できていたのにできなくなった子ども──「お出かけできない」娘が再び動き出した “記憶スイッチ”とは?

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「できていたのにできなくなった…」たった一度の出来事がきっかけで、“お出かけできない”状態になった子ども。今回は、ASDグレーゾーンの娘が再び動き出せた、ママの“記憶スイッチ”を使った関わり方をご紹介します。
 
 

1.出かけるのが大好きだった娘に起きた突然の変化

 
 
出かけるのが大好きだった娘
 
 
週末になると 「今日はどこに行くの?」「遊園地行きたい!」といつも目を輝かせていました。
 
 
でもある日、学校の校外学習の帰りに乗ったバスの中で、同じクラスの子が吐いてしまう出来事がありました
 
 
それは一見、ちょっとした出来事のように見えますが、その日から娘の様子が変わってしまったのです。
 
 
「今週末は〇〇にお出かけするよ〜」と言っても、
 
「どこまで行くの?」
「何分かかる?」
「車に酔うかも…」
「遠いところは行きたくない」
 
そう言って、お出かけを嫌がるようになりました
 
 
突然、「できていたことが、できなくなって」しまったのです。
 
 
子ども 泣き顔
 
 
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2.ASDグレーゾーンの子どもが「お出かけできない」理由

 
 
娘の突然の変化に戸惑いながらも、「なぜこんなに嫌がるようになってしまったのか?」を考えていくうちに、こんなことが見えてきました。
 
 
私たちの行動は、実は「今の気分」だけで決まっているわけではありません。
脳の中にある「記憶」の力が、大きく関わっているのです。
 
 
記憶をつかさどっているのは「海馬(かいば)」という場所。
ここには、体験したことや覚えたことがたくさんしまわれています
 
 
そしてこの「海馬」の記憶が、次の行動をどうするかを決めるヒントになっているのです。
 
 
たとえば、
「前にこの道を歩いてうまく行ったから、今回も大丈夫」
「この前もできたし、きっとまたできる!」
 
こんなふうに、「できた記憶」は、子どもにとって安心材料になります
 
 
しかし、自閉スペクトラム症(ASD)グレーゾーンの子どもは、不安を感じやすかったり、ネガティブな体験をずっと引きずってしまう特性があります。
 
 
「怖かった」「びっくりした」記憶を強く「海馬」に残してしまうことで、 次の行動を止めてしまうこともあるのです。
 
 
わが家の娘の場合がまさにそうでした。
 
 
校外学習の帰りのバスで、同じクラスの子が吐いてしまった出来事が 記憶に強く残ったことで、
 
「自分も吐くかもしれない」
「怖い」
「だから車に乗りたくない」
 
お出かけを拒否することに繋がってしまったのです。
 
 
親子
 
 

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3.私が実践した「できた記憶」を思い出させる”記憶スイッチ”

 
 
このような場合、
 
「そんなの気にしすぎだよ」
「めったにあることじゃないよ」
 
と言っても、なかなか本人には届きません。
 
 
だからこそ大切なのは、
 
「前にできたよね」
「楽しかったよね」
 
安心できた記憶を思い出させること。
 
 
娘の不安を少しでも和らげるように 「できた時の体験を思い出させること」を意識的に行いました。
 
 
たとえば、目的地までの時間を伝えるときには、 娘にとって安心できる「いつもの場所」を例に出して伝えました。
 
 
「20分くらいだから、習い事に行くくらいの距離だね」
「30分なら、おじいちゃんの家と同じくらいだよ」
「1時間かかるけど、従姉妹の家に行ったときと一緒だね」
 
 
そうすると、 「そうか、あのときは大丈夫だったな」 と自然に思い出すことができるようになります。
 
 
また、「そのとき気持ち悪くなった?」と確認すると、 「なってない」と答えてくれたので、
 
じゃあ今回も同じくらいだし、きっと大丈夫だね
 
安心を伝えるようにしました。
 
 
さらに、以前3時間ほどかけて出かけた遊園地の楽しい思い出や、 旅先でのワクワクした体験も、たびたび話題に出すようにしました。
 
 
こうした声かけを続けていくうちに、娘の中に少しずつ変化が現れました。
 
車に乗って出かけられるようになった
不安を口にすることが減ってきた
・たとえ不安になっても 「でも前に酔わなかったから大丈夫だよね!」と自分で言えるようになった
 
 
まだ長時間の遠出は難しいけれど、「また遊園地に行きたい!」と口にしてくれるようになったことが、私には何よりの希望でした。
 
 
感謝
 
 

4.できなくなるのは、成長のひとつの過程かもしれない

 
 
たった一度のネガティブな出来事がきっかけで、「できていたことができなくなる」
 
 
それは、ASDグレーゾーンの子どもが持つ“記憶と感情のつながりやすさ”という特性によるものかもしれません。
 
 
でもだからこそ、「できていた記憶」をもう一度思い出させ、積み重ねていくことで、 子どもは再び動き出す力を持っている
 
 
私は今回の経験で、それを強く感じました。
 
 
できなくなることは、心が育っているサインかもしれません。
 
 
焦らず、ひとつひとつ「できた」を重ねながら、 子どもと一緒に前に進んでいきたいですね。
 
 
親子
 
 
 
 
 
執筆者: 片庭 はな
発達科学コミュニケーション アンバサダー
 
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