「トイレに行きなさい!」と何度言ってもギリギリまで行かなかったり、漏らしてしまったり…。実はその悩み、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもあるあるです!なかなかトイレに行かないASDの息子が、自らトイレに行けるようになった対応をご紹介します!
1.「トイレに行かない」はASDの子どもあるある?!理由と効果的な対応とは
トイレに行きたそうにしている子どもに、「トイレに行きなさい!」と言ってもなかなかトイレに行ってくれない…と困っているママはいませんか?
実はこれは、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもによくある困りごとなんです!
頭ごなしに叱ってもなかなか解決できない問題ですよね。
しかし、ASD特有の感覚に対する特性や性質への理解を深め、それに合った対応をしていくことで子どもが自らトイレに行くことができるようになります。
なかなかトイレに行けなかった息子がトイレに行けるようになった成功体験から、効果的だったテクニックをご紹介します!

2.「トイレに行きなさい!」と叱っても、なかなかトイレに行かない息子
我が家には、ASDグレーゾーンの4歳の男の子がいます。
楽しそうに大好きな車のおもちゃで遊んでいる息子。
ふと時計を見ると、前回のトイレから2時間も経過している!なんてことは日常茶飯事でした。
オムツは取れているものの、息子から「トイレに行きたい」と発信してくることはほとんどありません。
だからこちらがバタバタしていたり、他のことに気を取られたりしていると、必ずと言っていいほどトイレのタイミングを逃してしまうのです。
また、明らかにトイレにいきたそうにソワソワしている状態であっても、絶対に自分からはいきません。
こちらが「そろそろトイレに行った方がいいんじゃない?」と声をかけても、「まだ大丈夫!」と言って行こうとしない
少し強めに「絶対行った方がいいよ!」と言うと、怒ったり泣いたりしてしまう
そうこうしているうちに間に合わず漏らしてしまう…この流れが日常になっていました。
「だからトイレ行きなさいって言ったでしょ!!」と強く叱っても、次の日もまた同じことの繰り返し。
それが私にとっても息子にとっても、ストレスになっていました。

3.ASDの子どもの脳の特性からみる、トイレに行けない理由とは
「トイレに行きたいなら行けばいいのに!」と思いませんか?
どうして子どもがトイレに行かないのかが理解できないからこそ、イライラしてしまいますよね。
ネットで調べてみると「子どもがトイレを怖がっている」という情報が出てきたので、
トイレに息子が好きなキャラクターのポスターを貼ったり、ぬいぐるみを置いたりもしてみましたが、ほとんど効果はありませんでした。
うちの息子の場合は、トイレを怖がっていたわけではなかったのです。
では、なぜトイレに行かないのでしょうか?
実は、ASD特有の脳の特性に原因があったのです!
・感覚鈍麻
ASDの子どもの感覚過敏はよく取り上げられますが、実は反対に鈍麻な部分を持ち合わせていることも少なくありません。
感覚というと、視覚や聴覚、触覚、味覚などはよく知られていますよね。
これらと比べるとあまり聞き慣れないかもしれませんが、『内臓感覚』というものがあるのをご存じでしょうか。
内臓感覚とは、お腹が痛い、気持ちが悪い、喉が乾いた、お腹がすいた、などの感覚のことなのですが、尿意や便意もこの中に含まれます。
ASDの子どもの中には、この感覚が鈍い、つまり膀胱に尿が溜まっている感覚を感じにくい、便意がギリギリになるまでわからないという特性を持っている子がいます。
そのせいでトイレに行くタイミングがギリギリ、もしくは手遅れになってしまうのです。
また、ここでママに理解してほしいことは、「トイレに行きなさい」と言われた子どもが「まだ大丈夫」と返答するのは、嘘をついているわけではないということです。
・切り替えが苦手
ASDの子どもは、見通しを持って動くことが苦手なため、切り替えが上手ではありません。
特に、何かに没頭している時は、それ以外のことを一切考えられない状態に陥ってしまいます。
思考だけではなく、感覚の部分もシャットアウトしている状態なので、声かけをしても耳に入らなかったり、ソワソワするほどの尿意を感じていても上手く刺激を受け取ることができません。

4.イメージ戦略が効果的!すぐにできる具体的な対応
自分の意思ではなかなかコントロールできない『感覚』という部分にアプローチするためには、どのようなテクニックが有効なのでしょうか。
①トイレに行くということに対して、良いイメージを持たせる
ASDの子どもたちは繊細だからこそ、『ポジティブなイメージ』は何をするにも強力な武器となります。
しなければならないことをいかに楽しくさせるかがポイントなのです!
また、好きなことや楽しいことに対しては敏感に反応してくれるので、トイレ全体に良いイメージを持ってもらえるような声かけをしていきましょう。
実際に我が家で実践して効果のあった声かけをご紹介しますね。
「おトイレさんが、〇〇くんまだ来ないなー!って待ってるみたいだよ!」
「おしっこくんがもうお外に出たいよー!って言ってるよ!よーく自分の体の声を聞いてごらん?」
このように擬人化することで、想像力豊かな息子は自分なりのストーリーを描き、「トイレに行かなくちゃ!」と思えたのです。
ですが、毎回そればかりだと飽きてしまうので、トイレにシールを貼るコーナーを作りました。
「トイレに行けたらシールを貼ろう!ゴールまで行けるかな?」と伝えると、とても楽しんでトイレに行くことができたので、シールが好きなお子さんにはオススメです!
②タイミングよく声かけする
何かに夢中になっている時、それをやめさせてトイレに連れていくのはものすごく大変なので、何かを始める前にトイレを済ますということです。
もしくは、「少し集中力が切れてきたな」という瞬間に声をかけるようにしましょう。
その際も、
「先にトイレに行っておいたから、ゆっくり〇〇して遊べるよね!」
「そろそろトイレに行って、次は〇〇で遊ばない?」
など、『トイレに行った後に楽しいことが待っている』という声かけをしていきましょう。
そうすることで、トイレに行くというハードルがぐっと下がります。
③失敗しても叱らない
ASDの子どもは「失敗する」ということにとても敏感です。
トイレ=失敗というイメージを持ってしまうと、トイレ=イヤなこととして記憶してしまい、よりトイレに行くことが難しくなってしまう可能性があります。
たとえ間に合わないということがあったとしても、叱ったり責めたりしないで、「大丈夫だよ、着替えればいいからね」などと優しく声をかけてあげてください。

5.自分でトイレに行けるようになった息子
これらの対応を繰り返すことで、息子はトイレにスムーズに行くことができるようになりました。
また、最初は私の声かけでトイレに行っていましたが、最近では、自分から「トイレ行ってくるね!」と行動してくれるまでに成長しました。
子どもが自分でトイレに行けるようになる
ただそれだけでママの負担はすごく減ると思います!
「どうしたら楽しんでトイレに行ってくれるかな?」とママ自身がポジティブに捉え、子どもの変化や成長を楽しみながら、アプローチしてみてくださいね。

執筆者:中谷 そら
発達科学コミュニケーション トレーナー