さて今日は、
「2つの力をつけた息子の「今」」
というお話です。
昨日は子育てのゴールは
「学校に行かせることではなく、
自己効力感と自己学習力を
身に着けることだよ」
とお伝えしました。
だけどそうはいっても、
まずは目の前の我が子の苦しさを
取り除いてあげたい、
って思いますよね?
起立性調節障害や体調不良で
朝、動けなくなっている
お子さんを見ると、
まず親は、
「どうしたら体が良くなるんだろう」
「どこの病院に行けばいいんだろう」
「薬で何とかならないのかな」
と、体の不調に意識が向きます。
もちろん、それはとても大事なことです。
起立性調節障害は、
気合いや根性の問題ではありません。
体のサポートも、
医療との連携も、
休息も、
生活リズムの調整も必要です。
けれど、私は今、
起立性調節障害のお子さんに関わる中で、
強く感じていることがあります。
それは、
体が少し回復してきても、
子どもがすぐに動き出せるとは限らない
ということです。
かくいう私自身も、
かつてはそこがまったく見立てられない
悩める母でした。
私の息子も、中学生の頃、
起立性調節障害で
朝まったく動けなくなりました。
何度声をかけても、
光を当てても、
音を鳴らしても、
まるで体のスイッチが
切れてしまったように反応しない。
当時の私は看護師でした。
医療の知識もありましたし、
夫も医師です。
だから、
水分や塩分を意識する。
生活リズムを整える。
体を動かす。
病院に相談する。
できることは全部やっている
つもりでした。
でも、ある時から
私の中に強烈な違和感が
出てきたんです。
体は少しずつ良くなってきた。
家では笑える日もある。
好きなことには反応する。
食卓で会話もできる。
なのに、
学校の話になると、
息子の表情が一瞬で消えていく。
「二度と行かない」
「勉強もしない」
そう言われた時、
私は胸の奥がすっと冷たくなるような
感覚になりました。
体は回復してきているはずなのに、
なぜ学校だけ動けないのか。
ここが、私にとって
どうしても埋まらない
最後のピースでした。
今ならわかります。
あの頃の私は、
息子を学校に向かわせようと
していたのではなく、
本当は、
私自身の不安を落ち着かせたくて、
学校や勉強の話をしていたのだと
思います。

「このままで大丈夫なの?」
「勉強が遅れたらどうしよう」
「将来どうなるの?」
そんな私の不安が、
声かけの中ににじんでいました。
未来を考えると不安になるのは、
まだ起きていないことを、
脳が「危険かもしれない」と
先回りして守ろうとするから。
不安は弱さではなく、
大切な未来を失敗させたくない
気持ちの裏返しです。
けれど、息子に本当に必要だったのは、
学校の話を増やすことでは
ありませんでした。
必要だったのは、
子どもの脳がもう一度、
「自分は大丈夫」
「少しならやってみてもいい」
と思える状態を育てることでした。
その最後のピースとして出会ったのが、
発達科学コミュニケーションです。
そこで私が学んだのは、
子どもを親の思い通りに動かす方法
ではありません。
子どもが安心して動き出すために、
おうちでの関わりを整える方法でした。
できていないことを指摘する前に、
できていることを言葉にする。
学校の話で追い詰める前に、
好きなことに関心を向けて、
会話の土台をつくり直す。
不安で止まっている時に、
大きな目標を突きつけるのではなく、
「ここまでならできそう」
という小さな一歩を
一緒に見つけていく。
それは、甘やかしではありませんでした。
不安で止まった脳に、
もう一度エネルギーを貯めていく
関わりでした。
そこから息子は、
少しずつ変わっていきました。
私は、学校に戻すことだけを
ゴールにするのをやめました。
その代わりに、
息子の中にある好奇心。
探究心。
その子らしさ。
そこがもう一度動き出す関わりに
変えていきました。
すると、止まっていた時計が
少しずつ動き始めたんです。
やがて息子は、
自分から挑戦するようになりました。
科学甲子園ジュニアに挑み、
仲間と力を合わせる経験をしました。
アメリカ留学にも挑戦しました。
苦手なことにも、
自分の目的のためなら
向き合えるようになりました。
そして、不登校の空白を越えて、
高校にも特待生として合格しました。
そんな息子も、今は高校3年生です。
先日、息子に聞いたんです。
「今、一番楽しいことって何?」
すると息子は、
少し考えてこう答えました。
「普通に起きて、
普通に学校に行けること」
この言葉を聞いた時、
私は、学校に戻れたこと以上に
うれしかったことがあります。
それは、息子の中に、
自分の毎日を、自分で生きている感覚
が戻ってきたことでした。
私は、起立性調節障害の回復とは、
単に朝起きられるようになることだけ
ではないと思っています。
もちろん、朝起きられること。
学校に行けること。
体調が安定すること。
それは大切です。
けれど、それ以上に大切なのは、
この先の人生で困った時に、
自分の状態を立て直す力。
自分で考え、選び、動き出す力。
息子は、不登校の時間を通して、
この力を少しずつ取り戻していきました。
だから私は今、
起立性調節障害や体調不良で動けない子に
対して、
体のサポートだけではなく、
脳がもう一度動き出せる関わりを
届けています。
私が目指しているのは、
学校に行かせるためだけの
子育てではありません。
この子がこの先の人生で、
困った時に立ち止まり、
「今、自分はどうなっているのか」
と見つめ、
「じゃあ、次に何を選ぶのか」
と考え、
もう一度、自分の足で動き出せる力を
育てる子育てです。
だからこそ、
今、お子さんが動けない時に必要なのは、
「行かせるか、休ませるか」
だけで考えることではありません。
今この子は、回復に向かって
成長しているのか。
それとも、不安や失敗回避で
ブレーキがかかっているのか。
ここを見立てる視点です。
同じ「休んでいる」でも、
エネルギーを貯めている休みなのか、
不安が強くなって動けなくなっている
休みなのかで、
必要な関わりはまったく違います。
同じ「好きなことはできる」でも、
逃げているだけなのか、
そこから回復の糸口が見え
始めているのかで、
次の一歩は変わります。
だから、私は
お子さんの今を丁寧に
見立ててほしいのです。
体だけを見るのでもなく、
気持ちだけを見るのでもなく、
体、脳、不安、親子の会話、
そしてその子の中に残っている好奇心まで
科学的に見ていく。

そこに、
起立性調節障害の子が
もう一度動き出すヒントがあります。


