吃音のある子が話す時、言葉選びに苦戦しやすい理由

他者の視点を表現するときに脳が忙しくなるメカニズム
小学生になると、他人を思いやること、空気を読むことを求められるようになります。
そのためさらに脳には新たな負荷が加わります。
ですが、自分が見えているもの、感じていることを そのまま言葉にすることは、比較的負荷が少なく行えます。
一方で、 「相手からどう見えているか」 「相手はどう感じているか」 を表現するには、 客観的な視点が必要になります。
その際、脳の中では ・過去の経験を思い出す ・現在の状況と照らし合わせる ・共通点と違いを判断する ・相手に合う言葉を選ぶ といった複雑な処理が行われています。

これが吃音のある小学生の脳を忙しい状態にし、脳の中でのストレスが高い状態になってしまいます。
自分からの目線と他者からの目線の違いがわからずにイライラする息子にわかった!を手渡したい
わが家には、吃音のある小学生の息子がいます。
息子は、相手の見え方を想像することが苦手で、 「自分に見えているものは、相手にも同じように見えている」 という前提で話してしまうことがよくありました。
そのため、 自分にははっきり見えているのに相手に伝わらない場面に出会うと、 戸惑いや苛立ちにつながりやすい様子がありました。
たとえば、 「ねえ、あれ綺麗だね?」と息子が言った言葉に、私が 「何?」と聞くと 「ほら、あの月だよ。なんで見えないの?」と怒ってしまうことが度々ありました。

自分の目線と、相手の目線では、見えている景色が違うことがあるということを、頭で理解するのではなく、体感として知ってほしいと感じていました。
そこで、家の模様替えの一環として行った 重たいテーブルの移動作業で、息子に「作業リーダー役」を任せることにしました。
リーダー役は、自分が動くだけでなく、周りの人が今どこを見ていて、何が分かっていないのかを考えながら、指示を出す必要があります。
途中で混乱したり、分からなくなる場面も想定し、私は、正解を教えることよりも、考えている時間を守ることを大切にしながら、 発達科学コミュニケーションの視点で肯定の声かけをこまめに届け、作業リーダーとしての息子をサポートしました。
吃音のある小学生の息子が他者の視点に気がついた我が家の3ステップ
小学1年生の息子は言葉で説明をされるよりも、体験したことを理解する方が得意なタイプです。
そのため、他者目線と自分目線の違いを説明で伝えるよりも、体験を通して理解して欲しいと思い、実際の作業では、うまくいくようにサポートするのではなく、気がつけるようサポートを心がけました。
テーブルを向かい合って移動させると、 それまでスムーズに進んでいた作業が止まり、 息子の指示がうまく伝わらない場面が生じました。
そのとき息子は、自分と相手では向きが違うこと、同じ「右」「左」という言葉でも、立ち位置によって受け取り方が変わることに、少しずつ気づいていきました。
この場面で私が大切にしたのは、作業の効率ではなく、相手目線を思いきり体験する時間を確保することでした。

ステップ1 あれ?っと違和感を感じる時間を保証する
伝わらない場面が起きても、 すぐに言い直したり、代わりに説明したりはしません。
向きの違い、距離、位置関係。
同じ言葉でもズレが生まれる状況を、 そのまま残すことを意識しました。
「なぜ伝わらないのか」に子ども自身が向き合う時間が生まれます。
ステップ2 正解を渡さず、考える時間を守る
作業が止まっても、急かしたり、答えを先に教えたりはしません。
代わりに、 「どうしたら伝わりそうかな?」 「今、相手にはどう見えてると思う?」 と、答えを含まない問いを返し、待ちました。
大切なのは、うまく言わせることではなく、考え続けることができる時間を奪わないことです。
ステップ3 できた結果ではなく、考えた過程を肯定する
言い直しができたとき、伝わったときに肯定したのは、結果ではありません。
「今、相手の向きを考えてたね」 「一回止まって考え直したの、よかったよ」 相手を想像し、立て直そうと考えた過程そのものを肯定しました。
この関わりを続けることで、息子は焦ったり苛立ったりすることなく、 距離や向き、相手の立ち位置を考えながら、具体的で分かりやすい説明を自分で工夫するようになっていきました。
この体験を通して、相手の状況を思い浮かべながら伝えるという 思考の経路が育っていきました。
「伝わった」 「役に立てた」 この成功体験は、 吃音のある子どもにとって、話すことへの自信を支える土台になります。
身近にある家事をお子さんと楽しみながら、他者の視点を育んでみませんか?
説明がスムーズにできるようになると、脳の中でのストレスが減り、吃音が落ち着くことに繋がります。
(発達科学コミュニケーショントレーナー)


