自分の思いを伝えられない発達障害・グレーゾーンの子どもたち。何も話してくれず、何を考えているのかがわからない…。心には思うことがたくさんあるけれど、言葉にするのが苦手な子どもたちにどう対応したらいいか困ったことはないですか?本記事では、そんな子どもたちが自分の気持ちを話せるようになるための関わり方のコツをご紹介します。
1.自分の思いを伝えられない発達障害・グレーゾーンの子どもたち
お子さんにこのような様子はありませんか?
✔︎困っているけれど、自分の思いを伝えられない
✔︎何をどう話せばいいのかわからない
✔︎何か伝えたいけれど、「ん”ーー」と言葉にならない
気持ちを言葉にできなくて、周りに思いが伝わらず、困っている子どもたち。
心の中に色々思いはあるものの言葉に表せず、本人も苦しんでいます。
学校で理不尽な思いをしても伝えられない…。友達に伝えことがあるのに言葉にできない…。困ったことがあっても助けを求められない…。
事が大きくなってからやっと発覚…なんてことも。
親としては、子どもは本当はどのような気持ちなのか、わかってあげたいものですよね。

2.言わないんじゃない。言えないんです。
私には小6の娘がいますが、小さい頃から自分の気持ちをあまり言わない子でした。
言わない代わりに態度や行動で表すタイプで、表情豊かな娘です。
何か伝えたいのに伝わらない時はイライラして物を投げたり(保育園時代)「ん”ーーー」と唸ったりしていました。
学校で困ったことがあっても私に話してくれることはなく、こちらから聞いても「・・・。」
学校で物凄く困っていたのに誰にも言わず(言えず)、ストレスがたまりに溜まり身体症状(登校前に頭痛、腹痛)が出て急に不登校になってしまいました。
この時私からすれば突然の出来事だったのですが、娘は身体症状が出るまで我慢してきた当然の結果だったのです。
当時小3だった娘は私からの問いかけに、黙秘権を行使しているかのように沈黙をつらぬいていました。
学校の先生も話を聞いてくれましたが、何を聞いても黙っているだけで、しまいに娘は泣き出してしまいました。
この時はわかりませんでしたが、娘のことをよく知っていくと発達障害・グレーゾーンの可能性がある事がわかりました。

3.話すのが苦手な理由
人間は『自分の思いを伝える』時、伝達系の脳のエリアを使っています。
この伝達系のエリアは、コミュニケーションの経験を通して、発達していきます。
発達障害やグレーゾーン、特にコミュニケーションが苦手な自閉傾向のある子は、幼少期から伝達系の発達がゆっくりなのが特徴です。
言葉で表現できずに、泣いたり怒ったりして表現する子どもが多く見られます。
伝達系の脳エリアは年齢が上がるにつれ、自然に伸びるので、小学生ならば自分の気持ちを伝えることができなくても、焦ることはないと言われています。
その理由は場数を踏んで発達していくからです。
私たち大人の中にも『口下手な人』や『話すのは苦手な人』は当たり前にいますよね。
個人差はありますが、ママの年齢でも伝達系のエリアは発達途中なんですよ!
とは言えども、子どもが自分の思いを伝えることができなくて困っている状況を見ていると、これからの将来が心配になりますね。
人とコミュニケーションをとり、自分の思いを伝える。
実は、これは親子間のコミュニケーションでも伸ばすことができます!

4.発達障害・グレーゾーンの話すのが苦手な子が自分の思いを話したくなるテクニック
将来のために苦手を克服しよう!と親が焦って荒治療をするのは逆効果なので、注意が必要です!
自分の思いを伝えられない子どもとのコミュニケーションでは、『自分から話したくなる』会話の仕方を工夫してみましょう。
ここからは、子どもが『自分から話したくなる』会話のコツを3つご紹介したいと思います!
◆①せかさない
自分の言葉で話すのが苦手な子は、話す前に頭の中で色々と考えて、ようやく言葉を発しています。
・何を話せんばいい?
・私ってどんな気持ち?
・変なこと言って怒られないかな?
・考えすぎてわかんなくなってきた…。
・考えてたら、次の質問…。
・もうわかんない〜!
・話すのやめとこ。
一つの質問を投げかけただけでも、頭の中でこんなことをぐるぐる考えているのかもしれません。
1つ質問したら返事が返ってくるまで待ちましょう。会話のキャッチボールはゆっくりが基本です!
決して、子どもが話さないからと言って矢継ぎ早に質問しないこと!待つときは笑顔で、焦らせないようにしましょう。
どうしても答えを待ってられない時は、「考えといてね。話せるようになったら教えてね。」で話を終わらせます。
質問した時は返答がないかもしれませんが、ふとした時に「あの時ね・・」と教えてくれる時がきますよ。
◆②質問の仕方を変える
オープンクエスチョン(自分の思いを話す)は苦手だけど、クローズドクエスチョン(YesかNoで答える)なら返事がしやすいです。
普段のママとの会話はクローズドクエスチョンでもOKですので、お子さんの気持ちを代弁してあげて会話は楽しいものと印象付けれるといいですね。
時々、お子さんの気持ちを聞いてあげて、その場で答えられなくてもOK。
何か話してくれたらニコニコ笑顔でたくさん褒めてあげてくださいね。
◆③子どもに興味を持つ
「あなたの気持ちを教えて?」と聞くより「あなたの好きなものは何?」
「〇〇先生教えて」と子ども自身のことについて興味を持って聞きます。
気持ちと聞かれると考え込んでしまう子でも、自分の好きなものなら話しやすいので会話のキャッチボールの練習になりますよ。

5.自分の思いを伝えることができるようになった娘の変化
小3で不登校になった発達障害・グレーゾーンの娘ですが、娘の返事を気長に待ったところ娘の本当の気持ちを知る事ができました。
何が好きで何が嫌いなのか。
学校の何が嫌で、何が苦手だったのか。
私は急に学校に行けなくなったと思っていたけれど、本当は保育園の頃から集団が苦手だったこと。
味覚過敏で給食が食べれなかったのに保育園の先生に遊び食べをしていると勘違いされいつも残されていたこと。
感覚過敏があって小学校の制服が着れないことなど…。
数年に渡って辛い思いをしてきたことをゆっくり時間をかけて、自分の言葉で伝えてくれました。
しかし、辛いことだけではありません。
娘の気持ちを知ろうとすると娘も喜んでたくさん教えてくれるようになり、自分から話しかけてくれるようになりました。
娘の今まで知らなかった好きなことがわかり、一緒に楽しめるようになりました。
また自分の感覚や感じ方が説明できるようになり、娘の苦手なことがわかったので学校側に対策をお願いして登校できるようになっています。
自分の思いを伝えられない子どもとの関わりは、『焦らずゆっくり』が基本です!
お子さんが自分の思いを伝えるきっかけとなるコミュニケーションを、ぜひご家庭で実践されてみてくださいね。

執筆者:田中さくら
発達科学コミュニケーション リサーチャー