言葉で伝える
誰かに認めてもらえたという実感は、子どもの心にしっかり残ります。
◆我が家が選んだ卒業の形
我が家では、これらの選択肢を踏まえたうえで、学校と相談しながら娘が安心できる形で卒業を迎える方法を考えました。
・卒業生を送る会は、別室でリモート参加
・卒業式当日は欠席
・卒業証書は、最後の授業の日に校長先生から個別に受け取る
・場所は娘の教室、服装もいつも通り
ピリピリとした空気や緊張を避け、「安心できる卒業」を一緒につくることを選びました。
「式に出る」よりも「安心して区切りを迎える」ことを優先したのです。
卒業とは、子どもが次に進める状態で迎える節目。
そのために、子どもの特性を理解し、学校や周囲と連携することは大人にできるとても大切な役割だと感じています。
式に出席する子もいれば、しない子もいます。
どちらが正しいという答えはありません。
卒業式までには、まだ時間があります。
どの選択肢をとるにしても、お子さんの気持ちに耳を傾けながら、学校の先生方とも相談し「子どもが納得して安心できる形」を少しずつ考えてみてください。
卒業という節目が、お子さん自身にとって「卒業してよかった」と思える門出になりますように。

卒業という節目を
子どもの心が安心できる形で迎えることは
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執筆者:田中 さくら
発達科学コミュニケーション リサーチャー





