1.感覚過敏のある発達障害、自閉症スペクトラム(ASD)の息子さんが不登校になった原因は?
発達科学ラボ リサーチャーのちとせさんの息子さんは現在小学5年生の10歳。
小学校低学年で、グレーから軽度の自閉症スペクトラム(ASD)と診断を受けたそうで、小学校3年生の夏休み明けから不登校になったそうです。
昔から生き物が大好きで、図鑑や本を読んで何でも覚えてしまい、理科や社会などは今までの経験や知識から、テストを難なくクリアしてしまうという息子さん。
しかし感覚過敏や、対人関係の難しさで、学校にうまく馴染むことができなかったそうです。
息子さんの特性と不登校になったときの様子をお伺いしました。
ーーいきしぶりになってしまったときのことをお聞かせください。サインは何かありましたか?
「小学校1年生の後半あたりからいきしぶっていて、それ以前も運動会や人の多い行事は苦手な感じでした。
聴覚過敏もあり、本人が言うには教室や体育館の音の反響が苦手なようです。
私から見て、普通の人が見えないような生き物の動きが見えることがあると言っていたことがあるので、視覚から入ってくる情報も多く、学校生活では疲れてしまうことが多かったのだと思います。
小学校3年生まではたまに休んだりしましたが、送って行けばまぁ何とか頑張れるという感じでした。
行きしぶりのサインとしては、『苦手なタイプの友達がクラスにいて嫌だ』と言っていたり、音のことが気になったり、だんだん元気がなくなっていった感じでした。」
感覚過敏で学校生活に疲れてしまった息子さん。
この後、息子さんが本格的に不登校になったきっかけや、フリースクール探しのポイントをお聞きします!
ーー本格的に不登校になってしまったのはいつ頃でしょうか?
「小学校3年生の時に転校をしました。学校には事前に息子の特性なども伝えて、いつでも通級が使えることになりました。
最初は『頑張る』と言っていきしぶりがありながらも頑張って登校していました。
ところが通級の先生に、若干手を引っ張られて通級のクラスに参加を促されたり、『頑張って授業に参加しよう!』と声をかけられたりしたことが、息子にとって負担になってしまったようです。
今思い返してみると、それも不登校の原因の一つになったのではないかと思います。
もう一つは友人関係です。
ちょっと意地悪な子がいて、その子に言われたことが心に引っかかったみたいです。
『学校がキツイ』ということを1学期に体験してしまい、夏休み明けから完全に不登校になってしまいました。」
ーー感覚過敏や環境の変化、更に対人関係で嫌なことが続いてしまったのですね。不登校が始まったとき、ちとせさんは受け止められましたか?
「タイプ的に『そうなるかな』というのはなんとなく分かっていて、『やっぱりそうか』という気持ちが半分と、あと半分は『もうちょっと頑張れるんじゃないか』という気持ちもありました。
強く『頑張れ』と言ったときもあったんですけど、きょうだいと比べても反応が全然違うので、それを見て私の気持ちを納得させていったという感じです。」
だんだんと息子さんの不登校を受け入れたちとせさん。
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その後、息子さんの居場所探しを始めますが、どのような視点で居場所探しをしたのでしょうか。
2.引きこもりになったらどうしよう!学校以外の居場所を探した理由
ーーこのままずっと不登校だったらどうしようという不安な気持ちがありましたか?
「それはずっとちらついていましたけど、不登校というよりも引きこもられちゃったら困るなって言うのが気持ちとしては大きくて。」
ーー悩んでいるより、居場所を探そうという気持ちに切り替わった、ということでしょうか。
「実は、もうASDとわかった時点で、低学年の段階からいろいろな情報を調べていました。学校とかフリースクールの情報を調べていたので情報量としては持っていた方だと思います。」
ーー不登校になってもいろいろな選択肢があるのがわかっていたのですね。どうしたらいいのだろうというよりは、前向きな感じで考えられましたか?
「最初から明快に動けたわけではなく、親としてどうすることが息子にとっていいのか、本当に絞り出しながらでした。
息子の場合は感覚過敏があったので『対人関係がいや』といった心理的な負荷だけで不登校になるのとは少し違うなと思っていました。
いくら長期休みのときにいろんな所に行ったり、好きなサッカーをしたりしても、新学期には行きたくなくなってしまったので、ただ家でエネルギーの回復を待つという対応では難しいと感じました。
基本的に息子はマイペース、マイワールドが強いので、情報を与えずにただ元気になるのを待つというのがいいのかという疑問がありました。
なので、私が得ていたフリースクールの情報をもとに、息子に見学を提案したり、彼が興味を持ってくれる範囲で気持ちを乗せようと努力したりしました。
すぐに前向きになれたわけではないですが、私も歩みを止めなかった、という感じですね。」
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息子さんの特性がわかった時点でしっかりと情報を調べていたちとせさん。
では、どのようにして息子さんの居場所になるようなフリースクールを選んだのでしょうか。
3.フリースクール探しのポイントは子どもの○○に合わせること!
ーーフリースクールはどの様にして探したのでしょうか?
「夏休み明けからもう学校には行けなかったので、『じゃ、フリースクールを探そう』という感じで見学に行き始めました。
夏休み中に、私が近隣のフリースクールの代表の方と話せる合同説明会に出ていたんです。
そこで息子に合いそうなところが3か所ほどあったのですが、一番家から近い所に入りました。」
ーーどんな雰囲気のフリースクールだったのでしょうか?
「うちの息子は本や図鑑を読んで知識を記憶したり、理解することは得意です。でも板書をしたり、何回も漢字を書いたり、筆算のように計算を書きだす、ということがすごく苦手でした。
そういう知的には高いけど、苦手が多いタイプの子が多くて、ITを使った学習支援をしていたり、少し体を動かす機会を取り込んでくれていたりとか、割とカリキュラムが明確でしたね。
あとは、感覚過敏で音の苦手な子には、机に仕切りをつけてくれたり、子どもの特性に合わせて時間の区切り方を工夫してくれたり。子どもに合わせた対応をしてくれるようなフリースクールでした。」
ーーITの学習支援とは具体的にどのようなものでしょうか。
「パソコンとタブレットを貸し出してくれて、オンライン上の様々な問題を、学年や能力に合わせてダウンロードして解くことができました。地図アプリで地理を覚えたりもしていました。
また、自由研究の時は、パワーポイントのスキルを教えてもらい、生き物の知識が豊富だったので、マイ図鑑を作ったりしていました。」
ーー息子さんは楽しんで通っていましたか?
「最初は慣れるのに時間はかかりましたが、最初の方だけ一緒に行ってあげたら、その後は自分でバスに乗って、月曜日から金曜日まで連日楽しく通っていました。」
ーーフリースクールの選び方についてアドバイスはありますか?
「子どもの特性に合っているところを探すことです。
うちの場合は、息子は書くことが苦手だったので、パソコンやタブレット学習を取り入れていたこと、パソコンにとても興味があったこと、感覚過敏に対応してもらえたことがポイントになりました。
私にとっては、フリースクールを立ち上げた先生方が特別支援や発達障害に対しての知識が豊富だったり、ギフテッドの対応にも精通した先生がいたところがポイントでした。」
ーーやっぱりお子さんの特性に合っているところを探すのがポイントですね!フリースクールに行ってよかったことは何でしょうか?
「学校をドロップアウトしてしまい、自尊心がすごく下がっていくのを感じていたので、学校じゃないけど、ちゃんと行けている所があるとか、人と繋がっていられる所があるとか、いろんな経験ができている、経験の蓄積ができているなど、積極的に活動ができていることがよかったと思います。
学校じゃなくても子どもに合う場所があれば、友人関係、家族以外の関係を作るチャンスがあるので、何かに繋がれたらいいんじゃないかなと思います。」
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フリースクールで小学校4年生として1年間過ごしたちとせさんの息子さんですが、5年生から学校に再登校することになりました。
では再登校できるようになったのはなぜなのでしょうか。
4.仲間と一緒にサッカーをしたい!フリースクールで付けた自信で再登校!
ーー再登校できるようになったきっかけはなんでしょうか?
「フリースクールに毎日休まずに通えたという自信がまずひとつ。
もうひとつが、フリースクールに行きながら同じ小学校の友達と一緒にサッカーをやっていて、そのメンバーと中学校でサッカーを一緒にやりたいという気持ちがモチベーションになっているようです。
『学校に慣れよう』という本人の気持ちと体調を親子で相談して、時間を調整しながら頑張っている感じです。」
ーー息子さんに合った居場所を見つけて、そこで自信がしっかり育まれたのですね!ちとせさんの息子さんはおうちやフリースクールで充実して過ごしていたと思いますが、発達科学コミュニケーションを学ぼうと思ったきっかけはなんでしょうか?
「トンネルを少し抜けてきて、私自身が勉強したいという気持ちになったのも大きいと思います。
あと息子が小学校に入ってから、素敵なところをたくさん持っている子どもが『できないところ』にフォーカスされる場面を多く目にし、自分の視点を変えて子どもを見る視点を変えていきたいと感じたのが大きかったです。」
ーーこの先、お子さんの良さを伸ばすためにチャレンジしてみたいことはありますか?
「海外に行かせたいですね。何をモチベーションにしていくかは息子次第ですけど、世界はもっと広いんだよ、ということを知ってほしいと思っています。旅行でもなんでもいいですけど、海外の状況を見せてあげたいなと思っています。」
ーーちとせさんご自身の夢はありますか?
「子どもが4人いて、なおかつ個性の強い子がいるので、外で働くというのが難しくなってきたと感じることが出てきました。
心理や教育にかかわる仕事をしているので、働き方のスタイルを今後検討しようと思っていて、独立して仕事ができるようになるのが数年内の夢ですね。」
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不登校になって自尊心をなくした息子さんを救ったのは、息子さんの特性にあったフリースクールでした。
特性を理解して、息子さんに合った居場所を見つけたちとせさん。
不登校になったことをネガティブに捉えずに歩みを止めなかった姿勢がとても素敵だと思いました。
我が子が不登校になったらどうしようと不安に思うお母さんはたくさんいると思います。
しかし、お母さんが子どもの特性をしっかり理解したり、経験者の声を聴いたり、学校以外の選択肢があるということを知っているだけでその不安は大幅に解消されると思います。
みなさんもむやみやたらに不登校という言葉を恐れるだけでなく、しっかりお子さんの特性や困りごとに向き合ってみませんか?
その為に私たちもお母さんの不安を解消できるような情報を発信していきたいと思っています。
今回のちとせさんのインタビューが発達障害グレーゾーンのお子さんを持つお子さんの居場所選びのヒントになってくれたらとても嬉しいです。
不登校の子どもの居場所づくりのヒントが見つかる!パステル総研の記事もお読みください。
「パステルキッズの明るい未来」こちらにも不登校情報満載です!
執筆者:別井理恵
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
不登校中の親子関係をスムーズにするヒントを毎日配信しています!