母子登校がつらいと感じる日々が続き、出口が見えない…。長く続いたわが家も、安心と小さな「できた」を積み重ねていく中で、息子が自分から「ひとりで行く」と言いました。本記事では、卒業に向かったきっかけと回復までの順番をお伝えします。
1.母子登校がつらいと感じ、限界を感じているママへ
母子登校がつらいと感じながらも、毎朝付き添って学校へ行く。
「そのうち一人で行けるようになるはず」
そう思いながら続けてきたのに、気づけば数か月、あるいは数年が経っていた…。
自分の時間を後回しにして身も心も限界のはずなのに、「これで学校に行けるなら」と、ぎりぎりのところで踏ん張って付き添っているお母さんは、少なくないのではないでしょうか。
変わらないように見える毎日に、不安や焦りばかりが積み重なっていく…。
「どうしたらいいのか分からない…」そんな出口の見えない不安を抱えている方へ。
母子登校がつらいと感じる日々の中で、ふとこんな思いがよぎることはないでしょうか。
「この生活、いつまで続くの?」
「どうしたら、ひとりで行けるようになるの?」
周囲から「まだ付き添っているの?」と無理解な言葉をかけられ、「甘やかしているのかな」「私の育て方が間違っているのかも」と、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
この記事では、わが家が母子登校を卒業するまでに必要だったことを、家庭での関わりという視点から整理してお伝えします。
今の苦しい状況を抜けるための、小さなヒントになれば幸いです。

2.転校をきっかけに、不安が一気に高まった理由
ここからは、わが家の体験です。
息子は、幼少期から不安が強く、行き渋りが続いていました。
それでも少しずつ折り合いをつけながら学校へ通っていたのですが、小学生の頃に転校したことをきっかけに、状況が大きく変わりました。
土地勘のない場所への引っ越しだったこともあり、転校して間もない頃から、私が付き添って登校するようになりました。
ところが教室に入ると、周囲の視線や雰囲気が、息子には大きな負担となったようでした。
注目されることが負担になり、慣れない環境での「初めまして」のやり取りが、息子にとっては一度に刺激が入りすぎたのだと思います。
「一緒についてきてほしい」そう言われ、その後、教室に入ることが次第に難しくなり、保健室で過ごすようになりました。
ただ、保健室は人の出入りも多く、音や動き、視線などの刺激が入りやすい場所です。
息子は音に敏感なところがあり、周囲の声や物音が重なるとそれだけで疲れてしまうことがありました。
転校による環境の変化に加え、視線や音、人の動きといった刺激が一度に重なり、息子の脳は、ずっと緊張した状態が続いていたのだと思います。
息子にとっては、そこで落ち着いて過ごすことも簡単ではありませんでした。
不安が高まっているときは、そこに「慣れる」「がんばる」余裕がなく、刺激を受け取るだけで精一杯になります。
学校へ相談して別室で過ごすことになりましたが、付き添いが必要な状態となり、母子登校は続いていきました。

3.行きつ戻りつは、回復の途中で起きる自然な揺れ
付き添って登校しているのに、状況がなかなか変わらない。
行ける日もあれば、戻ってしまう日もある。
そんな行きつ戻りつが続くと、「このままで大丈夫なのかな」と不安になることがあるかもしれません。
不安が強く高まっているとき、子どもの脳は「がんばる」「慣れる」「挑戦する」段階には、まだ入れません。
まず必要なのは、安心できる状態をつくること。
付き添って登校できているように見えても、脳の中では緊張が強く、刺激を受け取るだけで精一杯、という場合があります。
この「行きつ戻りつ」は後退ではなく、回復の途中で起きる自然な揺れです。
今は止まっているように見えても、水面下では次に進むための土台が整っていっていることもあります。
ただ、その変化がどこで起きているのかは外からは分かりにくく、関わり方に迷うこともあるかもしれません。
進み方や変化の現れ方は人それぞれ違っていても、こうした揺れを繰り返しながら、目には見えなくても前へ進んでいることがあります。

4.卒業に向かっていった、わが家の「順番」
振り返ってみると、わが家の回復には順番がありました。
母子登校を続けながら、最初は「どうしたら一人で行けるようになるか」ばかりに目が向いていました。
でも実際に変化が起き始めたのは、家の中での関わりを変えたことからでした。
家ではまず、安心の土台を作ることを大切にしました。
急がせたり、結果を求めたりする関わりをいったん脇に置き、家が安全基地になるよう意識しました。
また、学校のことを無理に聞き出したり、「今日はどうするの?」と決断を迫ることも控えるようにしました。
不安が強いときは、考えること自体が負担になることもあるからです。
わが家ではスキンシップが息子にとって「大丈夫」の感覚を取り戻す助けになりました。
安心が少しずつ積み重なってくると、次に意識したのが、小さな「できていること」に注目し、言葉にすることでした。
「朝、起きてきたね」「ご飯食べてるね」 など「〇〇したね」と起きた事実をそのまま言葉にすることで、息子の中に「できた」の記憶が少しずつ残っていきました。
「できた」の記憶が増えていくと、「自分にもできるかもしれない」という感覚が芽生え、少しずつ行動につながっていきました。
整理すると、わが家で起きていた流れは、次のような順番でした。
①安心の土台が整う
②小さな「できた」を事実として言葉にし、記憶に残す
③「できた」の記憶が自信になる
④自信が次の行動を生み、また「できた」が増える
こうした小さな成功体験の積み重ねが、息子の中の自己効力感(自分はできるという感覚)を育て、行動するエネルギーを少しずつ取り戻していきました。
5.息子が自分で「ひとりで行く」と決めた日
家の中で小さな成功体験が積み重なるにつれて、息子の行動力は、少しずつ戻っていきました。
すると次第に、「外に出てみようかな」という気持ちの変化が現れ、「やってみたい」「参加したい」と、自分の気持ちを言葉にし、選べる場面が増えていきました。
小さなことでも「やってみよう」と挑戦する意欲が戻ってきたこと自体が、私にとっては何より大きな変化でした。
そして卒業式が近づいたある日、息子がふと、こう言いました。
「もう大丈夫。これからはひとりで学校に行く。」
私が促したわけでも、背中を押したわけでもありません。
息子自身が、自分のタイミングで決めました。
今振り返ると、母子登校は回復のために必要な時間でした。
安心の土台が整い、「できた」の記憶が増え、 自信が育っていった先に、卒業は自然とやってきたのだと思います。
同じように母子登校に悩んでいる方へ。
今は止まっているように見えたり、後退しているように感じたりする時があるかもしれません。
でも、その子のペースで心が整っていく中で、回復が水面下で進んでいることもあります。
母子登校という時間は、親子で新しい土台を作り直していく過程のひとつです。
外側の変化が見えなくても、あなたは十分頑張っています。
まずはお子さんの小さな「できた」を、宝探しのように見つけることから始めてみませんか。
そうした積み重ねの先に、きっとお子さんは自分の足で一歩を踏み出す力を少しずつ取り戻していきます。

\“どう関わればいいか迷う”ママへ/
「待つ?手伝う?」と悩みやすい場面での関わり方を
不安が強い子が「自分でやる」を少しずつ増やしていく
視点と具体的な声かけにまとめました。
執筆者:たかなし りら
発達科学コミュニケーション トレーナー




