1.不登校中はおうち実験が楽しかった!
小学生という低年齢で不登校を経験した子ども達は、その後どのように成長していくのでしょうか。
インタビューの前編でお話しを聞いたMさんのお子さんのYちゃんは、5年生から学校復帰することを自ら選んだそうです。心身ともに大変だった小学校生活を再び頑張ろうと思ったのは何故でしょうか。
お母さんのMさんに、不登校となったYちゃんを元気にした家庭での過ごし方について聞いていきます。
ーー学校に行かないという決断をしてその後どのようにしてお家で過ごしていましたか?
「最初は、将来のことを考えるとやっぱりなるべく学びの機会は確保できるようにしようって思いました。
なので通信教材を一緒にやろうとか、勉強の時間を生活の中で作ろうとか、教科書を使って私が先生役になって教えようみたいなことをやったんですが…探究心が強くマイペースに学びたい子なので私からのアドバイスや指導も押し付けだと受けとられてしまって、ものの見事に一日でケンカして挫折しまして。」
ーー挫折が早いですね(笑)学校の先生がお母さんに変わったところで解決しなかったということですね。
「楽しくなかったら家にいる意味がないな、こんなに楽しくないところではこれは休まらないなと思ってすっぱり諦めました。基本的にはほんとに自由気ままに過ごしていたと思います。
Yに聞いてみたのですが、楽しかったとか心に残ったというのは、山ほどの折り紙をしたり、工作をしたりとか、一緒に料理をしたりとか、サバの解剖をしてみたりとか。
今は、色々な動画とか科学実験の動画とかいっぱいあるのですよね。動画を見ながら10円のはさみ方で落下の仕方が変わるとかいうこともやりました。
ベーキングパウダーの成分をちょっと調べてみて、自作でベーキングパウダーを作ってみて市販品との焼け方の違いを試してみるというのもやりました。
気の向くまま興味の向くままにいろいろなものを作ったり、一緒にやったのはすごい楽しかったという話でしたね。」
Yちゃんとお母さんのMさん。今でも一緒に何かを作る時間は楽しい時間です。
ーーお母さんと一緒に学んで過ごしたことが一番楽しかったって言われるなんて嬉しいですね!不登校の思い出が辛いものだけではなく、楽しかった思い出で塗り替えられるように、お家で子どもに接するお母さんは意識したいところですね。
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2.複数の居場所で世界が広がる
ーー自宅で色々な実験をしたり工作をして楽しい時間を過ごすことで、Yちゃんは元気になっていったんですね。学校以外の居場所はありましたか?
「Yは、マイクラが大好きで、コーダー道場という北欧発祥のプログラミングサークルのような所に通っていました。そこでのお友達とすごく気が合うみたいで、歳が離れているのですがとても馴染んでそこでの活動にだいぶ救われたところはありますね。
コーダー道場(CoderDojo)
子どもが過ごす場所の柱を一つにしないようにしていました。子どもが学校に戻るにしても、このまま家で過ごすとしてもいろんなところに自分の世界があった方がいいだろうなと思っていたんです。
他にも塾や放課後デイサービス、不登校の会みたいな居場所など、色々なところに顔を出して色々な人と話をしていくうちに、大人の方の価値観が狭いと子どももその中に閉じ込めちゃうかなあと思えるようになりました。
決して人生の生きていく道は一つではないし、ただ単に一番有名で歩みやすい道が学校に行くということだなという風に考えられるようになりました。」
ーー 娘さんのために動いた結果、子どものためもあったけどお母さん自身の考え方が広がってお母さん自身のためになったんだなあっていうのがすごくよくわかって動くの大事だなと思いました。
3.学校復帰のために転校しよう!
2年の不登校期間を、お家や気の合う仲間と過ごせる居場所で学ぶことで元気になっていったYちゃんはいよいよ学校復帰することを選びます。
Yちゃんの気持ち、学校復帰に向けた準備について聞いていきます。
ーーYちゃんが学校にまた通いたいと思ったのは何故だったのでしょうか?
「そこまでポジティブな理由ではなかったのですが、学校以外の居場所で仲良くなった女の子が同じように学校への苦手さがありながらも頑張って学校に行っているのを見て、影響を受けたみたいです。行かなきゃなーみたいな思いだったようですね。
このままで自分の将来は大丈夫なのかなという気持ちとか、周りの世間の考えをやっぱり意識していたみたいですね。
この社会の中で、学校に行っていない子どもというのは、良くは受け取られていないっていうことを理解していて、それが多分心配だったんだと思うんですよね。」
ーー子どもは子どもで大人が顔負けするくらい社会の中での自分をよく考えているんですよね。お母さんとしては、学校に行こうかなと言われたとき、どう思いましたか?
「私自身が子どもが学校に行ってない生活を楽しみ始めていた中で、行こうかなと言い出したので、え、ほんと?という感じでした。あとは、周りの気配を読んで、判断しようとしているなっていうのは分かったので心配もありました。
でも、一度決めたことはやるタイプなんです。自分でやるって言いだしたことは、右往左往しても結果的にやり通すことが多い子だったので、こう言ってるんだから多分行くんだなと思いサポートしようと思いました。」
ーー学校復帰を覚悟して、今までの学校とは違う小学校への転校を決めてお引っ越しもされたと聞いていますが、転校を決めた理由を教えてもらえますか?
「学校に再チャレンジしてまた駄目だったとしても、チャレンジが上手くいったとしてもどっちでも彼女にとってメリットが多いのはどれだろうなと考えました。
また中学受験も少し考えていたので、そのとき行ってみたいと考えていた学校が近いところへ転校することに決めたんです。」
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4.学校見学はニーズをしっかり話すことが大事
ーー転校する学校は親子で見学などして決めたのでしょうか?
「いくつか評判を聞く中で公立の小学校6校ぐらいピックアップして2人で見に行きました。
事前に学校側にも子どもと2人で見学に行きたいということ、不登校だったことも伝え、どうして転校したいかという話も見学しに行ったときに話しました。
そうすることで相手側が自分達親子みたいなちょっと特殊なパターンに対してどう感じているかが見えるんですよね。
割とはっきりと、ちゃんとできないことはできないと言ってくださいました。なのでこちら側のニーズをはっきりさせてお伝えして、もう腹を割って話すことでどの学校にするか選ぶ理由をちゃんとわかるようにしました。」
ーー見学したり決めたりという間は、Yちゃん自身は心がぶれたりとか、心配事がつのったりとか、ちょっと情緒不安定になったりとか、そういうことはなかったですか?
「途中で嫌と言いだすかなと思っていたし、言っていたこともありますが、じゃあやめるかい?と聞くと、いや、やるという風に言っていました。
事前に本当にやりたいのかい?本当に学校にもう一度行きたいのかい?本当に転校したいのかい?と、常に確認して話していましたし、気持ちが動いてもいいよという風に言っていたので、それが安心材料になったかもしれないなと思います。」
ーー今、気持ちが動いてもいいよと言っていたというお話だったのですけど、学校を決めようという段階のときに途中で変わっちゃってもいいよと話していたということですか?
「そうですね。」
ーーこんなに準備したんだから絶対行かなきゃ!というプレッシャーを感じずに済みますね。
「正直そういう気持ちはありました。ここまでしたのにって絶対私は思うなと思っていたんですが、それは言われたら立場がないだろうなと思って、行こうと思っただけですごいよという風に伝えていました。」
ーー素晴らしいですね。ありがとうございます。不登校からの学校復帰を目指すお子さんやその親御さんにとってとても参考になるお話しでした。
5.不登校という経験は大きな成長体験の一つです!
不登校になるのも大変ですが、登校復帰することも子どもにとっても、親にとっても大きなエネルギーを使う大変なことです。
不登校時代を、子どもが好きで得意な活動を、お母さんと楽しみながらやって過ごしたことで、学校って大変だけどもう一度行こうかなという心の余裕が少しYちゃんに生まれたのでしょう。
Yちゃんはその後、無事に学校復帰を果たしました。学校での楽しさを感じたり、やはり苦しいことも感じたりしながら登校しているとのことです。
Yちゃんは、将来、『自分が大人になったときに、学校行けなくて困っているとか、周りに馴染めなくて困っているとかするような子ども達を助けられる人になりたい。』と思っているそうです。
自分が苦しかったときに支えてくれたお母さんや、周りの人達からのサポートをしっかりと受け止めて自分の経験を苦しかっただけでは終わらせない、そんな強さがあるのだなと思います。
不登校の子どもを支えるお母さんは、子どもを子ども扱いせず、1人の人として接し、対話を重ねる必要があります。
この子はどうしていきたいのか。
どんな過ごし方をしたいのか。
辛いことが起きたらどうするのか。
親子で一緒に考えて決めたことに、正解も不正解もありません。
一緒に過ごし、一緒に考え、一緒に迷い、一緒に体験したことは子どもにとっても親にとっても貴重な宝物になるのだなと、Mさん親子には教えてもらえました。
皆さんも、これから進級・進学の時期を迎え色々な困りごとが起きるかもしれません。ですが、困りごとを乗り越えていく方法は親子の対話の中にあります。
子どもファーストでサポートしてあげれば必ず子どもは自信を持って成長していくことができます!
ぜひ、子どもが望んだ環境で過ごせるように新学期からもサポートを頑張っていきましょう。
執筆者:すずき真菜
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
新学期を迎える今こそ、子どもの本音を聞き出せる親子関係が必要です!