発達障害小学生の困りごとランキングで上位を占めるのが勉強について。特にADHDタイプのお子さんは、「もう勉強しないから!」と言い切ってしまうこともありますよね。困り果てているお母さんを救う、「勉強しない宣言」の乗り切り方を解説します。
発達障害あるある!?ADHD小学生の「勉強しない!」宣言。
発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)タイプの小学生をお持ちのお母さん。「子どもが勉強しない」と困っていませんか?
発達障害小学生の困りごとランキングでも上位を占めるのが、この「勉強」問題。
特にADHDタイプのお子さんは
・不注意のため、気が散って勉強に集中できない。
・多動・衝動性のため、じっと座って勉強するのが苦痛。
・実行機能が弱く、計画を立てたり、優先順位をつけるのが苦手。
・エンジンがかかるまで時間がかかり、好きなことをやめて嫌な勉強を始められない。
といった理由から、勉強が嫌い・苦手ということが多いのです。
とは言え、嫌いだからやらないでいいワケにはいかないのが勉強。勉強をやらせたいお母さんvs勉強をやりたくないお子さんのバトルが勃発してしまうのです。
さらに、やりたくないことには激しく抵抗するのもADHDのお子さんの特徴。
しまいには、「もう、勉強しない!」と宣言してしまうこともありますよね。
こうなってしまった場合、どのようにリカバリーしたらよいのでしょうか?
「じゃあやらなくてもいいよ」と突っぱねる?もしくは、「つべこべ言わずにやりなさい!」と強制する?
これらの方法が成功した、というお母さんは…いませんよね?
では、ADHD小学生の「勉強しない宣言」をどう乗り越えていけばよいのでしょうか。
宿題=勉強と思っていませんか?
ここで、お母さんに質問です。そもそも、「勉強する」ってどういうことだと思いますか?
わかりやすいのは、日々の宿題。学校に通っていれば、ほぼ毎日宿題がでますよね。
宿題=勉強と思ってしまいがちですが、宿題を毎日やっても勉強ができるようになる訳ではありません。
むしろ、宿題を無理やりやらせてしまうことで、勉強に対してネガティブな印象を持ってしまうことだってあります。
「勉強しなさい」と言えば言うほど、お子さんは「また言われた」と思って勉強から意識が遠ざかるというワケです。
ですので、自分からすすんで宿題をしない=勉強が嫌いと結論づけてはいけないのです。
発達障害のお子さんは、ネガティブな記憶が脳に定着しやすいもの。
そのために勉強について叱られることが増えると、必然的に「勉強って嫌なもの」という記憶が脳に定着し、学習意欲が低下していきます。
また、「勉強しなさい!」と言ってばかりのお母さんは多いと思いますが、そもそも、勉強するってどういうことなのか、お子さんはさっぱりわかっていない、ということも多いのです。
世の中には、学校の勉強以外にも、学ぶべきことがたくさんありますよね。
「勉強」というワードに拒否反応を示すようになると、自分の好きなことを学ぶ機会や、人生のために必要な勉強まで切り捨ててしまうようになるのです。
そうならないためにも、勉強が心底嫌いにならないように、工夫したいですよね。
早く終わらせたい!宿題をサクッと片づけたいときのマル秘テク。
宿題を無理やりやらせることが勉強嫌いにつながってしまうことはわかった。そうはいっても、毎日の宿題はやらなきゃいけないもの。
本当にお子さんが好きなことを学べる時間を作るためにも、宿題はサクッと片づけたいですよね。
ここで、宿題を片付ける、マル秘テクニックをお伝えします。
マイルールには口出し無用!
まず、お子さんは宿題をどのようにやっていますか?
立ち歩きながら音読をする、歌を歌ったり音楽を聴いたりしながら宿題をする、問題を順番に解かない…など、お母さんが気になるマイルールが見られる場合がありますよね。
そのとき、お母さんがいくら気になっても、マイルールに口出しはしないこと!
なぜかというと、そのマイルールはお子さんが編み出した、集中力を持たせるワザだからです。
ADHDのお子さんは、何かを始める・続ける・終わらせることが苦手。でも、自分なりのマイルールを使うことで集中することができるのです。
ここでマイルールに口出しすると、お子さんの集中力が途切れるばかりか、イライラしてそこから宿題が進まなくなってしまうこともあります。
マイルールには口出し無用。好きなようにやらせてあげてください。
お母さんと競争&採点ごっこ
2つ目の方法は、プリント宿題に有効。準備として、プリントをコピーするか、お母さんが別の紙に書き写してください。
2つのプリントが準備できたら、よーいドン!で一緒に解き始めますが、始める前にこう声かけします。
「今からお母さんと一緒に競争しよう。お互いでき上ったら、プリントを入れ替えて採点するからね。どっちが早く、正確にできるか勝負だよ!」
ADHDのお子さんは、スリル満点のゲーム性のある活動が好きなので、このような競争を取り入れると燃えてくれ、すぐにプリントに取りかかってくれます。
しかも、終わった後に交換して採点されるとなると、少し丁寧にやってくれるでしょう。
お母さんは、お子さんの様子を見ながら、わざと間違えたり、時間がかかるふりをしましょう。
プリントを交換・採点したら、間違ったところをお子さんに教えてもらえばお子さんの知識も定着しますし、さらに理解度も確認できますね。
お母さんが代わりにやっちゃう
最後の手段は、文字通り、宿題をお母さんがやってしまうこと。
宿題なんて自分でやるものだから、お母さんがやったら全然意味ない!と思いますか?
実は、この方法、お母さんが宿題を終わらせるのが真の目的ではないのです。
お子さんが「やりたくない~」と言っている宿題。どのくらい大変なのか、経験したことはありますか?
例えば、漢字の書き取りの場合、漢字をすべて10回ずつノートに書き写すのは、発達凸凹を持つお子さんにとってかなり大変な作業です。
その経験を、お母さんもやってみるのです。
お子さんの宿題をやりながら、
「いつもこんなに大変な宿題やってるんだね。」
「やってみたら結構難しいね。こんな問題解けるなんてすごい!」
とお子さんに共感する声かけをしてみましょう。
お母さんが代わりに宿題をやってくれた。しかも、大変なことを分かってくれた!
この経験は、お子さんにとってかなり心強いものになります。
また、どうしても宿題を嫌がる場合は、お母さんが途中まで書いてあげてもOK。ただし、最後の最後はお子さんに完成させてあげてください。
自分で宿題を仕上げた経験は、成功体験になるからです。
お母さんが宿題をやった場合は、一応こっそり先生に報告しておきましょうね。
そのとき、先生には、ただお母さんが答えを書いてあげているわけではなく、お子さんにも考えさせていることを伝えた上で、
「きっと自分で最後までやり遂げられるようになると信じているので、今はこのやり方で続けさせてください」
とお願いするとわかってくれるでしょう。
本当の“勉強”はここから!未来につながる勉強をしよう。
ここまでは主に宿題についてお話してきましたが、先ほどお話しした通り、宿題=勉強ではありません。
毎日の宿題はとっとと終わらせて、お子さんの未来につながる勉強をする時間を作ってあげたいものです。
私には、発達障害・ADHDタイプの小学校2年生の息子がいますが、臨時休校の間は、ゲーム実況の動画ばかり見ていました。
私からしたら「ゲーム実況なんて時間つぶしでムダ」と思っていたのですが、ある日、テレビゲームをしながら、息子がこういいました。
「あ、これこの前動画で見た!こうやってクリアするんだよ。」
そして、なかなかクリアできなかったそのステージをいとも簡単にクリアしたのです。
息子にとってのこの経験は、「わからないところは動画で調べる→ゲームに生かす→ゲームクリア」という成功体験になりました。
「これも勉強だね」と声をかけると、不思議そうに、でも、うれしそうに、「そっか、これも勉強なんだ!」と笑顔になったのです。
また、大河ドラマの影響で明智光秀に興味を持った息子に、夫が、お笑い芸人の「本能寺の変」の動画を見せました。
一目ではまってしまった息子は「本能寺の変♪」と歌いながら、年号やどのようなできごとだったのかを正確に覚え、「これも勉強だね」と自慢げにしていました。
そう、親が思う「勉強」の定義が、子どもにとっての「勉強」になっていくんです。
机上の勉強や宿題ばかりに時間を使うより、こういった日常生活の中にある「勉強」の機会を逃さないようにしていくこと。
それが、お子さんの未来を創る勉強になっていくのです。
子どもの未来につながる「勉強」とはなにか。ぜひお子さんと一緒に考えてみてくださいね。
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執筆者:森中 博子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)