食事に着替えにトイレにお風呂…全てのことにとにかく手こずる!時間がかかる! こだわりが強いASDの子育てに苦戦しているママはいませんか? 子どものこだわりや執着を和らげて、ママも子どももストレスフリーな生活を送る! そのための秘訣をご紹介します。
1.子どものこだわりを和らげて日常生活をラクにする対応とは
周りの子は難なくできるようなことでも、自閉スペクトラム症(ASD)の子は強いこだわりを発揮したり、時間がかかったりして、食事、着替え、トイレ、遊びの全てがママにとっては苦労の連続…
こちらが「こうしてほしい」と思えば思うほど、反対のことばかりしている子どもの姿を見て、毎日のように怒ったり泣いたりしているママがたくさんいらっしゃると思います。
ここでは、そんなママと子どものすれ違いを解消し、お互いがラクになるための対応についてお伝えしていきます。

2.「この子がわがままなのは私の育て方が悪かったから?」不安を息子にぶつけては後悔する日々
私には4歳のASDグレーゾーンの息子がいます。
人一倍敏感で、こだわりを強く持っているため、何をするにも拒否や拒絶から入るのが常。
彼の中では細部まで『正解』が決まっているので、そこから少しでも外れてしまうと、受け入れられず、泣いたり怒ったりします。
具体的に例をあげると、
・ごはんは冷たいぐらいに冷めていなと食べられない
・お茶は冷蔵庫でしっかり冷やしたものでなければ飲めない
・ソース味のものは「辛い」と言って食べない
・お気に入りのお菓子のストックが切れていると泣いて怒る
・りんごなどのしゃりしゃりした食感のものは一切食べられない
・基本的にトイレには行きたくない
・お風呂に入るのも嫌がる
・着替えは全く自分でしようとしない
・遊びやゲームでは絶対に負けたくない
・塗り絵やシール貼り、ワークの点線なぞりは、少しでもはみ出ることが許せない
このような感じです。
もちろん、もっと細かい部分をあげるとキリがありませんが、ここにあげたものだけ見ていただいても、彼が一日のあらゆる場面で強いこだわりを発揮し
「ママ対応してよ!」と泣いて怒っていたということが想像していただけるかと思います。
私は、彼のこだわりや要求に応えてあげたいと思う一方で、周りのお子さんと比べてしまい
「このままでは小学校に上がった時に困るのではないか」
「ワガママなら、もっときちんと躾けなければいけないのではないか」
と不安に思っていました。
また、毎日、毎回、完璧な対応を求める息子に対し、イライラし、疲れ切っていました。
こちらが怒りや悲しみなどの負の感情をぶつけてしまったことも何度もありましたが、それで状況が良くなったことは一度もありません。
それどころか、こちらがネガティブになればなるほど、彼のこだわりやワガママとも取れる要求は加速していきました。

3.ASDの子どもに強いこだわりがある理由とは
そもそも、ASDの子どもはどうしてこのような強いこだわりを持ってしまうのでしょうか。
「ママを困らせたい!」とわざとワガママを言っているのでしょうか。
実はこれは単なるワガママではなく、脳の特性からくるものだったのです。
・感覚過敏
ASDの子どもは、何らかの感覚過敏を持っていると言われています。
感覚過敏というのは、
・視覚
・聴覚
・嗅覚
・味覚
・触覚
・温度感覚
などの感覚が人よりも敏感で、反応してしまう状態のことです。
私たちが気づかないような些細な刺激に対しても大きく反応してしまうので、本人にとってもストレスになっている場合があります。
つまり、本人も「どうしたらいいんだろう」と困っているということです。
感覚は目に見えないものなので、「どれぐらい不快に思うのか」を他の人にわかってもらうのはとても難しく、「伝えたいけど伝わらない!」という気持ちがさらに本人のストレスになっているかもしれません。
・恐怖心が大きい
ASDの子どもは、繊細で不安や恐怖を強く感じる傾向にあります。
自分が経験したことがないものは、「怖い」と感じてしまうのです。
そのため、毎日同じ、いつもと同じ、という状況を好み、それが崩れることを恐れます。
臨機応変に行動や気持ちを変えるということが非常に苦手なのです。
・自信がない
人に理解してもらいづらいこだわりや感覚を持っているため、どこにいても否定されたり怒られることが多いのです。
もしくは、怒られるのが怖いため、外では自分の特性を一生懸命隠して周りに合わせようと必死に頑張っています。
本来の自分を誰にも認めてもらえず、否定され続けると、大人でもどんどん自信をなくしてしまいますよね。
自信がない状態では、新しいことを受け入れたり、挑戦する気力を持つこともできません。

4.子どものこだわりや執着を和らげ、日常生活をスムーズに送るための3つのポイント
一つ一つの行動をスムーズにするためには、まずこだわりの強さを和らげる必要があります。
そのためには、自分に自信を持つということが必要不可欠です。
自信を持つことができると、新しいことを受け入れる余裕を持てるようになり、こだわりに執着する程度や頻度がどんどん減っていき、本人はもちろん、ママもとってもラクになります。
そのために効果的な方法を3つご紹介します。
・『できないことを指摘したり注意したりしない』
子どもの脳は未熟なので、できないこともたくさんありますし、時間がかかってしまうこともたくさんあります。
それをいちいち指摘したり叱ったりしていては、いつまで経っても子どもの自信を育てることはできないので、思い切って指摘や躾けをやめてみてください。
見ているとイライラする!と思うかもしれませんが、そういう時は研究者になったつもりで子どもを観察するのがオススメです!
今まで頭ごなしに怒っていたり、よく見ないまま注意していたことを改めて観察すると、子どもが自分なりに考えているということが見えてきて、新鮮に感じられるので、イライラが抑えられますよ!
・当たり前のことを何度も褒める
現状で子どもができていることは、どんな些細なことでも褒めるようにします。
褒めるというと大袈裟に感じるかもしれませんが、どんなことでも大丈夫なので、ママ自身のハードルを下げて取り組んでください。
例えば、
「朝、起きれたね!」
「ごはん食べようとしてる!すごい!」
「集中して遊んでいるね」
このような声かけです。
ポイントは、完了していないことも、やり始めや過程をしっかり褒めるということ。
子どもは、一つのことを終わらせるまで集中力が続かないということが多いので、「できたら褒めよう」と思っていると褒めるタイミングを見失ってしまいます。
最後までできなくても、取り組んだこと自体が素晴らしいんだ!という大前提を持って接してくださいね。
・ママが思っている3倍ぐらい待つ!
大人でも、何かに手こずっている時に「こんなに簡単なことなのに、どうしてもっと早くできないの?」と言われるとすごく悲しいですよね。
また、同時に「私だってもっとはやくやりたいと思ってるのに!」と思いませんか?
子どもも同じです。
まだ脳の発達が未熟な子どもは、「はやくしなさい」と言われても、その方法がわからないのです。
また、ASDの子どもは不器用な子が多いという傾向もあるので、余計にジレンマを抱えているかもしれません。
「やらないんじゃない、できないんだ」という大らかな気持ちで、待ってあげるということを意識してみてください。
とはいえ、どうしても時間が決まっていることもありますよね。
そういう時は、「はやくしなさい」ではなく、「〇〇まで終わったら、▲▲しようか」と優しく声をかけてあげるのがオススメです!
今やっていることを無理にやめさせるような声かけではなく、ラインを決めて動かしてあげること、具体的な次の動きを指示してあげることがポイントとなります。
そして、何より最強のアイテムはママの笑顔です!これを忘れないでくださいね。
対応を実践して2週間がすぎた頃、息子の食に対するこだわりが目に見えて和らぎはじめました。
多少の熱さを許容できるようになったり、食べたことのない物に挑戦しようとする姿が見られたのです。
また、塗り絵をする時に、「ちょっとぐらいはみ出てもいいよね」と言いながら、楽しそうに取り組む姿も見られるようになりました。
こだわりが強すぎると、周りを振り回すだけでなく、自分自身の首も締めてしまうので、生活を楽しむということが難しくなってしまいます。
子どもの強いこだわりや要求は、「なんとかしたい!」というSOSなのかもしれません。
そんな状況から子どもを救い出せるのは、毎日一緒に過ごしているママだけなのです!
ぜひ、適切な対応を実践し、子どものヒーローになってあげてくださいね。

執筆者:中谷 そら
発達科学コミュニケーション トレーナー