さて今日は
「昨日までできなかったことが、
ある日「できる」に変わる。
人生にはティッピングポイントがある」
というお話です。
実は今回のハワ合宿で、
私はダイビングができませんでした。
本当は、潜りたかった。
この合宿に向けて、
「もう一度海の中の世界を見たい」と
ずっと楽しみにしていました。
けれど、体調のことを考えて、
今回は海に入らないという
選択をしました。
最初は、悔しかったです。
みんながウエットスーツに着替えて、
器材を背負って、
海へ向かっていく。
私はその姿を、
陸から見送る側でした。
ところが今回、
潜らなかったからこそ
見えた景色がありました。
それは、
人が変わる瞬間です。
合宿で
私たちがダイビングに挑戦するのは、
ダイビングが上手になるためだけでは
ありません。
海の中は、
「ちょっと怖いからやめておこう」
「今日は気分が乗らないからまた今度」
が簡単には通用しない世界です。
初めて器材をつける。
初めて海に顔をつける。
怖くても呼吸する。
できないと思っていたことを、
仲間に支えられながら
一つずつやってみる。
たった数日間なのに、
自分の中の「私はこういう人」
という当たり前が、
強烈に書き換わることがあります。
今回も、
その瞬間を何度も見ました。
中でも、私が忘れられない人がいます。
去年の合宿。
感覚がとても繊細で、
ウエットスーツを着ることさえ苦痛。
海に入ること自体が、
「こんなの拷問です」
とはばからずいってしまうほど
逃げ腰だったトレーナーです。
私は、その姿を知っていました。
だから今回、
再びダイビングに挑戦すると
聞いただけでも、
「すごいな」
と思っていました。
ところが海辺で見た彼女は、
私が知っている去年の姿とは
違っていました。
自分が挑戦するだけではなく、
不安そうな仲間に声をかける。
励ます。
周りを見る。
困っている人がいたら
自然に手を差し伸べる。

まるで、
みんなを引っ張るリーダーのような姿
になっていたんです。
私はその姿を見ながら、
「人って、こんなに変わるんだ」
と胸が熱くなりました。
去年、
ウエットスーツを着ることさえ
苦痛だった人です。
去年は同室で、
もうやめたら?と何度も
声をかけそうになったのも事実です。
何か特別な才能が
突然身についたわけではありません。
去年の挑戦があって、
その後の日常があって、
小さな「できた」があって、
また今回、
挑戦できる環境に飛び込んだ。
その一つひとつが積み重なって、
ある地点を越えた。
私はそれを、
ティッピングポイント
なんだと思いました。
水は少しずつ温めても、
しばらく見た目はほとんど変わりません。
ところが、あるところまで来ると、
状態が一気に変わります。
人の成長も、
よく似ています。
昨日できなかったことが、
今日突然できるように見える。
本当は、
その「突然」の前に、
見えないところで
たくさんの変化が積み重なっています。
これは、
不登校や起立性調節障害の子どもたちを
見ていても
何度も感じることです。
「うちの子だけ、変わらない」
「他の子は動き始めているのに」
「こんなに関わり方を変えているのに、
どうしてうちだけ?」
そう感じるママがいます。
実際、
同じように声をかけても、
変化のスピードは違います。
こだわりの強さ。
繊細さ。
不安の強さ。
物事を切り替える苦手さ。
これまで積み重ねてきた経験。
その子によって、
必要な時間も環境も違います。
そして時には、
ママの頑張りが足りないのではなく、
「今、何を観察する時なのか」
という視点が
少しだけ合っていない
こともあります。
学校へ行けたか。
朝起きられたか。
勉強したか。
そこだけを見ていると、
ティッピングポイントの手前で
起きている
小さな変化を見逃してしまいます。
前より自分の気持ちを
言えるようになった。
嫌なことを「嫌」と言えた。
自分から好きなことを始めた。
昨日より少し早く気持ちを
切り替えられた。
「無理」だけではなく、
「ここまでならできる」
と言えるようになった。
それらは全部、
表面からは分かりにくい、
ティッピングポイントへ向かう変化
かもしれません。
だから私は今回のハワイで、
もう一度確信しました。
人が変わるために大切なのは、
諦めないこと。
そしてもう一つ。
環境を使うこと。
一人では怖いことも、
仲間がいると一歩踏み出せる。
家では気づかなかった自分に、
違う場所では出会える。
今までの自分なら選ばなかったことを、
挑戦する人たちの中にいると
選べることがある。
だから環境は、
人を無理やり変える場所ではなく、
まだ自分でも知らない力と出会う場所
なんだと思います。
そしてこれは、
子どもだけの話ではありません。
ママにも、
ティッピングポイントがあります。
毎日同じ声かけをしているように見えて、
実は少しずつ、
子どもの見方が変わっている。
待てるようになっている。
急いで答えを出さなくなっている。
できていないことより、
育っている力を探せるようになっている。
その積み重ねがある日、
「あれ、私、前みたいに
振り回されてない」に変わる。
そのママの変化が、
また子どもの環境を変えていきます。
去年、
「拷問です」と言っていた人が、
今年、仲間を励ます人に
なったように。

今、
「うちの子は何も変わっていない」
と思っているその場所も、
未来から振り返ったら、
大きく変わる直前だった
ということがあるかもしれません。
だから、
今日だけを見て
未来を決めなくていい。
今見えている結果だけで、
その子の可能性を決めなくていい。
人にはティッピングポイントがある。
諦めずに観察すること。
小さな変化を見つけること。
そして、
その人の力が動き出せる環境を
用意していくこと。
今回、海に潜れなかった私が、
海の外から見つけたのは、
そんな、人が変わっていく
希望の法則でした。
次に海に潜る時、
私はまたきっと、
今とは違う自分で海に入ります。
子どもたちも、
ママたちも同じです。
今はまだ見えていないだけで、
次の自分は、
もう始まっているのかもしれません。
今日はここまでです。


