さて今日は
「毎日の声かけで、
起立性調節障害の子は変わりますか?」
というお話です。
そう聞くと、
声かけで病気が治るの?
そんなわけないでしょう。
と思う方もいるかもしれません。
その感覚は、正しいです。
起立性調節障害は、
声かけで治す病気ではありません。
自律神経や循環調節などが関係する
身体疾患ですから、
診断や治療は
医療機関で行うものです。
では、なぜ私は
「毎日の親子の会話が大事です」
とお伝えしているのでしょうか。
それは、
身体が回復すれば
自然に元の生活へ戻れるとは
限らないからです。
限らない…というよりも
むしろ、身体は良くなっているのに
学校・勉強には戻れない子が
多いのではないでしょうか?
そして、だれもこの謎に
答えを持っていませんでした。
実は、この謎の答えは
2つあります。
1つめ、
もともと持っている
ネガティブな脳の反応でストレスを
感じやすく、そのことが
自律神経に負荷となりやすいこと。
✓こだわりが強い
✓人目を以上に気にする
✓繊細過ぎて人との境界線があいまい
✓まじめで完璧主義
✓失敗を強く恐れる
こんなお子さんです。
この脳の反応だけが
起立性調節障害を招いているという
わけではありませんが、
この思考の傾向が負荷をかけやすい
ということは言えます。

そしてもう一つ、
体調不良が長く続いた子の中には、
身体が回復しても
予期不安として不安が募る子、
「また具合が悪くなったらどうしよう」
「今日もできなかった」
「みんなはできるのに、
自分だけできない」
「ちゃんとできないなら、
最初からやらない方がいい」
と考えるようになる子がいます。
朝起きられなかった。
学校へ行こうとしたけれど、
玄関で動けなくなった。
久しぶりに外出したら、
次の日に寝込んでしまった。
そんな経験が重なるたびに、
子どもの中に、
「動くと、またつらくなる」
「挑戦すると、失敗する」
という記憶が残っていきます。
すると、身体は少しずつ
回復してきているのに、
「またダメかもしれない」
ブレーキをかけることがあります。
そして、行動をストップし続けることで
「やっぱりこの方が安全だ」と
脳が誤学習していくのです。
これは、
怠けているからでも、
やる気がないからでもありません。
自分を守ろうとして
動けなくなっている状態です。
実際に、研究でも、
起立性調節障害と関連の深い
起立不耐症やPOTSの子どもには、
不安や抑うつなどの症状が
多くみられることが報告されています。
ただし、これは
「不安が原因で
起立性調節障害になった」
という意味ではありません。
身体のつらさが続けば、
「また具合が悪くなったらどうしよう」
という不安が強くなることがあります。
反対に、
強い不安や緊張によって
身体症状が悪化することもあります。
だから、
身体か、心か。
医療か、家庭か。
どちらか一方に
決めることはできないのです。
医療機関で、
身体の状態を診てもらう。
そして家庭では、
不安を必要以上に強めず、
自分の状態を言葉にし、
「できなかった」で終わらずに、
「では、次はどうしよう?」
と考えられる力を育てていく。
さらにはストレスが高まったときに
またネガティブな思考パターンが
ぶり返しやすくなるため、
根本からリセットしていく。
ここが大事になるんです。
私がママたちに
お伝えしているのは、
病気を治す
“魔法の声かけ”ではありません。
子どもの今の状態を見立て、
その子の回復段階に合わせて、
次の一歩を設計する方法です。
「学校へ行けたかどうか」だけでは、
回復の現在地はわかりません。
ゲームばかりに見える子にも、
行くと言ったのに
当日になると動けない子にも、
それぞれ違う理由と、
必要なサポートがあります。
大切なのは、
正しい言葉を覚えることではなく、
今、この子の中で
何が起きているのかを知ること。
そこがわかると、
「何を言えばいいの?」
と迷い続けていたママが、
「今は待つとき」
「ここは少し背中を押していい」
と、自分で判断できるようになります。
そして子どもも、
「どうせ無理」から、
「これならできるかもしれない」
へ少しずつ変わっていきます。
起立性調節障害のサポートは、
薬を飲ませることだけでも、
何も言わずに見守ることだけでも
ありません。
身体と心の両方を理解しながら、
その子がもう一度、
自分で考え、
自分で選び、
自分から動き出せる状態を
育てていくこと。

私は、そこまでが
本当の回復サポートだと考えています。
今日はここまでです。


